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プライムパーソン

VOL.237 2018年03月15日

“たかが袋”が
生活スタイルを変える

三和工業 社長 村上 幸生さん

“たかが袋”が生活スタイルを変える 三和工業 社長 村上 幸生さん
カルビーの商品だけで手掛けた印刷用の版は400ほど=仲多度郡まんのう町「椿谷工場」

「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」などで知られるカルビーの商品パッケージの6割近くを製造している会社が香川にある。三和工業は1949年に「関西オブラート」として善通寺で創業。カルビーの前身である松尾糧食工業が販売するキャラメルをはじめ、飴などを包むオブラートを製造してきた。「お付き合いは、カルビーの創業者と父の人間関係から始まりました。以来、現在まで取引が続いているのはありがたいことです」と村上幸生さん(65)は言う。

60年代にオブラートの需要が減り、商品パッケージ製造に事業転換した後も、キャラメルからスナック菓子へと主力商品を転換していたカルビーとは変わらず取引が続いた。この事業転換を機に65年、三和工業を設立、パッケージ(包装材)のデザイン、印刷、ラミネート、製袋まで一貫して手掛ける体制を確立。関東の食品メーカーを中心に事業を広げていった。

自立型「角底(かどぞこ)包装」の開発は、今から思うと賭けでした
自立型「角底(かどぞこ)包装」の開発は、
今から思うと賭けでした

商品は食品包装や洗剤、化粧品の詰め替え用パックなど、柔らかい袋状の「軟包材」だ。昔の包装材は、木材パルプから作った透明なセロファンが主な材料。通気性が高く、中の食品が湿気やすい、酸化しやすいという難点があった。やがて、プラスチックフィルムが登場。水に強いフィルムで「防湿性」が高まり、食品用ラップにも使用される樹脂をコートしたフィルムで「酸素バリア」機能が高くなった。「大きな転換点は私が入社した85年ごろ、透明ではなく銀色のフィルムを使うようになったことですね」。光をさえぎるフィルムにより、商品の劣化が遅くなった。

包装材は1枚に見えるが、これら「防湿」「酸素バリア」「遮光」といった性質の違う薄いフィルムを何枚か重ね、ラミネートすることでさまざまな機能を持たせている。「包装材に求められる機能は増えてきました。そのニーズに合わせて進化することで、日本の物流が大きく変わりました。包装材の果たしてきた役割は大きいと思います」

“人と人”から“会社と会社”の関係へ

2010年、カルビーから初代「ベストパートナー賞」を受賞
2010年、カルビーから初代
「ベストパートナー賞」を受賞

東京の大学を卒業後は、大手建設会社に入社。あまり家業を継ぐ気はなかったが、年齢を重ねる父の姿を見て帰郷を決意した。「入社して10年ぐらいかけて仕事を覚えていこうと思っていました」。しかし、わずか3年で父が亡くなる。「悲しむ余裕さえなく、これからどうすればいいのかという思いしかありませんでした」

それでも、37歳で社長に就任後は全国にある取引先の工場をすべて訪問しながら、父とカルビー創業者のように“人と人”との関係をつくり、“会社と会社”の関係も深めていった。カルビーから、ほぼ毎週新商品が発売された時期があったが、数日で製版、印刷を行い、質の高い仕上がりで色合いにこだわるデザイナーの要求にも応えた。創業者どうしの人間関係があったとしても、60年以上も会社の信頼関係が続いたのは「“対応力”が評価されているからだと思います」と言う。

経営判断で迷う時は「親父だったらどうするか」と考えてみる。「父がしばらく意識不明だったある日、父の夢をみました。その1時間後に父は亡くなったんですが、以来一度も夢には出てきません。夢に出てこないのは安心しているからだとある人に言われたので、そう思うことにしています」。2代目としての自分の役割は、引き受けた事業を次の世代に渡していくことだと考えている。そのためにも、時には思い切った商品開発のほか、設備投資も行っている。

用途が決まる前に商品開発

フルグラの包装材。四角い底がポイント
フルグラの包装材。四角い底がポイント

限りある予算の中での開発は、「こんな商品を入れる袋」というニーズをもとにメーカーと共同で行うことが多い。しかし現在、カルビーの「フルグラ」に使われている包装材は当初、用途が決まっていないにもかかわらず開発に踏み切った。「紙製のカップ容器が使われているのを見て、袋がいらなくなるかもしれないと危機感を持ちました。だから、私たちから商品を提案しようと思ったんです」

カップが採用されたのは、立てて置くことができる自立型だから。そこで、中に何も入れなくても自立するよう底が四角い袋「角底包装」の開発を目指した。

「製造する機械から開発しました。数年かけて袋が完成したものの、当時はそれを入れる商品がない。数年後にようやくカルビーさんのフルグラ800g用パッケージとして採用されました」。特徴は、中身を入れてもかさばらない点だ。コンパクトに収まり自立する包装材は、限られたスペースで効率よく陳列できる。「もし用途が見つからなかったらと、後から考えると怖いですよね。これは賭けでした」

ごみにならないパッケージ

「袋は破ってしまえばただのごみ。夢で終わるかもしれませんが、ごみにならないパッケージができたらいい」と言う。例えば、生分解フィルムを使った包装材。コスト面を考えると実現はまだ先になりそうだが、これからは「環境」も一つのキーワードだと考えている。

次の世代につなぐ置き土産として、水性インキを使う「フレキソ印刷」ができる新工場を建設した。これで、環境負荷への規制が厳しい欧州などで商品展開するメーカーの包装材にも対応できる。また、現在のグラビア印刷とは違う、フレキソならではの色合いや印刷表現を提案したいとも言う。

「入社してすぐ“たかが袋”にこれほどの手間をかけているのか、と驚いたことがあります」。たかが袋は、時代のニーズに合わせて進化し続け、人々の生活スタイルを変えてきた。「これからも新しい商品を提供していくことで、少しでも社会の役に立ちたい。それが事業を続ける意味だと思います」

石川 恭子

村上 幸生 | むらかみ ゆきお

1952年 善通寺市生まれ
1971年 高松高校 卒業
1978年 東京大学法学部 卒業
    鹿島建設 入社
1986年 三和工業 入社
1989年 代表取締役社長 就任

三和工業株式会社

住所善通寺市仙遊町2-5-18
TEL.0877・75・3606
満濃工場/仲多度郡まんのう町羽間1893-1
椿谷工場/仲多度郡まんのう町岸ノ上1725-1
設立1965年5月
資本金8000万円
従業員数221人
事業内容合成樹脂包装資材の製造および販売
グラビア印刷、ラミネート
地図
URLhttp://www.sanwa30.co.jp/

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讃岐を歩く

燕帰る

春、日本にやって来て、秋、南方へ去るツバメ。暦の上ではもう秋を迎えたが、残暑はまだまだ厳しい。ツバメはそろそろ帰り支度を始めているのだろうか。昼下がりの丸亀市・本島にて。

Photo:T.Nakamura

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