ビジネス香川 -「いま」を伝え、「未来」を育てる-

朝日新聞購読のご案内

文字サイズ
標準
拡大
  • プライムパーソン
  • 発進!それだけじゃない香川県
  • 指南
  • 潮流
  • 目からうろこ!BKゼミ
  • It's me!それは私です。
  • 香川再発見
  • 動向リサーチ
  • 特選さぬき食探訪

香川の元気印!

2011年5月5日更新

栄養管理ソフトを開発 障害抱える子どもたちのために― - コーエイコンピューターシステム

学校給食などの栄養管理を行うソフトウェアを企画・販売しているコーエイコンピューターシステム。「食」への関心が高まる今、このソフトを導入する施設は病院や老人ホームも含め、全国各地に広がっている。

社長の尾松賞昭さんはかつて養護学校で事務職員をしていた。ソフトウェアの開発を目指したのは、当時職場で慢性化していたある問題を解消したい。そして、障害を持つ子どもたちの家庭を少しでも支援したい―そんな思いからだった。

難しかった「計算式」

「計算式がとても難しかったんです」。尾松さんがソフト開発を思い立ったのは、香川県教育委員会の職員だった1987年頃、当時事務職員として勤めていた養護学校でのある場面がきっかけだった。

養護学校などの特別支援学校に通う児童や生徒の家庭には、遠距離通学や寄宿舎生活など様々な経済的負担がのしかかる。それを軽減するために県が支給している「就学奨励費」。尾松さんが話す「難しい計算式」とは、この就学奨励費を算出する計算式のことだ。

出席日数、支払った授業料や給食費、保護者の所得などから割り出し、さらに全額支給や半額支給など3段階に区分する。職員らは複雑な計算式に悪戦苦闘し、数カ月がかりで算出していた。「この手間を何とかしたい。当時の8ビットマイコン(マイクロコンピューター)に限界を感じたんです」。尾松さんはマイコンに変わる、まだ出始めたばかりのパソコンでプログラムを組み、就学奨励費をはじき出すソフトを作った。この悩みは全国各地で共通だったため・・・「どうせならお金にしよう、と思って販売しました」。そして・・・「障害児を抱える家庭は負担が大きいので、売り上げが障害者支援団体の銀行口座に振り込まれるようにしたんです。少しでも生活に役立ててもらおうと思って」。しかし・・・「職員が作ったものを売ってはいけない、と厳しく怒られました・・・」。こうして尾松さんはソフト開発会社の立ち上げを決心した。

現場の悩みを解消したい

養護学校での事務職員当時、同僚だった栄養士から、数々の現場の悩みを聞かされていた。子どもたちは治療食などそれぞれに個別の食事が必要なこと、そして、栄養管理が大変なこと・・・。これがコーエイコンピューターシステムのヒット商品「栄養管理ソフト・EIBUNシリーズ」の開発へと繋がっていく。

給食の栄養を管理

「EIBUNシリーズ」は保育園や小中学校、病院や老人ホームなどで給食業務にあたっている栄養士をサポートするソフトだ。献立の自動作成や栄養価計算、アレルギー確認やカロリー調整、過去にどのような食事をしたかの献立検索など、「食」に関するあらゆる情報を管理。個人から施設単位まで様々な場面に対応し、複数の施設でネットワークを結ぶこともできる。

例えば「病院版」では糖尿病や腎臓病に対応した献立の作成、「保育園版」では乳児食と幼児食の選択や、発育状況の目安になるカウプ指数の表示、「特別支援学校版」では就学奨励費や個人別給食費の計算など、それぞれの特徴に合わせた商品になっている。「これだけ給食や栄養計算に特化したソフトはないと思います」。「EIBUNシリーズ」は91年の「養護学校版(現特別支援学校版)」発売以来、栄養士の間で口コミで広がり、現在、全国約4000の学校・病院・福祉施設などで導入されている。

四国から全国へ

「最初は四国の中でビジネスができればいい、くらいに考えていたんです」。こう話す尾松さんだが、ある出来事をきっかけに視野は全国へと向かう。「懇意にしていた栄養士さんからソフトの導入を検討している施設がある、という話を聞いたんです。『地元の施設だから買ってもらえるだろう』と安易に考えていました。ところが買ってもらえなかったんです」。価格、品質ともに後れを取っていたことに気づいた。「当時は香川のレベルが、自分の世界が一番でした。他を見ていなかった。視野が狭かったですね」。しかし、これで奮い立った。全国で通用する、クオリティの高いものを作らなければ生き残れない―

現場に出ること

尾松さんが社員に口を酸っぱくして伝え続けることがある。

「現場に出ること」だ。

「会社にこもってプログラミングに時間を割いても本当に必要とされているものは分かりません。現場を見て、現場の声を聞いて、そしてソフトを作ったらまた現場へ行く・・・それがクオリティアップに繋がるんです」

苦い経験から10年が過ぎた頃、ある入札の場で、競合していた大手ソフトウエア会社からこんなことを言われた。「今回はコーエイさんを推しますよ。うちにもいいソフトがあるんですが、かないませんからね」―。「この時、あ~少しだけ一流に近づけたかなって思いましたね・・・」

養護学校の、いわゆる〝用務員のおじさん〟だった頃、何か子どもたちの力になれないかという思いで始めたソフト開発。「今でも当時の子どもたちが会社を訪ねて来てくれるんですよ」。尾松さんはそう話しながら、本当にうれしそうな笑顔を浮かべていた。

ソフト開発のパイオニア

尾松さんがソフト開発に乗り出したのはWindowsの最初のヴァージョンが出た頃。まだまだパソコンは身近ではなかったが、近い将来コンピューターの時代が来る、という考えから、公務員時代に香川大学の夜間学部に通ってプログラミングを一から学んだ。

そしてソフトを作って売ろうとしたが、やはりすぐには受け入れられなかった。軽自動車で夜通し全国各地を周り、売り込みに奔走したそうだ。ソフト開発のパイオニアといえるだろう。

コーエイコンピューターシステム

所在地
坂出市旭町1丁目1-27
TEL:0877-44-1668
FAX:0877-56-2208
URL:http://www.tera-net.co.jp/koei/
資本金 1900万円
従業員数 28人

沿革

  • 1989年 創業(主目的はパソコン教室、業務用ソフト開発)
  • 1991年 「EIBUN養護学校版(現特別支援学校版)」発売
  • 1996年 有限会社コーエイコンピューターシステムとして企業登記
  • 1997年 株式会社に組織変更
  • 2003年 東京支店 出店
  • 2005年 ソフトウェア企画開発部門を株式会社フリースタイルとして分社
ページの先頭へ移動