2010年12月16日更新
接客の基本は笑顔だ。持ち前の明るさと親しみやすさで「福」を呼び込み、「攻めの営業」で活路を見いだす・・・・・・破綻したコトデンそごうの後へ進出したものの、リーマンショック以降苦戦を強いられている(株)高松天満屋の取締役支店長に今年2月、山野 睦治(むつじ)さん(50)が就任した。開店10年目、山野さんは「高松店再生元年」を宣言した。
2003年、広島市の八丁堀天満屋で、店舗改装にともなう激務が最も自身の成長につながったと話す山野さんは、7年間の組合専従で築いた人脈と、現場とのコミュニケーション力が強みだ。
「人口42万の高松に百貨店が2店舗、郊外には大型ショッピングセンターが2カ所です。非常に厳しい経済環境で、いまは攻める時ではありません。待つのも対策のひとつです」
山野さんは、狭い商圏の香川で、高松天満屋が攻める時を待つ。
高松店再生元年をかかげたものの、現実は厳しい。百貨店市場の縮小と消費不況、狭い商圏に多くの競争相手。山野さんの前にこれら三つの壁が立ち塞がっている。
組合専従が長い山野さんは、現場の本音や一人一人の性格も知ろうと、就任してすぐ全社員を順に、店長室のランチミーティングに呼んだ。
「地方百貨店の閉鎖が相次ぎます。人は試練で成長すると期待して、他人事ではないと話しました。頑張るぞと思う前に不安を感じたメンバーもいたかもしれません」。山野さんは、現場の信頼を得るには、まだ時間がかかると感じている。
攻めるためには資金も必要だ。そのため経費削減にはあらゆる手を打ってきた。時が来ればやることはいろいろあるが、いまは売り上げを上げるための投資も無理だ。落ち込みを抑える地道な努力しか方法はない。
「八方ふさがりのようですが、接客には明るい笑顔が一番です。それで売り上げが少しでも上がればモチベーションも上がります」
笑顔にお金はかからない。明るさと親しみやすさが山野さんの魅力だ。
山野さんは、開業10年目の高松天満屋で、6人目の店長だ。1年半ごとに替わったことになる。「グループの中でいちばん難しい店です。なんとかしたいという気持ちだけで業績は改善しません。店の課題が判るのに半年かかりますし、次の手を打つために、対外的な交渉など1年以上かかります」。1年半の交代では、いつも初めからやり直しの連続に近い。
「これからは変わると思います。これなら大丈夫というところに売り上げを持っていきたいですね」。山野さんは腰を落ち着けて「再生元年」に賭ける決意をこう表現した。
ことでん瓦町駅に併設されたターミナル型店舗は、売り場面積が34914m2地上10階(9階は除く)・地下1階で、単独店舗としては、天満屋グループで最大の巨艦店だ。
瓦町駅をまたぐ店舗は、南北に長い構造だ。「駅を3階に設ける計画で建てられましたが、ことでんが高架にならなかった。この変更で、ちぐはぐな所がいろいろあります」
南と北に離れてあるはずのエスカレーターは、中央部分に2台が並び利便性が良くない。地下駐車場からエスカレーターで直接店内に入れない。
「団塊世代のミセスは三越さん、この店は、団塊ジュニアに支持されていました」。しかし、現在はその30代の顧客がショッピングセンターに流れている。
「ゆめタウンさんの立地は最高です。郊外と中心市街地の真ん中で、高速バスの便も良いし、大型ブランド店を誘致できるだけの店舗面積も十分の、地域一番店です」
ショッピングセンターの広い無料駐車場も魅力だ。高松天満屋に一番近い高松市営の駐車場は、入り口が分かりにくいし入りにくい。
「瓦町からショッピングセンターに乗り入れているバスで、販促活動をしたいのですが、その話し合いがまだまとまりません」
郊外ショッピングセンターに取られたお客さんを、どう取り戻すか・・・・・・商店街も、高松天満屋に期待し、注目している。じっくり取り組まなくてはならない課題だ。
天満屋カードの会員数が少ないという。「伸びてはいますが、まだまだ安定した売上げになるスケールではありません」。グループ店舗の、一般客との売り上げ比率から、高松店は20%近く下回っている。
「自分の店だと思ってくださるカード会員が増えれば、不況でもある程度の売り上げが確保できるのですが」
カード会員やVIP客は、坂出、丸亀、善通寺などに多い。「天満屋は岡山が本体ですから、瀬戸大橋に近いエリアで親しまれていると、勝手に思い込んで営業してきたので・・・・・・」
三越を意識して、東讃に力を入れなかった営業方針が、もし間違いだったとしたら、そこに未開拓の顧客がいるのでは・・・・・・山野さんの笑顔が真顔に変わった。
山野さんは最近、業界新聞の記事に注目した。紳士ジャケットの平均単価は量販店で7000円、ショッピングセンターの専門店で1万1千円、百貨店では4万円とあった。
「ショッピングセンターとの価格差がものすごく空いています。私が入社したころは、高額商品ばかりを売っていたわけではないんです。量販店や大型店と差別化するため高級化したんです」
百貨店は、安いものから高いものまで、文字どおり百貨を売っていた。山野さんは、ショッピングセンターの1万1千円と、百貨店の4万円との「間」に活路があるとひらめいた。
ショッピングセンターと値段競争はしない。ジャケットなら2万円台の品ぞろえだ。
「巨艦店」、高松天満屋の広さはメリットになると、山野さんは言う。「ショッピングセンターのような、大型家電だとかファストファッションや、家具専門店のような大型テナントが、この店にあってもいいんです」
集客の決め手は、なんといってもデパ地下の食品売り場の魅力だ。「画期的な食彩館に改造すれば、瓦町駅の乗降客に来てもらえます」。瓦町駅ターミナル店舗の拠点性と広さを、再活用するアイデアだ。
「百貨店は45万の商圏人口に1店舗といわれますが、ショッピングセンターと百貨店の間の、価格帯の品ぞろえで、高松天満屋の活路を切り拓きます」
高松に、百貨店を二つ残すことが使命だという山野さんは、ショッピングセンターに流れた顧客を取り戻そうと、攻めの時を待つ。
広島時代、三越や福屋、そごうに出掛けて販売員によく声をかけた。メーカーから派遣された販売員は、人事異動で各百貨店に配置される。「広島八丁堀店から、他店へ行った人達とはおなじみですから、声をかけたり、かけられたりでした」
現場とのつながりを大事にしてきた。「よく飲みに行きましたね。本音も言ってくれるし私生活も相談してくれました。信頼関係ができると、店が苦しいときがんばろうと応えてくれるんです」
「岡山からきたばかりの白紙ですし、広島時代のやり方もダメだろうと思います。店長は対外的なことが多くて、なかなか時間が取れませんが、現場とのコミュニケーションには労を惜しみたくないですね」
山野さんが、現場とのコミュニケーション力を発揮するのは、これからだ。
- 1960年 広島市生まれ
- 1983年 明治大学経営学部卒業
株式会社天満屋 入社 - 2003年 広島八丁堀店 営業担当副店長
- 2007年 広島アルパーク店 営業担当副店長
- 2008年 岡山本店 営業担当副店長
- 2010年 株式会社高松天満屋取締役店長
- 現在に至る
資格
- 中小企業診断士
| 所在地 | 高松市常磐町1-3-1 TEL 087-812-7750/FAX 087-812-7777 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 伊原木 隆太 |
| 開店年月日 | 2001年9月1日 |
| 資本金 | 1億円 |
| 売上高 | 108億円(2009年度期実績) |
| 従業員 | 200人 |
「プライムパーソン」は、香川の経済を牽引する企業や香川に拠点を置く企業のトップにスポットを当て、企業理念やその企業に息づく深い歴史、今後の事業展望、また企業のトップパーソン自身の信念なども交え、今をときめく企業の横顔を「人=トップ」を通してお伝えしていきます。





































