景気は日ごとに深刻度を増し、不動産・建設業界は生き残りをかけた戦いが始まっている。また上場企業の倒産は今年に入って13社となり、昨年のペースをはるか上回わり、規模の大小を問わず信用不安説は遠慮なく蔓延し、誰彼となく疑心暗鬼に陥っている。
香川県においても四国初の学校法人の倒産が発生、更に2009年老舗企業の倒産が全国ワースト1となることが予想されるなど、今までの経験と勘の与信管理が通用しなくなっている。
今回弊社情報出版本部が取材したオリエンタル白石(株)(東証1部上場、千代田区)の倒産について御紹介したい。この倒産は、黒字倒産、取引行との関係、ファクタリング※、従来からの与信管理方法などを考えさせられるもので、業界関係者及びTSR会員から大きな反響をよんだ記事である。尚、ページの関係もあって“上中下”の三部構成でお届けしたい。
※ (ファクタリング)
企業は、売掛債権をファクタリング会社に手数料を支払って売却し、早期に資金化。売掛金の回収は企業に代わってファクタリング会社が行う金融サービス。
中間決算で赤字見通しを上方修正したオリエンタル白石(株)(東証1部上場、千代田区)が、決算発表からわずか2週間後に会社更生法を申し立てた。負債総額は605億円。直前の四半期決算では黒字転換した典型的な黒字倒産だ。「合併から1年しか経っていない。決算も黒字に上方修正したばかりなのに」と、審査担当者は何を尺度に審査すればよいのか不安が募る倒産となった。
オリエンタル白石は、2007年10月、橋梁上部工を得意とするオリエンタル建設(株)(当時:東証1部)と(株)白石(当時:東証2部)が合併して発足したゼネコンである。 オリエンタル建設は1952年10月設立で、95年4月に東証2部に上場、96年9月に東証1部へと指定替えとなった。プレストレスコンクリート(PC)工法のパイオニア的存在で知られ、太平洋セメント系のPC製造・建築工事業者だ。PCとはコンクリート中に鋼線を通し、両端を牽引することで張力を持たせ逆方向への抵抗力を増強する。橋梁が主体で公共工事依存が高く、新交通システムの軌道桁やマクラギ、海洋構造物などに利用される。近年は受注難に苦しんできたが、財務は無借金で合併直前の2007年3月期年商は653億8100万円をあげていた。
一方、白石は1933年創業、38年7月に法人化された。91年1月に株式を店頭公開し、97年2月東証2部へ上場した。橋梁や道路など大型構造物の基礎工事を得意として、ニューマチックケーソン工法など独自の特化技術を有し高い評価を受けてきた。ニューマチックケーソン工法とは、ケーソン(主に鉄筋コンクリート製の函)下部に気密な作業室を設け、空気圧により地下水の浸入を防ぎながら掘削作業を行なう。この工法で官公庁発注の橋梁工事や民間マンション基礎工事を受注してきた。だが、近年は公共工事削減から売上は漸減をたどり、合併直前の2007年3月期年商は434億1700万円を計上したが、借入負担が重い経営を続けていた。
この両社の合併は業界内では高い評価を得ていた。コンクリート橋梁の上部を得意とするオリエンタル建設と基礎部分を得意とする白石が一緒になることは、橋の上下部の一貫施工が可能となり、技術的な優位性が高まり、相乗効果で受注増につながると見られていたからだ。従来型のゼネコン合併に比べ、合理性が高く、合併効果が期待されていた。
ところが、いとも簡単に東京地裁に会社更生手続を申し立てた。取引先は狐につままれ、債権者説明会に出席しても納得できない説明に終始した。
オリエンタル白石の会社更生申立には今もって納得できない債権者が多い。取引先の同社に対する信用格付けはBランクからCの上ランクとしていた先が多い。開示されてきたB/S、P/Lは決して見劣りするものでなかった。合併前のオリエンタル建設は無借金会社、白石と合併して借入金を抱えたが、それでも極端に多くはなかった。2009年3月期第2四半期の連結純資産比率は17.1%、流動比率97.3%、これも業界平均に大きく引けを取るものではなかった。「あの会社よりもっと厳しい会社は沢山ある」と声が多かったのは率直な印象だった。
第2四半期決算予想(08年4月1日~9月30日の中間期)では、上方修正を行った。9月18日、連結売上高を100億円増額し620億円に、連結経常利益・純利益はともに8億円増額してそれぞれ△2億5000万円、△2億9000万円と赤字幅を減らした。さらに11月13日の決算発表では再度上方修正され、連結売上高は20億円減額したが、連結経常利益は3億6300万円、連結純利益3億円のそれぞれ増額で、純利益額は1800万円の黒字に反転した。「現場において損益改善に取り組んだ結果、損失が減少、工事進捗も予想以上となった」と、修正理由は企業体質が改善したこともアピールした。
ところが、2回目の上方修正発表から2週間もたたない11月26日。突然、倒産した。社長は記者会見で悔しさを滲ませながら、「月末の決済資金45億円を調達できなかった」と声を絞り出した。
「何をもって経営状況を判断すればよいのか。期間損益は経営の実態を表さないのか」・・・・・・取引先の審査担当者は事態の推移が飲み込めなかった。
しかし、審査担当者も手をこまねいているわけに行かない。実態を分析し、“倒産トレンド”を見抜くことが必要だ。
オリエンタル白石が合併したのは2007年10月1日。合併は経費削減を招き、財務改善に取り組んできた白石建設にとっても無借金のオリエンタル建設と一緒になることで信用が補完され、取引先に歓迎された。
ところが、合併効果は必ずしも1+1=2とならなかった。(表1)グラフの通り、合併後の08年3月期の連結売上高は合併前の売上高に比べ大きく落ち込み(22.1%減)、1+1=2となる本来の売上高を保てなかった。PC建設工事を巡る受注環境は公共工事削減から確かに厳しいが、落ち込み幅は合併とは逆にそれまでの倍近くになってしまった。2つの会社が一緒になったら、落ち込み幅も2倍になったというわけである。




















