2011年4月21日更新
前回は、地方自治体の所有するPRE(Public Real Estate)、すなわち公有資産(不動産)について、(1)耐震化や老朽化に対する備えが十分ではなく、安全性等の面で多くの資産リスクを抱えていること、(2)人口減少や少子・高齢化といった環境変化を踏まえると、今後大幅に余剰あるいは不足する公共施設があらわれるなど需給バランスが崩れていること、等の課題を明らかにした。その上で、厳しい財政状況のもと、これらの課題を解決するためには、全庁的・中長期的視点にたち、「最少の経費で最大の効果」をあげることができるよう、PREを総合的にマネジメントするPRE戦略が重要であることについて指摘した。
今回は、前回の議論を踏まえ、地方自治体がPREをマネジメントするために、今後どのような対応を図るべきかについて考えてみたい。
PREを適切にマネジメントするためには、中長期的な方針と実施計画を策定するとともに、これらに沿った全庁的な対応を推進・支援するための専担部署が必要なことは論を待たない。その際、
- 自ら所有するPREの現状を的確に把握する
- 現状を踏まえて、個別のPREについて評価・検証を行い、今後のあり方にかかる対応方向を明らかにする(PLAN)
- 対応方向に沿って、PREの処分・利活用等を具体化する(DO)
- 中長期的な方針、個別PREの対応方向等に沿い、「最少の経費で最大の効果」をあげる対応が実際になされているか検証する(CHECK)
という形で、いわゆる「PDCAサイクル」を円滑に回していくことが必要となる。
このうち、第1段階であるPREの現状把握は、的確にマネジメントを行う前提として不可欠なものである。しかしながら、驚くことに、PREをマネジメントする上で必要となる情報を全庁一元的に集約化したデータベースを構築している地方自治体は、ほとんどないと言っていい。名称・所在・用途等の基本情報はもとより、規模・構造、改修等の工事履歴、管理コスト、施設の残存年数や耐震診断・定期点検の結果、情報化など高機能化への対応度、利用状況などのデータを電子情報として整理し、全庁的に情報の共有化を図ることは喫緊の課題である。また、前回指摘したとおり、それぞれのPREにかかるライフサイクル・コストを試算し、PREを所有していることで今後どの程度の財政負担が必要となるかを把握しておくことも忘れてはならない。
次の第2段階では、これらの情報をもとに、
- 当該施設の需要、代替施設の有無、費用対効果等の面からみて、当該PREの「必要性」は高いか
- 耐震性、老朽化の度合い、情報化など高機能化への対応度等からみて、当該PREの「物理的性能」は高いか
- 立地環境等からみて、当該PREの「経済的価値」は高いか
といった視点で、個別PREの評価・検証を行うことが求められよう。その上で、これらの評価結果をもとに、それぞれのPREの今後のあり方について対応方向を明らかにする必要がある。その際の手法として有効なのが「資産仕分け」である。
最近、「事業仕分け」の活用が、国・地方自治体等で広がりを見せている。読者の皆さんの中には、テレビで見るだけではなく、実際に「事業仕分け」に参加したり見学した方もいるのではないだろうか。「事業仕分け」は、皆さんご案内のとおり、国や地方自治体の行っている事業のあり方を、必要性や実施主体の適切性といった面から、外部の目を活用しオープンな場で検証する仕組みである。
PREについても、この「事業仕分け」の考え方を用いることにより、そのあり方を客観的に検証し、今後の対応方向を見極めることが可能となる。例えば、先の個別PREについて評価・検証した結果を踏まえ、「必要性」と「物理的性能」をもとに「資産仕分け」を行うことについて検討してみよう(図参照)。
- 「必要性」、「物理的性能」ともに高いPREは、そのまま活用することを前提に、「維持」あるいは「改修」により対応することが望ましい。また、同一あるいは類似の機能等が別のPREに存する場合には、これらの機能等を移転集約化する受け皿として活用することも可能であろう。
- 「必要性」が高い一方、「物理的性能」の低いPREは、「物理的性能」を確保するための「改修」、「改築」、「建替」を行う、あるいは他のPREへ機能の「移転」を図ることが必要となる。
- 「必要性」が低い一方、「物理的性能」の高いPREは、当該PREの担う機能を廃止しつつ資産自体を有効に活用するため、「売却」、「貸付」、自治体自らによる他用途への「転用」等を行うことが求められる。
- 「必要性」、「物理的性能」ともに低いPREは、当該PREをこのまま利活用することは望ましくないため、これを取り壊し、その跡地の「売却」、「貸付」、他用途への「転用」を図ることになる。

このように「資産仕分け」を行うことを通じ、対症療法ではなしに、中長期的視点にたった適切なPREの対応方向を明確化することができる。加えて、(1)不要なPREの「売却」や「貸付」等を通じた収入の確保、大規模修繕や維持管理等に要する費用の削減、(2)「転用」や「改修」等による新設費用の削減など、財政負担の軽減・平準化にも寄与することにつながる。
財政状況が厳しさを増す中、「資産仕分け」が、PREをマネジメントする上で欠かすことのできない重要なツールとして認識され、活用されていくことを期待したい。




























