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目からうろこ!BKゼミ

2011年4月7日更新

地方自治体のPRE戦略(全3回)1 公共施設が危ない―PRE戦略の意義―

3月11日、東北地方太平洋沖において未曾有の大地震が発生した。先ずは、この地震により被災された皆さまに、心からお見舞いを申し上げたい。

さて、今回の震災にみるように、災害時に対策本部や避難所等として使われるのは、庁舎、学校、体育館、公民館といった公共施設であることが多い。こうした公共施設をはじめとする国・地方自治体が所有する国有資産/公有資産(不動産)は、最近、PRE(Public Real Estate)と称されている。

驚くことに、地方自治体の中で、自らが所有するPREについて、規模・構造、改修状況、管理コスト、利用状況といった詳細な情報を全庁一元的に把握しているところは、ほとんどないと言っていい。このような状態のもと、地方自治体は、今後、PREに関し地震等の災害やその他の環境変化を見据えて的確な対応をしていくことができるのであろうか。

今回の連載(全3回)では、このような地方自治体におけるPREにかかる現状と課題を明らかにし、今後のあり方について考えていくことにしたい。

皆さんは、地方自治体の公共施設のうち、どの程度の施設が耐震性を確保しているのか、ご存知だろうか。国が昨年9月に公表した2010年3月末時点における公共施設の耐震化推進状況をみると、全国における耐震化率は70.9%、香川県でも69.5%にとどまっており、なんと3割の公共施設で耐震性が不足し、今回のような大地震の場合、人命にかかわる倒壊等の被害が生じる可能性をもつ状態にあることが明らかになっている。

次に、文末の図をご覧いただきたい。皆さん は、これが何の金額の推移を示すグラフか想像がつくだろうか。これは、ある県が、PREを所有していることで今後30年間に発生する各施設のライフサイクル・コスト(施設の設計・建設から維持管理・運営、改修・改装、大規模修繕、解体処分に至るまでの生涯費用)を一定の前提条件のもとで年度別に試算し、それを合計したPRE関連費用の総額の推移である(筆者一部加工)。この図をみると、今や高度成長期に整備された公共施設の大量更新期に入りつつあり、今後多額の財政負担が必要になることを理解することができる。多くの自治体でも、これとほぼ同様の推移を辿るものと推測されるが、実際にこうしたPREのライフサイクル・コストを試算しているのは、ごくごく僅かな自治体にすぎず、大半の自治体では、PREを所有することで全庁的に毎年度どの程度の財政負担が必要とされるか、全く把握できていない状態にある。

地方自治体の財政状況が厳しいことはよく知られているところであるが、こうしたPREのライフサイクル・コストまで十分に見込んで中長期的な財政見通しをたてている自治体は、実のところ少ない。したがって、このままだと必要とされる改修・改装、大規模修繕、建替え等を行うための十分な財政的な余力を確保できず、前記震災リスクに加え老朽化に伴う崩壊リスク等をもつ、安全性に多大な問題を抱える公共施設等が増大することが懸念される。

地方自治体のPREについて、別の観点からみてみよう。わが国の人口は2004年をピークに減少に転じ、今後加速度的に減少することは、皆さんご案内のとおりである。公共施設がおよそピーク時の需要にあわせて整備されていることに鑑みれば、今後PREに大幅な余剰が生じることは想像に難くない。

また、少子高齢化の進行により、人口構成にも大きな変化があらわれており、学校等の年少人口向けの施設は余剰し、老人ホームのような高齢者向けの施設は不足するなど、公共施設の需給バランスのミスマッチがより一層顕在化することも明らかである。

さらに、「平成の大合併」と称される市町村合併が進行したことに伴い、庁舎を含め、合併市町村内で重複する機能をもつ公共施設等の集約化等が進むことも予想され、ここでもPREの余剰がうまれることになる。

このように、地方自治体のPREは、耐震化や老朽化に対する備えが十分ではなく、安全性等の面から多くの資産リスクを抱えるとともに、人口減少や少子・高齢化といった環境変化を踏まえた公共施設の需給バランスも確保し得ていない状況にある。これまで以上に財政が厳しさを増す中、こうした状況から脱却するためには、先ず自らが所有するPREの現状、今後発生するライフサイクル・コスト等を把握する一方、PREの必要性等を検証することが必要になる。その上で、全庁的・中長期的視点のもと、必要施設の維持・改修や長寿命化、余剰施設の転用・売却などを、財政負担の抑制と平準化を図りながら的確に推進していくこと、すなわち「最少の経費で最大の効果」をあげることができるようPREを戦略的にマネジメントしていくことが求められる。

今般の震災による深刻な被害が明らかになり、改めて公共施設等の耐震性・安全性確保の必要性が認識される今こそ、各地方自治体では、中長期的視点にたった総合的なPRE戦略の重要性を重く受け止め、実践に移していかなければならない。

香川大学大学院地域マネジメント研究科 教授 佐野 修久

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「目からうろこ!BKゼミ」は、香川大学とビジネス香川のコラボレーション企画です。経営に役立つ専門知識や実践的戦略の具体的な実例、教育・研究の最前線等を紹介し、読者の皆様に新たな視点を提供していくことを目指しています。

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