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プライムパーソン

VOL.243 2018年06月21日

どん底からのリバイバル
今までにないものを作る

ヴィンテージ リバイバル プロダクションズ 代表 塩田 裕基さん

どん底からのリバイバル今までにないものを作る ヴィンテージ リバイバル プロダクションズ 代表 塩田 裕基さん
丸亀市土器町のヴィンテージ リバイバル プロダクションズ FACTORY & LIMITED STORE

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順風満帆が一夜で暗転

「飾りではない。使うことに意味があるのが革製品。一人でも多くの人に使ってもらえるものをつくりたいんです」

2008年に塩田裕基さん(50)が立ち上げたヴィンテージリバイバルプロダクションズ。財布やキーケースなど様々な革製品を製造し、北海道から沖縄まで200を超える百貨店や雑貨店に卸している。

バッグやポケットに挟んで留められる「キークリップ」(左)と超軽量財布「エアーウォレット」
バッグやポケットに挟んで留められる「キークリップ」
(左)と超軽量財布「エアーウォレット」

09年に発売した「キークリップ」は、レザー部分に2つのマグネットを埋め込んだキーホルダー。鍵と言えばどこに置いたのかよく見当たらなくなるが、バッグのふちなどに挟んでマグネットで留めたり、冷蔵庫のスチール部分にくっつけたりできる。“鍵をなくさないキーホルダー”として瞬く間に人気が広がり、年間1万個以上を売り上げるヒット商品になった。

創業翌年に生まれた看板商品。順風満帆だった。しかし突然、悲劇が襲った。一昨年8月、深夜に塩田さんの自宅の電話が鳴った。「会社から火が出ています」。警察からだった。ファクトリーと店舗約170m2が全焼した。「材料の革や機械類は、ほぼ使いものにならなくなった。火の気のない場所なので、原因は漏電だろうということでした」

お客さんが待っている 絶望している暇なんてない
お客さんが待っている
絶望している暇なんてない

茫然とした。冗談だろうと思った。でも、「意外と冷静でした。絶対に復活させるという思いしかなかった」。翌朝、出社し戸惑っているスタッフたちに、「以前とは全然違う状況での仕事になる。それでもついてきてくれるか」と問い掛けると、「何を言っているんですか。まずは片付けをしましょう」。「全く、頼もしいというか・・・・・・」と塩田さんは苦笑いしながら振り返る。

すぐさまプレハブ小屋や電話回線などを手配し、10日後には少しずつ製造できる状態にまで戻した。「絶望している暇はなかった。商品を待ってくれているお客さんがいましたから」

「ヴィンテージリバイバルプロダクションズ」という社名は創業当初、塩田さんが革と同様に好きだったヴィンテージもののジーンズ生地を、小物としてリバイバル(再生)させていたから。火災で焼け落ちた跡地に今年3月、新社屋が完成。ヴィンテージリバイバルプロダクションズはどん底から、文字通りリバイバルした。

かけがえのない一つ

ファクトリー内の作業の様子
ファクトリー内の作業の様子

火災で何もかもを失ったわけではなかった。取引先には納期が遅れることを丁寧に詫びて回った。すると、「取引は1軒も止まらなかった。情けをかけるような甘い世界ではないので、ある意味、私たちの商品力を認めてもらっていたのかな」。1年半に及んだ手狭なプレハブでの仕事では、不便を共有する中でスタッフの一体感も生まれた。

忘れられない出来事がある。ある時、プレハブの中を覗き込んでいる人がいた。「商品を買えますか?」。招き入れると、「これいいですよね」「こんな商品があったらいいなあ」・・・・・・スタッフと談笑する声が聞こえてきた。こんな状況でも商品を求めてくれるお客さんがいることを知った。「もちろん火事になる前も商品づくりに手抜きはなかった。でも改めて、もっとお客さんのことを思わなければならないと再認識しました。私たちには大量につくるうちの一商品でも、お客さんにとってはかけがえのない一つですから」

仕上げがラフになっていないか。お客さんの思いに全力で応えられているか。「昨日もスタッフ全員にはっぱをかけたところです」と塩田さんは笑顔で話す。

お客さんが唸る商品を

無駄を徹底的に排除した30gほどの超軽量財布「エアーウォレット」。お札入れは扇形にカットし、小銭入れは革製品には珍しくファスナー部分が弧を描いている。「革の財布はズボンの後ろポケットに入れるのが一番ダメージを受ける。極力上着のポケットに入れてもらえるよう軽さを追求したのも、お札や小銭を出し入れしやすいよう曲線でデザインしたのも全て意味があります」。iPhoneケースを一枚の革でつくる「Wearシリーズ」は縫製を掛けないことで革が収縮、使うごとにフィット感が増していく。

「新しく、常に使ってもらえるもの」。それが塩田さんの商品づくりのコンセプトだ。「ないものをつくるという発想は、ひょっとしたら親父からの遺伝かもしれないですね」。父は三豊市で造船業を営んでいた。大手メーカーに先駆けて、軽量で耐久性のあるFRP(繊維強化プラスチック)で船をつくるなど「いつも新しいことに挑戦し続けていました」

塩田さんも、ものづくりが楽しくて仕方がないと繰り返す。「一番うれしいのは商品ができ上がった瞬間。お客さんは唸ってくれるのか、どんな風に反応してくれるのかと想像する。ものづくりの醍醐味とは恐らくそういうところなんでしょうね」

今年4月には世界的人気キャラクターを施した新たなラインナップを発売。革製品の魅力について、塩田さんはこう語る。「世の中にある商品のほとんどは、使うほどにくたびれて買い換えられる。でも革は違う。艶が出て色が変わり味わいが増していく。自分がつくったものがずっと使われ大事にされる。こんなうれしいことってないですよね」

篠原 正樹

塩田 裕基 | しおた ゆうき

1968年 多度津町出身
1986年 多度津工業高等学校 卒業
1991年 関東学院大学工学部 卒業
1994年 (株)パワークルーザー 入社
2008年 ヴィンテージ リバイバル プロダクションズ設立

ヴィンテージ リバイバル プロダクションズ

住所丸亀市土器町東9-155
TEL.0877・35・8630/FAX.0877・35・8631
従業員数4人
事業内容財布、鞄等革製品の企画・デザイン及び製造・販売
地図
URLhttp://www.vrp-jp.com/

プライムパーソンとは

海外進出、ニッチトップ、地域に根ざす100年企業・・・
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讃岐を歩く

着陸

塩江街道を南へ歩く。鮎滝下の交差点の先に赤い鉄橋のようなものが見えてくる。高松空港の誘導灯だ。見上げると、着陸間近の飛行機。夏の空の下、楽しい旅の始まりや終わりを迎える人をのせているのだろうか。

Photo:T.Nakamura

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