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動向リサーチ

2011年11月17日更新

2011年1月~9月「円高関連」倒産動向

~歴史的な円高水準が続くなか、今年の円高関連倒産は3割減~

外国為替市場は、円相場が戦後最高値を更新するなど、歴史的な円高が続いている。高水準の円高による中小企業の経営への影響が懸念されているが、2011年の円高関連倒産は、前年同期を3割下回って推移している。
「なぜ今年の円高関連倒産が増えないのか?」この要因を探った。

「円高関連」倒産 前年同期比3割減の34件

11年1月~9月の「円高関連」倒産は、前年同期比33.3%減の34件(前年同期51件)となった。負債総額は、同40.8%減の470億8600万円(前年同期796億1400万円)と大幅に減少した。

産業別 卸売業が最多

34件の産業別では、卸売業が22件(構成比64.7%)で最多となった。次に製造業が11件(同32.3%)、サービス業他が1件だった。

さらに細かな業種別では、機械器具卸売業が7件、繊維.衣服等卸売業が5件、各種商品卸売業が3件、飲食料品卸売業が3件となった。

形態別では、破産が21件(同61.7%)と最多。次に民事再生法が9件(同26.4%)、銀行取引停止が3件(同8.8%)、内整理1件と続く。

「デリバティブ損失」倒産は15件から11件に

10年の「円高関連」倒産は、前年比3.4倍の75件に急増した。急増した大きな要因の一つは、「通貨デリバティブ損失」倒産が26件発生したことがある。急速な円高進行で通貨デリバティブ(金融派生商品)を契約した企業が多額の損失を被り、対応できないまま資金繰りに行き詰まったケースが続出し、この問題は国会でも取り上げられた。

これに対し11年1月~9月は、「円高関連」倒産34件のうち、「通貨デリバティブ損失」倒産は11件(前年同期15件)と減少している。

倒産減少の背景 金融ADR制度の利用増加

歴史的な円高水準が続くなか、今年の「通貨デリバティブ損失」倒産が増えない背景の一つには、金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)の利用増加があるとみられる。

金融ADR制度は、金融機関と利用者とのトラブルを、金融分野に見識のある弁護士等の中立・公正な専門家(紛争解決委員)が和解案を提示し、裁判以外の方法で解決を図る制度だ。

銀行業務等の指定紛争解決機関である全国銀行協会の調べによると、「新規申立件数」は10年4月~6月は36件だったが、同7月~9月32件、同10月~12月98件、11年1月~3月156件、同4月~6月201件と急増している。11年4月~6月では、このうちの115件(構成比57.2%)がデリバティブ業務に関するものだった。このように金融ADRの利用が当事者間の和解を促し、「円高関連」倒産のうち、「通貨デリバティブ損失」倒産を抑制しているとみられる。

さらに大手銀行を中心にして、為替系デリバティブ取引で損失を被った企業には経営実態に合わせ、決済資金や融資等の資金繰り支援に積極的に対応していることも効果を見せている。だが、金融庁によると04年度から10年9月までの販売契約数は6万3700件を超えており、金融ADRの申立件数は氷山の一角にしか過ぎない。

歴史的な円高水準のなか、「円高関連」倒産の減少は金融ADR制度利用による企業の救済申請の急増が大きい。東京商工リサーチ調べでは、東証1部、2部に上場するメーカー121社の約半数が期初想定為替レートを1ドル=80円に設定し、円高に対応している。しかし、中小企業は為替レートを見直す余力は乏しい。さらに、国内下請け企業は、取引先からの値引き要請やコスト削減策への対応力も限界に達している。

円高が現状水準以上に進展すれば、通貨デリバティブなどでも為替差損が膨れていく。これまで将来の銀行取引に与える影響を考慮し、金融ADR制度の利用に二の足を踏んでいた中小企業の申し立てが増えると、銀行経営に深刻な影響も与えかねない。

長引く円高は、旅行業など一部業界にはメリットがある。だが、国内メーカーに生産拠点の海外移転を促し、労働力や部品などの海外現地調達、現地生産という「産業の空洞化」も加速させていく。中小企業の自助努力、経営体力は限界に近付いている。早急に機動的で省庁横断による思い切った円高対策が求められている。

株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 竹 茂和

動向リサーチとは

「動向リサーチ」は、東京商工リサーチがまとめる詳細な情報データに基づき、株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長・竹 茂和さんが香川の経済動向を鋭く分析します。

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