2011年10月6日更新
組織力による競争優位性のうち人的資源の価値は、能力やスキルだけで決まるわけではない。潜在的な能力が高い人材だからといって、組織にとってのパフォーマンスが高いとは限らないのである。
かつての日本企業は、従業員の組織へのコミットメントが高いといわれてきた。日本企業の生産性の高さは、日本企業従業員の帰属意識の高さから説明されることが多く、所与とみなされてきたといっていいほどである。しかし、このような日本的企業システムは、大きく変化した。
たとえば、職場への帰属意識が低下した。2007年版の国民生活白書の「働く意識から見た職場と人とのつながり」に関する調査のなかで、会社に対する帰属意識が「もともとない」とする回答が1995年には18.4%であったが、2000年には23.7%に高まった。飲み会、職場での旅行などの機会が大幅に減少し、7人に1人が職場に相談相手がいないと答えた。また帰属意識が「薄れた」という回答について19.4%から32.2%に10%以上も高まった。
組織コミットメント(Organizational Commitment)とは、組織と従業員の距離を測るための概念である。組織には目標があり、組織コミットメントは、組織の目標と個人の目標との乖離を小さくするはたらきがあるといわれる。
組織コミットメントが注目されてきた理由は、企業にとって重要な指標と関連することが多いからである。組織コミットメントは、業績と正の関係があることが報告されている。また、離職率、欠勤率、職務満足度のほか、職務上の技術水準や精神的疲労をよく説明できるという報告もある。また、カッツとカーンは、組織に強くコミットしている従業員は、創造的あるいは革新的な、本来の職責以上の活動をおこない、組織を生産的にすると述べた。
ここで、注意をしなければならないのは、日米における、組織コミットメントのとらえ方のちがいである。日本では、組織コミットメントを運命共同体といった、個人が集団のために犠牲となる滅私奉公的な意味でとらえる傾向がある。しかし、米国における組織コミットメントは、倫理観から距離をおいたものであり、従業員と組織の結合(Linkage)といったように、組織にとって必要不可欠な積極的な意味でとらえられている。
なお、組織コミットメントと近い考えに、職務満足度(Job Satisfaction)がある。組織コミットメントは、組織全体に対する個人の関わりであって、安定しているのに対し、職務満足度は、ある仕事に対する満足度であり、変わりやすい。組織コミットメントは、職務満足度に比べると、組織への適応といったプロセスを経て、長い時間をかけて形成されるものであって、短時間には変化しないものとされている。組織コミットメントは、年といった単位で形成されると考えていいだろう。
組織コミットメントを複数の次元からとらえる研究が増加している。なかでも、マイヤーやアレンによる3次元組織コミットメントモデルでとらえることが多くなってきた。
組織コミットメントは、複数の立場から研究がおこなわれ、考え方のちがいから混乱を生じている。このアプローチは、それらの考え方を統合したアプローチである。マウディらが、組織コミットメントの高低を1次元でとらえたのに対して、マイヤーらは、組織コミットメントを「組織と個人の関係」と広くとらえ、つぎに述べる3次元モデルによって、個人がある組織に対してどのような観点から、どの程度かかわっているかというとらえ方をしている。マイヤーらの3つの次元とは下記のような考えである。
第1の次元の情動的コミットメント(Affective Commitment)は、組織との同一化・一体感による感情的な愛着による組織コミットメントである。「組織に所属したいから所属する」という、積極的で能動的なコミットメントであり、もっとも広く用いられてきたマウディらの組織コミットメントの考え方を表している。
第2の次元は、滞留的コミットメント(Continuance Commitment)である。経済的理由や地位を失うために組織を去ると損をするから組織にとどまる組織コミットメントである。すなわち、ほかに行くところがないからとどまるというコミットメントであり、「必要だからとどまる」という受動的な理由によるコミットメントである。
第3の次元は、規範的コミットメント(Normative Commitment)である。「コミットすべきだからコミットする」というように、組織へのコミットメントを義務としてとらえる義務感や忠誠心・恩義からの組織コミットメントである。初期の社会経験を通じて発展するという。たとえば、両親の会社に対する忠誠心など、家族からの影響あるいは転職に対する社会的容認度など、文化によって影響されるコミットメントである。





























