自分の足にぴったりの靴を見つけるのは難しい。年齢を重ねると、筋力の衰えや病気などで普通の靴が履けなくなったという人も多くなる。そんな悩みをもつ高齢者向けに作られた靴「あゆみ」シリーズは、誕生から14年、現在は全国で年間60万足(2009年7月期予想)を販売するほどの人気商品だ。開発・販売を牽引してきた徳武産業社長の十河孝男さんに話を聞いた。
「私も歩きたい、靴が履きたいという人はたくさんいらっしゃる。私たちは、その気持ちにどれだけ本気で応えることができるか。それがすべてなんです」と徳武産業社長の十河孝男さんは語る。
徳武産業は1957(昭和32)年、手袋縫製工場として創業した。その後事業の中心を旅行用スリッパや学童用シューズの縫製に移し業績を伸ばす。84年、先代社長の急逝にともない2代目社長に就任した十河さんは事業継承と共にOEM生産を展開したが、独自商品開発の必要性を強く感じるようになっていた。後にヒット商品に育つ「あゆみ」は、まさにそんな時期に産声を上げる。
商品開発のきっかけは、友人の社会福祉法人理事長の「歩きやすい靴を作ってほしい」という依頼だった。バリアフリーの室内でも、高齢者は足先が十分に上がらずにつまずいたり、履いているスリッパを自分の足で踏んで転倒するなどの事故が多い。「原因は履きものにあるのではということでした」
大手メーカーが門前払いしたというその願いを、十河さんは聞き入れる。介護施設や病院など約30の施設で500人以上の高齢者の足を採寸して試作品を作り、意見や感想を聞いた。「実に多くの人が悩んでおられたんですよ。左右のサイズが違う人、足の幅が広い人、外反母趾や、病気などからむくみがくるなど、悩みは様々でしかも深刻でした」
必要としている人に、必要としているものを届けたい・・・・・・。「靴作りは初めてで苦労の連続だし、試作品を作ってもなかなかOKがでない。1日も早く完成させたいとの気持ちもあって、時間との戦いでしたね」。試行錯誤は続いたが、それだけ使命感は強くなっていた。2年かけて施設用ケアシューズ「あゆみ」は誕生する。明るく、軽く、機能性が高く、そしてリーズナブルを信条に。
「あゆみ」シリーズには、室内用、施設・院内用、外出用(防寒、寒冷地仕様)、機能長靴など、さまざまなアイテムがある。安全性や履きやすさはもちろんだが、見た目の美しさ、格好良さも魅力だ。
また「あゆみ」既製ラインでは合わない人のために導入されているのが、パーツオーダーシステムだ。靴底の高さ調節、足位の調整、サイズの特注(SSから8Lまで)、ベルトの長さの変更や開閉方向の変更など、既製靴をベースにすべて本社工場で手作りしている(既製ラインは中国で生産)。ほかにも左右で違うサイズや、片方だけが購入できるなど、消費者の願いに沿った商品作りが際立つ。「大変ではないかと思われる在庫管理も工夫次第。小回りの利く会社規模だからこそ、できることなんですよ」。商品には社員手書きのメッセージカードが添えられ、購入者からはアンケートハガキに、靴を介在にした思いが本社に届けられている。
発売開始の1995年には年間売り上げが200万円だった「あゆみ」シリーズは、2009年7月期では約12億円の売り上げを見込めるほどに成長、徳武産業の柱となった。「発売して2カ月たったころ、施設の夏祭りに招待されました。赤い水玉柄のあゆみシューズを手に『死ぬまでに一度赤い靴を履きたかった。それが叶いました』と言われたんです。うれしかったですね」と当時を語る十河さん。靴を販売することで、感動を分かち合える瞬間を何度も経験した。「お客さまからいただく声を大切に、商品開発に生かしていきます。安全で安心、そして感動が生まれる靴づくりを今後も続けていくつもりです」
| 所在地 | 本社 さぬき市大川町富田西3007 TEL:0879-43-2167(代表)/FAX:0879-43-5618 |
|---|---|
| 資本金 | 1000万円 |
| 代表者 | 代表取締役 十河 孝男 |
| 従業員 | 44人 |
| 売り上げ | 12億円(2009年7月期見込み) |
| 事業内容 | シルバーシューズ(高齢者シューズ)、ユニバーサルシューズ、リハビリシューズ、トラベルスリッパ、ルームシューズ |
会社沿革
- 1957年 綿手袋縫製工場として創業(創業社長 徳武重利)
- 1965年 有限会社徳武産業設立
- 1971年 本社工場 新設
- 1979年 第二工場新設(現本社)
- 1980年 株式会社に組織変更
- 1984年 十河孝男 社長就任
- 1990年 工場増設 ルームシューズ事業を強化し、通販会社と取引開始
- 1994年 香川県地域産業技術改善補助制度 研究開発補助金の交付を受け高齢者シューズ研究開発開始
- 1995年 高齢者用ケアシューズ“あゆみ”発売
- 1997年 通産省新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発補助金の交付を受け、高齢者・障害者用自立促進シューズの開発/高齢者・障害者用自立促進シューズ“オルトα・ドルフィン”発売
- 1999年 物流拠点・システムの構築
高松市、佐川物流にて物流倉庫の設置 - 2000年 香川県創造技術研究開発費(中小企業推進法認定企業)研究開発補助金の交付を受け、“寒冷地対応シューズ”の開発/中国江蘇省錫山市にて中国工場稼動
- 2002年 物流拠点をヤマト物流へ移管
- 2005年 東京事務所開設/中国無錫 検品物流会社設立
中国研修生 受入れ開始 - 2006年 パーツオーダーシステムを一部既製品化へ
中国広州に生産拠点 - 2007年 本社物流センター新設
- 現在に至る





















