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目からうろこ!BKゼミ

2011年5月5日更新

地方自治体のPRE戦略(全3回)3 民間の力で公有資産を維持・再生する

財政状況が厳しさを増す中、地方自治体が、自ら所有するPRE(Public Real Estate)、すなわち公有資産(不動産)の抱える課題を解決していくためには、全庁的・中長期的視点にたち、「最少の経費で最大の効果」をあげることができるよう、PREを総合的にマネジメントしていくことが求められる。

前回は、PREをマネジメントするに当たり、中長期的方針と実施計画を策定した上で、1.PREの現状把握、2.現状を踏まえた個別PREの評価・検証と今後の対応方向の明確化(PLAN)、3.対応方向に沿ったPREの利活用・処分等の具体化(DO)、4.これらの検証(CHECK)という「PDCAサイクル」を円滑に回すことが必要なこと、第2段階(2.)で対応方向の明確化を図るに際しては「資産仕分け」が有効なこと等を指摘した。

今回は、「資産仕分け」の結果を踏まえPREの利活用・処分等を具体化する第3段階(3.)について、具体事例をもとに考えてみたい。

「資産仕分け」では、対象となるPREの今後のあり方について、「必要性」や「物理的性能」等をもとに、「維持」、「改修」、「改築」、「建替」、「売却」、「貸付」、「転用」、「跡地の活用(売却・貸付・転用)」等に仕分けることになる。仕分けを行った結果、例えば「維持」が選択された場合、そのPREを適切に「維持」していくためには、どのような対応をすればいいのだろうか。従来のように自治体自らが当該PREを維持管理するほか、企業やNPOなど民間主体の力を活用して維持管理を行うことも可能である。後者の場合にも、1.自治体が維持管理のうち清掃業務だけを民間主体に委託する、2.指定管理者として民間主体に当該PREの維持管理全般を委ねる、3.少々複雑になるが、当該PREを一旦民間主体に売却した上で必要部分を借り戻し、自治体が維持管理を行う(セール&リースバック)など、多くの手法がある。

「資産仕分け」において耐震化等を図るための「改修」や「建替」が選択された場合も同様である。1.従来どおり自治体が「改修」・「建替」(発注)を行い、その後の施設の管理も担う、2.自治体が「改修」・「建替」を行った後、指定管理者制度等を活用して施設の管理を民間主体に委ねる、3.「改修」・「建替」、施設の管理、その資金調達等をまとめて民間主体に委ねるなど、多様な手法が存在するのである。

最後の3.で紹介したような、行政が一定の関与をしつつ、施設の設計・建設(改修)・管理運営・資金調達を一体的に民間主体に委ねる手法は、PFI(Private Finance Initiative)と呼ばれている。このPFIを活用した特徴ある事例として、京都市が市内の全小学校(156校)の普通教室2500室に空調機器を設置した事業をみてみよう(下図参照)。

当初、京都市では、財政が厳しい中にあって一斉に空調機器を設置することは困難とし、5年計画で順次設置することを考えていた。しかし、設置時期に学校間格差が生じることを避けるため、一斉に設置することのできる手法がないかについて検討した結果、民間主体に空調機器設置にかかる設計・施工・維持管理・資金調達を一体的に委ねるPFIの活用を選択するに至った。これにより、民間主体は数カ月のうちに設計・施工を行い、夏休み明けに、市内一斉に空調機器の供用を開始し得ている。また、必要資金は民間主体が金融機関から調達するため、市は起債による多額の資金調達を要せず、空調機器の設置や管理にかかる委託費的なものを13年間にわたって民間主体に支払うだけで済むことになった。そして、その支払額は、市自らが空調機器の設置を行う場合に比べ28%も軽減されることになったのである。

現在、公共施設等を耐震化するための改修工事は、一次的な財政負担の増加を避けるため数年計画で順次実施している自治体が大半である。一方、こうした耐震改修についても、前述の手法を応用し民間の力を上手に活用することで、短期間で一斉に、財政負担の軽減・平準化を図りながら実施する自治体がでてきていることに注目する必要がある。

このほか、「資産仕分け」で「売却」、「貸付」、「転用」とされた場合にも、民間の力を活用しPREを再生することが可能である。例えば、東京都世田谷区では、生徒数が減り廃校となった学校の校舎を、自治体が一定の条件を付して民間主体に「貸付」を行うことで、映像・建築・家具関係等の個人事業者を誘致・集積させ、カフェやギャラリーを併設したデザインとものづくりの拠点に再生している。また、市町村合併に伴い不要となった町議会の議場を運送会社に「貸付」を行った結果、コールセンターとして再生され、新たに100名の雇用を生み出した新潟県南魚沼市のような例もある。

「跡地の活用」の場合も同様である。岡山市では、廃校となった小学校の跡地について、一定の条件を付して民間主体に「貸付」を図り、民間主体の力を活用して、マンション、介護付き老人ホーム、スポーツクラブ、公園、コミュニティ施設等を備えた多世代が居住・交流する「まち」として再生することに成功している。

今回みてきたように、「資産仕分け」の結果を踏まえて実際にPREを利活用・処分するための手法は多様にある。こうした中、地方自治体が一定の関与をしながら、企業やNPO等の民間主体と連携を図り、民間主体の知恵・ノウハウ・技術等を活用することで、自治体単独ですべてを担うより優れた形でPREの利活用・処分等を行えるケースも多い。地方自治体においては、今後、多様な手法の中から、「最少の経費で最大の効果」をあげることのできる最適な手法を検証し選択していくことが求められる。

香川大学大学院地域マネジメント研究科 教授 佐野 修久

目からうろこ!BKゼミとは

「目からうろこ!BKゼミ」は、香川大学大学院地域マネジメント研究科(香川大学ビジネススクール)の講師陣が、経営に役立つ専門知識や実践的戦略の具体的な実例を紹介し、読者の皆様にビジネスマネジメントの一助となる新たな視点を提供していくことを目指しています。

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