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2016年3月3日更新

「SOKO」で世界市場へ挑む 日本ケミフェルト 社長 吉田 寿さん

靴を脱いだ時、インソール(靴の中敷き)がちらりと覗く。日本ケミフェルトの吉田寿社長(49)は、そこに新たな市場があると目をつけた。5年前に開発した自社ブランド「SOKO(ソコ)」には、表面に花柄、幾何学模様、動物のイラストなど様々なデザインが施されている。

「インソールをファッションとして楽しんでもらおうと思ったんです」

靴のサイズ調節やクッションとして使われるのがインソールだ。ファッション性に注目した靴メーカーや中敷きメーカーは過去に無かった。「まるでドン・キホーテのように独自路線を突き進んでいます」

SOKOは現在、欧米など世界10カ国で販売されている。あえて「靴を脱がない文化」がある海外を重視したのにも理由があった。

家業の倒産、下請けからの脱却・・・・・・様々な思いを胸に吉田さんは、究極のニッチトップを目指し、すぐ足元にあった手つかずの市場に果敢に挑んでいく。

日本ではなく、パリから発信

「下請け、受け身の商売では将来が無いと思ったんです」

社名の「ケミフェルト」とは天然ゴムにフェルト繊維を練り込んだもので、ゴムが持つグリップ力とフェルトの滑らかさが同居する日本ケミフェルト社独自の特殊素材だ。これまでは、振動を吸収し適度に滑るという特長を生かした大型テレビを支える足元のゴム板や、防音にも効果的な車の天井の緩衝材などを、大手家電メーカーや自動車メーカーから注文を受けて製造していた。

テレビのアナログ方式からデジタル方式への移行が始まった10年程前、工場はフル稼働していた。「何もしなくても毎日バンバン注文書が来ていました」。テレビの足ゴムは増産が続き、売上は全体の6割を超えた。しかし吉田さんは、「この波はいつか必ず収まる。今のうちに次の策を打たなければ・・・・・・」。SOKOの開発を決意した瞬間だった。

「居酒屋の座敷席に靴を脱いで上がる時、インソールをちらっと見て楽しむ。そんな遊び心のある、さりげないおしゃれですね」

元々、ケミフェルト素材に消臭や調湿効果のあるコルクを混ぜた黒無地のシンプルなインソールを製造していた。中でも女性向けのブーツ用に人気があったことでピンときた。

「これまでの機能性に、『インソールを着替える』という発想を加えました」

5年前、東京のデザイナーと組んで商品開発に着手。大人向けから子供向けまで40種類、色鮮やかでユニークなデザインのインソールを作った。

問題は売り方だった。「実は過去にも阪神タイガースのチームロゴや、坂本龍馬ブームに乗って龍馬の手紙文をデザインしたことがありました。でも全く売れませんでした」

どうすれば注目してもらえるか。吉田さんはフランス・パリから発信することにした。「おしゃれに関心が高いのはフランスです。感性の良い人達に遊び感覚で広げていってもらおうと考えました。それに日本人は舶来ものが好きなので海外で箔を付け、"逆輸入"の構図でやってみようと思ったんです」

2012年1月、JETRO(日本貿易振興機構)の支援を受け、パリで開かれたヨーロッパ最大級の展示会「メゾン・エ・オブジェ」にSOKOを初出展した。「世界各国のバイヤーが、5日間で200人位、もの珍しそうに次々とブースにやって来ました」

その後も海外での展示会に積極的に参加し、今や販路はフランス、イタリア、タイや中国など海外10カ国に広がった。着物、手まり、鶴など「和」のデザインが特に好評だ。「中国では馬にまたがって扇の的を射る那須与一が人気です。馬が縁起物なんですね」

逆輸入も実現した。最初のパリでの展示会で日本未発売の商品を探しに来ていた東急ハンズのバイヤーの目にとまり、東京・表参道原宿の店舗で扱われた。

現在国内では都市部のデパートなど約100カ所、県内では高松空港や栗林庵で販売している。

「パリでの出展に挑戦していなければ、ここまでの広がりはなかったと思います。私自身の視野も大きく広がりました」

足元から文化を変える

だが、SOKOを海外で広めていくには避けられない壁がある。欧米には日本のように「靴を脱ぐ文化」が無い。

「だからこそ逆に伸びしろがあると思います」。吉田さんは前向きに話す。「パリではフランス人男性と日本人女性の『日仏カップル』が増えています。女性が日本人だと、土を家にもち込まず清潔にするといった日本の文化が広がる可能性が大きい。実際、靴を脱ぐフランス人が増え、スリッパが売れているという話もよく聞きます」

注目している国がある。インドネシアやマレーシアなど東南アジアのイスラム圏の国々だ。「イスラム教徒は1日に5回、必ず靴を脱いで礼拝堂へ入ります。切り口によっては面白いのではと考えています」

SOKOのブランド力を磨き、世界の文化をも変える。吉田さんの大きな目標だ。

クセのある面白い提案を

出身は愛媛県川之江市(現四国中央市)。実家は地元で8店舗を経営するスーパーだった。いずれ家業を継ぐつもりだったが、常務を務めていた2000年、進出してきた大手スーパーの勢いを止められず、倒産した。「当時、従業員は200人位いました。社長だった父と、『先延ばしにすればするほど皆がつらくなる。早めに閉めよう』と決断した時のことは忘れられませんね」。倒産から15年が過ぎ、やっと冷静に振り返られるようになったと吉田さんは話す。「お総菜に特化して大手には出せない味を作り出すとか、もしかしたら生き残る道はあったかもしれない。よそがやらないことを深掘りしていく。それが必要でした」

会社を整理したのち、サラリーマンを経て、妻の父が経営する日本ケミフェルトに入った。社長を引き継いで丸10年。「よそがやらないこと」にこだわり続けた10年だった。

昨年、メモパッドやノートなどのステーショナリーブランド「CORCHO CORCHO(コルチョ コルチョ)」を新たに作った。ケミフェルト素材の優しい手触りと風合いが特長で、初めて披露したのは流行の発信地、ニューヨークの展示会だった。

「2つの自社ブランドが少しずつ育ってきました」。ブランドを確立するには少なくとも10年は掛かると言われる。中小企業は自社ブランドを開発してもなかなか売り上げに繋がらないため投資が続かず、3年くらいで挫折することが多いそうだ。「毎日が我慢の連続です。まだまだこれからです」

日本ケミフェルトの社員は6人。小さな会社だが吉田さんには理想とする会社像がある。

「小さくてもいつも何かにトライしている元気な会社でありたいと思っています。常に攻めていけるのがメーカーの醍醐味。これからも社会に対して、クセのある面白い提案をしていきたいですね」

よしだ ひさし

  • 1967年 愛媛県川之江市(現四国中央市)生まれ
    青山学院大学経済学部卒業後、商社勤務などを経て
  • 1993年 ヨシダフード 入社
  • 2000年 ヨシダフード倒産に伴い、製麺会社に転職
  • 2003年 日本ケミフェルト 入社
  • 2005年 代表取締役社長 就任

日本ケミフェルト株式会社

住所
仲多度郡多度津町京町2番12号
TEL:0877-32-3251
FAX:0877-32-3253
創立 1959年
資本金 1000万円
従業員 6人
事業内容 ケミフェルト(ゴム複合素材)による家電関連部材、自動車部品、介護製品等製造
「SOKO」、「CORCHO CORCHO」製造販売 他
「SOKO」は、Stylish(おしゃれ)、Original(個性的)、Kind(優しい)、Odorless(におい軽減)の意味を込め、頭文字をとって命名。
「CORCHO CORCHO」のコルチョとは、スペイン語でコルクの意味。
  • 2012年 「SOKO」発売
    [ 海外での販売実績 ]
    フランス、イタリア、ドイツ、中国、アメリカ、シンガポール、タイ、チリ、アイスランド、
    オーストラリア
  • 2013年 輸出有望案件発掘支援事業(JETRO)認定
  • 2014年 かがわ発!先進的ビジネスモデル優秀賞受賞
  • 2015年 「CORCHO CORCHO」発売

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讃岐を歩く

四国村を歩く。厳しい残暑のなか、400個あまりの風鈴が人々に涼を送る。蝉の大合唱を包み込むような、響き合う風鈴の音。立ち止まって耳を澄ますと、蝉と風鈴の対話が聴こえてくる。今年の夏は、まだ続きそうだ。

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