2011年10月20日更新
わが国は、世界最先端の成熟化社会に突入しており、地域ビジネスの戦略が必要である。2010年の農林業センサスによると、過去1年以上作付けがなく、今後も数年は耕作する見通しのない耕作放棄地が5年前より2.6%増加し、香川県の2倍以上の40万ヘクタールに達した。また、農業経営の多角化がみられ、農産物加工に取り組む農業経営体が4割以上増えて、3万4000となった。
超産業化とは、素材を生かした加工・製造によって付加価値を高め、サービスを提供する単一の産業を超えたビジネスモデルである。1次産業の生産は10兆円であるが関連産業を含めると100兆円とGDPの5分の1となる。サプライチェーンの分断を超えることが必要である。「分業」から「合業」し、地域の資源を「自ら高く売る」ことが有効となる。農業で言えば、素材である農産物の栽培だけでなく、農産物を加工・製造し、食品・化粧品・医薬品として付加価値を高め、さらにレストラン、農業体験、観光などのサービス業を行うことである。農林水産省の6次産業化、経済産業省の農商工連携といった概念に近いが、超産業は2次産業から1次産業や3次産業などへの融合も含まれる。
浅いU字曲線であるスマイルカーブで示されるように、コモディティ化している製品・サービスの場合、加工・製造段階で付加価値を得ることは難しくなってきている。アーキテクチャーが共通化され、オープン化・モジュール化すると、加工・製造プロセスは、安い労働コストの国や地域で行うようになる。従って、労働コストが高い日本で十分な利益を得て、競争優位性を獲得することは難しい。素材といった上流のプロセス、あるいは、下流のサービスのプロセスでの企業戦略が求められている。
3次産業からの超産業化の例としては、ワタミがある。同社は農業へ進出し、農業生産法人有限会社ワタミファームを通じ、7つの直営農場を経営する。また、介護ビジネスなど異なる3次産業にも進出している。外食事業のノウハウを生かして、おいしく、安全で食べやすい介護食の提供を通じて満足度を高めている。
2次産業から1次産業への超産業化として、植物工場が挙げられる。鉄鋼大手のJFEがJFEライフとして参入したほか、三菱化学、カゴメ、キユーピーなどが展開している。これらは工場内の遊休地を活用したことが元になっている。成熟化したわが国では、余剰設備や遊休地利用が必要である。
1972年に施行され、現在も続いている農村地域工業促進法といった考えや、1次産業から2次産業、2次産業から3次産業へシフトするというペティ=クラークの法則を超えることが必要となる。
それでは、超産業化のための戦略の要素とは何であろうか。
第1に、「地域コミットメント」である。これは私がネーミングしたものであるが、人々と地域の関係性を示すものであり、地域愛、地域を自分のこととして内在化させること、功利的に関与すること、地域への使命感の4つの要素からなる。
地域コミットメントの延長線として、「ゾーニング」という概念を挙げたい。特定のビジネス上でまとまった空間を設定することであるが、必ずしも行政区画と一致する必要はない。むしろ広くとりすぎない方がいい。例えば県単位で何かを売り込もうとすると、「この商品とあの商品の売り込みを平等に扱わなければならない」といったジレンマも起きる。国単位、県単位でなく、もっと小さい単位だからこそ、より効果が生まれることもある。地方ビジネスにおいては、地域コミットメントを通じた顔の見える関係が重要な働きを示す。
第2に、地域プロデューサーである。地域の担い手は、先導型リーダーシップの要素だけではなく、「発想」「作り手」「原点回帰」といった多重的なリーダーシップの要素が必要であり、次に挙げる外部力とのネットワークが大きな役割を演じることが多いからである。
第3に、外部力(ヨソモノ)である。地域外の専門家、文化人、企業などによる課題発見力、需要動向の把握力、企画・デザイン力、販路開拓力が挙げられる。地域内だけでは人材も資金も不足していることが多い。いかに〝ヨソモノ〟を取り込むかが課題である。
第4に、物語(ストーリーテリング)である。ストーリーテリングとは、地域に存在する資源を認識し、理解してもらい、伝える。例えば、さぬきうどんの店は、「自ら畑でねぎを取り、切っていれて、自分でゆがいて食べる」という物語に、消費者が共感したのである。
なお、成果(パフォーマンス)の捉え方は経済的指標だけではなく、例えば、その地域を訪問したいかという「訪問魅力度」、地域の製品・サービスを購入したいかという「購入魅力度」、その地域に居住したいかという「居住魅力度」等で測ることが有効であろう。
以上のように、地域コミットメントが基盤となり、地域プロデューサーが内部力(ジモティ)と外部力(ヨソモノ)の新結合を図り、素材を生かして、加工・製造や付加価値の高いサービスと組み合わせながら物語を通じて発信することが、超産業戦略である。そして、地域プロデューサーを育成するのが今後の「学」の役目となる。





























