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発進!それだけじゃない香川県

2012年10月18日更新

通人うならす銅器の色 打ち出す職人工芸の粋 - 打出し銅器 大山銅工所

1枚の銅版を加熱しながら金槌とか木槌でたたいて、やかんや花器にする打出(うちだ)し銅器(どうき)は香川県指定の伝統的工芸品です。神戸で修業した職人の技を香川県に持ち帰った父が亡くなってからは、たった1人でコツコツと手作り工芸品を守ってきたのが大山銅工所の伝統工芸士大山柳太さん(78)です。

やかん、花入れ、花瓶、一輪ざし、急須(きゅうす)、金(かな)だらい……。たった1枚の銅板を加熱しては根気よく叩(たた)いて作る打出し銅器は、色、形、風合い、どれをとっても通をうならせる魅力がいっぱいだ。

銅器は磨くと独特の光沢が出る。通人は「曇った色」と表現する。「銅は、熱伝導がいい、均一に熱が回る、丈夫で長持ちし、通人好みの曇った色が出る、長所があります」。これを生かすのが、たとえば、やかんや湯沸しであり、鍋だ。「空焚(からだ)きしなければ、100年は持つ」そうだ。

工房の棚に並ぶ製品は、見るからに高価そう。それもそのはず、やかんなら一つ仕上げるのに最低1週間から10日はかかる。手間暇をかける分、付加価値がむちゃくちゃ高いのだ。

父の故為八さんは戦前の大川郡松尾村(のちの大川町、現・さぬき市)出身。神戸で打出し銅器の修業をして戻り、工房を開いた。工房が遊び場だった。小学1年生のころには金槌で銅版を叩いていた。「父に教えてもらった記憶はありません」。文字通り「門前の小僧、習わぬ経を読む」である。中学卒業と同時に工房にいた。以来60年余、打出し銅器一筋。今でも1日8時間は作業することを目標にしているが、「年なので、4~5時間くらいしか叩けない」日が多い。

かつては為八さんに有能な弟子がいたことがあるが、若死にして、たった1人で技を守ってきた。息子も家業を継がなかった。還暦を迎えたころ、打出し銅器教室を始めた。現在、生徒は男性3人、女性3人。月に1~2回通ってくるが、みんな団塊の世代。打出し銅器の魅力にはまった人たちだが、あくまでも趣味。後継者とはならない。

作業手順を一つひとつ丁寧に教える。材料を乗せ、槌で叩く土台となる道具「鳥口金床(とりぐちかなとこ)」の大半は自分でつくった。ほかにも手作りの道具は多い。それらを駆使して授業するから、敬愛される。高知県須崎市からくる生徒も。サボる人はいない。

大山銅工所

伝統工芸士 大山 柳太(おおやま りゅうた)
工房・教室
高松市扇町1丁目28-13
TEL:087-821-6577
創業 1925年(大正14年)
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