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動向リサーチ

2011年6月16日更新

全国主要「温泉旅館・ホテル」109社 東日本大震災の影響調査

~GW期間の集客は8割が「前年並み」か「前年以上」
                  7割超が今後を不安視~

東日本大震災の影響による経営破綻は120社(5月25日13時現在)発生している。なかでも旅館、ホテルなど宿泊関連業が15社(構成比12.5%)発生、最多業種となっている。

東京商工リサーチでは、全国の主要温泉旅館・ホテル経営会社を対象に各都道府県の売上高上位5社を抽出、ゴールデンウィーク(以下、GW)期間中の宿泊客動向、震災の影響、夏の観光シーズンの見込みについてアンケートを実施(有効回答109社)した。

その結果、GW期間は直前の個人予約が急増し、8割が前年並みか前年以上を確保したことがわかった。だが地域によって集客傾向に違いが表れ、7割超が今後の集客について不安視している。

GWの宿泊客数 「前年並み」と「増加」が約8割

109社のGW中の宿泊客数について、前年よりも「多かった」という回答は28社(構成比25.7%)、「前年並み」は59社(同54.1%)、前年よりも「少なかった」は21社(同19.3%)、その他の回答が1社(同0.9%)だった。「多かった」と「前年並み」を合わせると約8割の旅館・ホテルで前年並み以上の集客があり、全体としては活況を呈していたことがわかった。

東西の地域差が顕著 東北・茨城は約半数で集客減

東西に分類すると、西日本ではGW中の宿泊客数が「多かった」という回答は49社中16社(構成比32.7%)で、「少なかった」5社(同10.2%)を大幅に上回り、比較的好調だった。一方、東日本では「多かった」は60社中12社(同20.0%)に対し、「少なかった」は16社(同26.7%)で「多かった」を上回り、東西の違いが顕著となった。

また、東日本大震災の影響が大きかった東北6県と茨城県を合わせた23社では、「多かった」が4社(構成比17.4%)、「前年並み」が8社(同34.8%)、「少なかった」が11社(同47.8%)となり、約半数で前年の集客を下回った。

21社が震災の影響で宿泊客数減

GW中の宿泊客数の増減の原因では、「東日本大震災」がトップで56社(構成比44.4%)(複数回答あり)。東北に限らず、震災が影響して宿泊客が減少した旅館・ホテルは全国で21社にのぼった。具体的な影響の内容は『予約のキャンセル』が16社、『自粛ムード』が6社、『料金プランの低価格化』が8社、『風評被害』が2社。中には「震災による予約の減少を料金・サービス面で補った」、「自粛ムードへの対応として割安プランを作った」など集客への料金引き下げも見られた。

しかし、宿泊客数増加の反面、客単価の下落で売上増に結びつかなかったケースもあった。一方、GW直前の『駆け込み予約』という回答が10社、震災により娯楽や余暇を自粛していた人々がその反動で旅行に出かけたという『自粛の反動』が10社あった。

そのほか、「地元動物園での双子のパンダが呼び水となった(和歌山)」、「NHK大河ドラマ『龍馬伝』の効果で昨年、今年とも満室状態(高知)」など観光地の特色が色濃く表れた回答もあった。

今夏の宿泊見込みは「前年より減少」と「わからない」が7割超

夏の観光シーズンの宿泊客見込みについて全体で55社(構成比50.5%)が「前年より減少」の見込みと予想。また、「わからない」とした企業が26社(同23.9%)あり、合計で81社(同74.4%)が今夏の客足を不安視していることがわかった。減少見込みの主な理由としては震災の影響が42社を占め、このうち「原発問題」「自粛ムード」に言及したものが目立った。また「震災後に夏までのツアー予約が大部分キャンセルとなったため、とても例年水準には戻らない(島根)」「ツアーから個人・家族に客層が変化し全体的には減少(秋田)」などが多く、ツアー頼みの温泉観光地にとっては特に痛手となっている。

「わからない」とした企業でも「原発問題収束の進展具合による」が多い一方、「ツアーのキャンセルは続出しているが、GWのように直前で個人予約が増加する可能性もあり読めない」という意見もあった。

また、東西に分類すると東日本では「減少」58.3%に対し、西日本では40.8%と低下。一方、「わからない」が東日本21.7%に対し西日本では26.5%だった。「減少」と「わからない」の合計は東日本80.0%、西日本67.3%となり、東西の認識の違いが表れたものの、ともに「前年並み」と「前年以上」を大きく上回り、悲観的な見通しが大勢を占める結果となった。

電力不足問題が今後の懸念 支援が機能しなければ破綻増も

観光庁が全国の旅館・ホテルを対象とした調査によると3、4月の宿泊予約のキャンセルは全国で36%、東北では61%に上った。ただ、GW期間に限れば直前予約の増加で客足回復の動きが見られた。活発な消費が被災地支援に繋がるという考えが過剰自粛への拒否反応を促し、「癒し」を求める消費者ニーズと合致した。また、被災地の隣接地域では被災者の受け入れをはじめ、後方支援活動で重要な役割を果たし、旅館・ホテルが担う社会的役割も見直されている。

原発事故に端を発する電力不足が東京電力管内、浜岡原発が停止した中部電力管内をはじめ東北、九州などにも拡がり、今夏の全国的な懸念事項として浮上している。仮に計画停電が実施された場合、どのような影響を被るか調査したところ、回答を得た101社中「影響なし・想定していない」は18社(構成比17.8%)で、83社(同82.2%)は何らかの悪影響を受けると回答。このうち休館・営業停止等の可能性にまで言及した企業は22社(同21.8%)だった。装置産業で固定費の比率が高い宿泊業者にとって、稼働率の低下は致命的なダメージとなる。

今夏の天候や気温にも左右されるが、猛暑になれば電力の逼迫懸念が拡大し、節電要請がさらに強まる。電力供給は消費マインドにも影響を及ぼし、過剰な自粛ムードへのゆり戻しを招きかねない。さらに放射能汚染に対する不安や、東北を除いた高速道路の無料化撤廃なども国内観光業には逆風となる。

業界全般の見通しが不安定のなか、個々の企業努力には限界がある。今後は、地域ぐるみの積極的な顧客誘致、行政による風評被害の払拭や観光促進策も必要だろう。また、資金繰りが悪化した企業には特別貸付制度などのスムーズな運用も不可欠となる。こうした有形無形の支援策が機能しなければ、震災影響による温泉旅館・ホテル業者の経営破綻は今後も増加することが懸念される。

株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 竹 茂和

動向リサーチとは

「動向リサーチ」は、東京商工リサーチがまとめる詳細な情報データに基づき、株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長・竹 茂和さんが香川の経済動向を鋭く分析します。

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