2011年3月3日更新
海外で暮らすと日本で気づかなかったことをふと、ああそうなのか、と理解することがあります。私もロンドンで「日本の女性の社会進出には思ったより時間がかかるかもしれない・・・・・・」と、ふと思うことがありました。海外では、組織の多様性を高めようとする場合、人種や宗教、民族といった多くの解決すべき対立軸が存在します。性別が主たる対立軸になってしまう日本とは、問題の複雑さが違うのです。ただそれだけに、深刻な価値観の対立を解決する努力が多面的に積み重ねられ、その中で性別の対立も解消されてしまうともいえます。
日本はかつて多様な民族が北や南から集まって形成されました。もともと日本人という人種があったわけではなく、色々な歴史を抱えた人々が日本という島に暮らす中で、そこで織りなされる四季や山々の緑、青い海の美しさを愛でる気持ちが「日本人」という緩やかな紐帯を形成したという考え方があります。日本は世界的に見ても庶民レベルの芸能が発達した国です。芸能とは、美しいものを美しいとみんなで愛でるための仕掛けなのです。
赴任して間もない8月、丸亀町のドームで讃岐盆唄「一合まいた」に合わせて踊る盆踊りを見ました。その中に「さぬき高松芸どころ」という一節があります。小豆島の農村歌舞伎、直島の人形浄瑠璃など、人々が長い年月をかけて育んできた芸能が香川には息づいています。これはおそらく多様な価値観を持って島に渡ってきた人々を、緩やかに繋ぐための仕組みなのでしょう。
私もそんな香川の醍醐味を味わいたくて、三味線を始めました。三味線のお稽古をしながら、梅から桜へ移ろう高松の春を楽しんでいます。日本の組織が海外のような多様性を備えるには、まだ長い時間がかかるでしょう。そんな中でも、女性が高い志を持って働ける社会を一日も早く実現するために、多様な考え方、生き方、働き方を尊重する、そんな取り組みを地道に続けていきたいと思っています。
日本銀行高松支店長 清水 季子
「かがわ経済ナビ」は、経済に詳しい専門家の方々に香川や四国の経済状況、新たな動き、今後の展望などを語っていただく「潮流」。
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