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2016年10月20日更新

サービス極め 地域ナンバーワンへ JR四国ホテルズ 社長 近藤 明生さん

高松市浜ノ町のJRホテルクレメント高松

高松、徳島、宇和島で、ホテルクレメントを運営するJR四国の3つの子会社が昨年4月に合併し、今年7月には社名を「株式会社JR四国ホテルズ」に変えて再スタートを切った。生まれ変わった会社の舵を取るのが、ホテルクレメント徳島の社長だった近藤明生さん(62)だ。

「目指すは地域ナンバーワンのホテルです。しつこいくらい社員に言い聞かせています」

訪日外国人(インバウンド)の増加もあり、宿泊客数は好調だ。しかし、目指す姿はその先にある。レストラン、婚礼、宴会や集会で地元の人たちにも利用してもらい、満足してもらう。それが果たすべき最大の使命だと近藤さんは強い口調で話す。

新会社の社長になった5日後、最愛の妻が病に倒れ、帰らぬ人となった。「あの時のつらさに比べれば、仕事での苦労なんて何とも思いません」

どんな苦難があろうと、それぞれの地域に根ざした愛されるホテルにしてみせる。近藤さんは3つのホテルの心を一つにし、地域ナンバーワンホテルへと導いていく。

何が求められているのか

期待を上回る究極のサービスを追求する

瀬戸内海を一望できる絶好のロケーションと300の客室を持つJRホテルクレメント高松は中四国有数のシティホテルだ。和洋中のレストラン、大中小様々なタイプの宴会場、オーシャンビューが目の前に広がるガーデン付きのチャペルもある。「高松の立地条件や設備は最高です。徳島のホテルにいた頃はいつもうらやましく思っていました」。しかし、近藤さんはこう続ける。「とはいっても、地方都市でのフル装備のシティホテルは旨味のあるビジネスではありません」

客室に加え、結婚式場や宴会場を維持していくには莫大な人件費がかかる。繁忙期と閑散期の差も激しい。中でもレストランはホテルだけでなく、ごまんとある周辺の飲食店全てがライバルだ。レストランや宴会場から撤退し、宿泊のみに特化していくホテルは全国的にも少なくない。「今はインバウンドもあって多少の追い風が吹いていますが、逆風になると間違いなく厳しくなります」

どうすればビジネスホテルではなくシティホテルを選んでもらえるのか。高級なイメージのあるホテルのレストランで食事してもらえるのか。「シティホテルはちょっと敷居が高いというイメージがあるのは否めません」。だからといって値段を下げるのはあまりにも短絡的だと話す。「少し高くついたとしても、十分に満足したと言ってもらうのが私たちの目指すところ。最も大切なのは、お客さんがホテルに対して何を求めているかをきちんと把握することだと思います」

人気のスカイレストラン「フィオーレ」
JRホテルクレメント高松最上階(20階)にある
人気のスカイレストラン「フィオーレ」

レストランでは香川県産の良質な食材にこだわった料理「さぬきダイニング」を提供し、チャペルではプロジェクションマッピングなどを取り入れた「プレミアムウェディングフェア」を定期的に開催している。様々なやり方を試みる中で、近藤さんが何よりもこだわっているのがハイレベルなサービスだ。

「ホテルならではの上質なサービスを提供することで、また使ってみようと思ってもらえます。まずはハレの日などの特別な一日に利用してもらえるような存在にならなければと思っています」

近藤さんには信念がある。「サービスに限界はありません」。それを痛感したのが、かつて再建を託されたホテルクレメント徳島での苦い経験だった。

見せつけられた「王道」

地元徳島大学の大学院まで進み、土木工学を学んだ。「当時の日本は高速道路や新幹線が次々と伸びていた時代。大きなプロジェクトに携わりたいと思っていました」

技術者として国鉄に入り、線路をメンテナンスする保線課などでキャリアを積んだ。しかし、1987年の分割民営化に伴ってJR四国へ移ったのを機に、駅ビルの開発やキヨスクの運営など鉄道以外の新規事業を任されるようになった。「元々土木屋だったので、全く分野が違い、お付き合いする人もがらりと変わりました。でも、とても面白かった。案外向いていたのかもしれませんね」

2006年、ホテルクレメント徳島に専務として赴任した。任務は、悪化していた経営状態を立て直すことだった。「大きな赤字を抱え、閉塞感があって・・・・・・非常に厳しい状況でした」

あの手この手と策を練ったが、思うように再建が進まない。そこで近藤さんは、付き合いのあった大手ホテルの阪急阪神第一ホテルグループに協力を求めた。社員の研修にとどまらず、総支配人をはじめ営業スタッフや料理長に徳島まで出向で来てもらった。そこで見せつけられたのは「まさにホテル業の王道でした」

客の動向を分析して戦略を練る。アンテナを立てて要望を的確につかみ、改善すべきところは速やかに改善する。「売上に対する意識がまるで違っていました」。徳島の社員たちにとって売上とは「計上するもの」だったが、阪急阪神第一の社員にとっての売上は「作るもの」だった。

中でも衝撃を受けたのが、サービスのレベルだ。「ここまできめ細かにできるものなのかと、まるでプロとアマチュアくらいの差を感じました。教育、訓練、心がけ・・・・・・全てにおいてかなわないと打ちのめされました」

本気で立ち向かわないと苦境からは抜け出せない。近藤さんは一流のサービスを目指して社員教育を徹底し、さらに親会社に掛け合ってホテルの全館リニューアルも実現させた。「3年くらい大騒ぎしながらサービスを一から見直しました。やがて業績も好転し、お客さんから『サービスがずいぶん良くなった』と言ってもらえた時は本当にうれしかったですね」。社員たちと一緒に私も少しは成長できたかな、と近藤さんは目を細める。

最愛の妻からのエール

昨年4月、つらい出来事があった。妻・泰子さんが突然、病に倒れた。「急いで救急車を呼んで病院に運びましたが、間に合いませんでした」。くも膜下出血だった。新会社の社長に就任した5日後のことだった。「仕事のことにはほとんど口を出さない妻でしたが、『これからは徳島だけじゃなくて3つのホテルを見ないといけないから、大変だけど頑張ってね』と応援してもらった矢先のことでした」

休日はいつも2人で過ごす社内でも評判のおしどり夫婦だった。だが、何の前触れもなく最愛の人が突然いなくなった。「その時思ったのは、人生は何が起こるか分からない。何が起こっても不思議じゃないということです」

妻から送られたエールに応えるためにも、強い覚悟で社長業に挑み、3つのホテルを引っ張っていく。理想とする姿がある。「私たちのまちにはあのホテルがある。大事な人を連れて行くならあのホテルだ。地元の人たちにそう思ってもらえるようにならないと地域ナンバーワンとは言えません」 もっとレベルアップしなければならない。伸びしろはまだまだあると近藤さんは話す。

「お客さんが求めているのは期待以上のサービスです。ホテルなら当たり前だと思われている以上のことをしなければならない。これからも究極のサービスを追い求めていきたいと思っています」

編集長 篠原 正樹

こんどう あきお

  • 1954年 徳島市生まれ
  • 1979年 徳島大学大学院工学研究科
    土木工学専攻 修了
    日本国有鉄道 入社
  • 1987年 四国旅客鉄道(株) 入社
  • 1994年 関連事業部事業課長
  • 1995年 工務部保線課長
  • 1997年 (株)ステーションクリエイト徳島
    代表取締役社長(出向)
  • 2000年 四国キヨスク(株)
    専務取締役営業本部長(出向)
  • 2004年 事業開発部長
  • 2006年 徳島ターミナルビル(株)
    代表取締役専務(出向)
  • 2010年 同 代表取締役社長
  • 2015年 (株)ジェイアール四国ホテル開発
    代表取締役社長
  • 2016年 (株)JR四国ホテルズ 代表取締役社長

株式会社 JR四国ホテルズ

所在地
高松市浜ノ町1-1
TEL:087-811-1115/FAX:087-811-1116
地図
設立 1997年10月28日
資本金 1億円
株主 四国旅客鉄道株式会社100%出資
従業員 378人(2015年4月)
事業内容 ホテル業 他
沿革
  • 2015年 4月 (株)ジェイアール四国ホテル開発(JRホテルクレメント高松)を存続会社に、
    徳島ターミナルビル(株)(ホテルクレメント徳島)、
    宇和島ステーション開発(株)(ホテルクレメント宇和島)を吸収合併
  • 2016年 7月 (株)JR四国ホテルズに社名変更
URL http://www.jrclement.co.jp/

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三豊市詫間町の紫雲出山(しうでやま)の春は、約1000本の桜で淡いピンク色に染まる。思わず足を止めて見とれてしまう。やわらかな風に舞う桜の花びらはどこへ行くのか。思いを馳せながら、己の道を歩く。

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