2011年9月15日更新
競争優位の源泉は、市場と組織の2つにわけて考えることができる。今回は競争優位の源泉の1つである、市場に関連する考え方を扱う。
PIMS(Profit Impact of Market Strategy:市場戦略の収益に対する影響)研究は企業収益率に影響を与える要因を分析するために、米国のゼネラル・エレクトリック社によって実施された研究である。同社の戦略計画研究所より継承・発展してきた。450社3000の戦略事業単位のデータベースを分析したPIMS研究により導き出された結論は、つぎの2点である。
- 市場シェアと収益性は、強く結びついている。10%市場シェアが大きくなると、ROI(Return on Investment:投資収益率)が5%増加する。
- 長期的には事業単位の業績に影響を与えるもっとも重要な要因は、競争相手に対する製品およびサービスの相対的品質である。
「マーケットシェアが利益率に大きな好影響を与える」という報告は、マーケットシェア追求戦略の重要性を再確認させ、1970~1980年代に企業戦略論の実証的よりどころとなった。
市場による競争優位性と関連する根拠として、「スイッチング・コスト」や「ロックイン」がある。
市場による競争優位の例としては、パソコンのオペレーティングシステム(以下、OSと略す)におけるマイクロソフト社があげられる。1社のOSが市場で普及してしまうと、ほかの企業が新規に参入することは難しくなる。
アプリケーションソフトウェアひとつ考えてみても、スイッチング・コストがあり、顧客はロックインされている。Windows上で動作するアプリケーションソフトウェアと同等のものを別のOS上で用意することは難しく、それゆえ後発のOSが顧客に支持される可能性は低い。
市場支配力による競争優位の特徴として、一旦市場支配力をもった企業は、競合他社と同等の努力をするだけで高い利益率を達成できることがあげられる。
とくに新しいことをしなくても他社と同じようなことをしていれば、高い利益率を達成できる可能性が高い。
顧客が現在利用している製品・サービスから、別の製品・サービスに乗り換える際に負担しなければならないコストをスイッチング・コストとよぶ。なお、スイッチング・コストには経済的なコストだけではなく手間、リスク、心理的抵抗感なども含まれる。顧客がある商品を購入すると、その商品から他社製品への乗り換えが困難となり、顧客との継続的関係が維持されやすくなることをロックインとよぶ。各種のクーポン券、ポイント制度、ボトルキープ、株主優待制度等は、ロックインを目指したものである。
たとえばIBMのメインフレーム上に膨大なデータベースを利用したアプリケーションをもっている企業は、IBMにロックインされており、IBMのハードウェア、メインフレーム上で動くOS、データベース、アプリケーションソフトウェアによって2重、3重にロックインされているといえよう。
また、WindowsVistaからWindows7に乗り換えずに、Macintoshを購入しようと考えているユーザーがいたとする。OSを乗り換えるためには、アプリケーションや周辺機器を買い換える必要がある。スイッチング・コストの存在によりマイクロソフトはWindowsの価格を高く設定できる。
ほかに、航空業界のマイルポイント制度は、スイッチング・コストを引き上げ、顧客を囲い込み、ロックインを図るために導入されている。スイッチング・コストやロックインは、利用している携帯電話や携帯電話会社、インターネットプロバイダー、任天堂のDSやソニーのプレイステーション等のゲーム機、電子メールアドレスやソフトウェアを変える場合にも発生する。
取り替えのための手続きや操作方法に習熟するための時間、再設定をするための手間とコスト、各種ポイントが無効になることによるコスト等である。同様のことはコンタクトレンズにもあてはまる。洗浄液等も買い替えなければならないことがあるからである。
既存顧客を囲い込み、ロックイン効果を高めるために、自社のサービスを長く使えば使うほどポイント等で優遇したり、中途解約に対して手数料を設定したりすることを通じて、スイッチング・コストを高くすることができる。
逆に買い替えを促すためには、スイッチング・コストを低下させる仕組みやサービスがとられる。たとえば、携帯電話については同じ電話番号を利用できるナンバーポータビリティや初期費用を安くすること、電話番号や電子メール等のアドレス帳の移行サービス等でスイッチング・コストの低下を図っている。
また、同じ化粧品を使いつづける人がいるのも、ほかの化粧品を探すコストや手間、これまでに使いつづけたことに対する心理的なスイッチング・コストがあるからと考えられる。この場合、新しい顧客を獲得するためには、無料サンプルや初回利用者向けの「お試しキット」など、スイッチング・コストを下げるプログラムが提供される。
(再春館製薬所ホームページより https://www.saishunkan.co.jp/)




























