2014年10月16日更新
2013年7月に設立した水の葉設計社は、住宅の新築・リフォームの設計や、省エネルギー診断、耐震診断などを行う。代表は中野弘嗣さん(30)。設立から1年が経ち、家庭の省エネ診断を本格的に開始した。「住まい手の行動、住宅の設備、建物そのものの、3つのポイントから診断します」
設計士である父の影響を受け、建築の仕事に興味を持った。子どものころ、母と一緒に弁当を持って、父が働く現場をよく訪れた。「ものづくりの原点は、そこにあるような気がします」。母は、長い歴史を持つ垂水神社の宮司。水の葉設計社の名は、垂水神社の由来にちなんでいる。
かつて、この地には大きな松の木があり、松葉からは水が滴り落ちていた。その様子から神社に「垂水」と付けられたそう。中野さんは、水が伝う松葉をイメージして、社名を「水の葉」にした。
幼少期に社叢など緑豊かな環境で遊んでいたことも、今の仕事に大きく影響している。「以前は畑や田んぼがもっと広がっていました。変わっていく景色を見ていて、このままでいいのだろうかという気持ちが、いつも心のどこかにありましたね」
高校卒業後、岐阜県立森林文化アカデミーに進学。森と木を活用して、持続可能な社会の形成に貢献できる人材の育成を目指す学校だ。木や森の働きと木造建築について学び、その後、兵庫県にある建築設計事務所に就職。住宅の新築やリフォーム、欠陥住宅の調査に携わった。
そして昨年、念願の独立を果たした。「建築の仕事を志したときから、自分の事務所を構えるつもりでいました。家庭の省エネ診断もしてみたいことでした」
水の葉設計社は「Forward to 1985 energy life」に賛同、地域の家庭に向けて省エネアドバイスを行う地域アドバイザー拠点となっている。「Forward to 1985 energy life」は、住宅の性能と暮らし方を見直して家庭の省エネを図り、1985年と同レベルの電力消費量を目指すもの。中野さんが学生時代に授業を受けていた、野池政宏さんの発案で始まった活動だ。

省エネ診断は、まずヒアリングシートから始める。一戸建てやマンションといった建物の種類、設備や家電の使用状況、月ごとの光熱費などを記入。その内容と現地調査をもとに、専用のソフトウエアを使って診断する。
中野さんは、家電製品の使い方や暮らしの改善点などをアドバイス。依頼者は、シートへの記入や診断結果から、どれだけ電気やガスなどのエネルギーを使っているか、また、改善すればどれだけエネルギーを使わずに済むか、目に見える形で知ることができる。

「必要があれば、リフォームも行います。それが設計事務所の強みですね」。省エネの効果は、光熱費を抑えられるという経済的なものだけではない。建物の快適性、住む人の暮らしやすさも向上するという。
「その建物で、いかに快適に過ごしてもらうかを考えます。ほかの設計事務所や工務店とも協力して、省エネ診断を広めていきたい。香川にある全ての家が、省エネで快適になったらいいですね。未来の人たちのために、良い環境と良い家を残したい」
中野さんは今後、垂水神社の神職の仕事も本格的に携わっていきたいと考えている。「神社の仕事は地域を良くしていくこと。設計の仕事は省エネで環境を良くしていくこと。この2つが、いずれはつながっていくのかもしれません」
- 1984年8月 多度津町生まれ
- 2006年3月 岐阜県立森林文化アカデミー森と木のエンジニア科 卒業
- 2006年7月 胡桃設計一級建築士事務所 勤務
- 2013年7月 水の葉設計社 設立
所在地 | 香川県丸亀市垂水町1262-1 |
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TEL | 0877-35-9559 |
FAX | 0877-35-9566 |
ホームページ | http://www.mizu-arch.com/ |
事業の概要 |
住宅の設計・監理(新築・リフォーム)、家庭の省エネルギー診断、 既存住宅の調査・耐震診断 |
「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」というフォークソングがありました。
自由な発想と情熱を原動力に次代を切り拓く新しい「Next」世代に迫ります。