第一次産業の宣伝マンに

農林中央金庫高松支店 支店長 奥田 康一郎さん

Interview

2019.03.07

大学時代に訪れた北海道で、農家に泊めてもらう機会があった。「畑に案内され、目の前でもいでくれたトウモロコシを生で食べた時のおいしさは今でも覚えています。農業という仕事を意識するきっかけになりました」。就職活動で50社以上の企業をまわり、話を聞く中で「農林中央金庫」があることを知った。「ここなら、第一次産業にかかわる仕事ができると思いました」

農林中金は、農協・漁協・森林組合や地元企業と連携して、農林水産業と地域と食を支える。支援の形は融資だけではない。有名百貨店や大手スーパーとのネットワークを生かして地元の農林水産物をアピールする。企業が農業分野に参入する際は、地元の農産物と競合するかどうかも考えながら事業提案をする。「金融商品を売るだけではなく、まず自分は“第一次産業の宣伝マン”だと思って仕事をしています。マッチングがうまくいって、両方からありがとうと言われると充実感があります」

経営指導の仕事に携わった時は、相手先に厳しい話をしなければならないこともある。意見が対立して言い合いになった人もいる。ところが、異動が決まって挨拶に行くと「あの時は耳が痛かったけど、言ってくれなかったら手遅れになっていた」と感謝された。「その時はつらくても、この人のために何ができるか、本気で考えることが大事なんだと気づかされました」

大切なのは、まず相手先を知ること。後輩や部下にはできるだけ現場に行って“無駄話”をするよう伝えている。会社の名前の由来や、この場所で農業を始めた理由を聞いたら、その人の信念が分かるかもしれない。相手先の方がその道のプロだと自覚して丁寧に話を聞く。「相手先に寄り添うことで、いいアイデアも浮かぶ。上司から指示された仕事ではなく、自分からやりたいと思える仕事が見つかると思います」

香川は豊か

これまでに、地域の拠点となる支店を6カ所転勤してきた。土地ならではの風景や食べ物、人々との触れ合いがある支店が好きだという。転勤先には家族も一緒にいく。「香川は野菜もフルーツも多種多様。魚も、地元・神奈川のスーパーではマグロ・サーモンが中心のイメージですが、ここはサワラにマナガツオに・・・季節を感じることができるのは幸せなことです」
キャンプの様子

キャンプの様子

昔からアウトドア好きで、小豆島にキャンプに出かけたほか、映画「八日目の蝉」のロケ地にも行った。金刀比羅宮、うどん打ち、そうめんの箸分け体験もした。海に島が浮かぶ風景が見られるのも貴重だという。

県外から友人を招いた時は、まるで観光大使のように香川を案内している。「うどんや骨付き鳥など、食べ物について話をする時は、ついでに農作物や瀬戸内の魚のこともアピールしています」
小豆島のそうめんの箸分け

小豆島のそうめんの箸分け

残さず食べる

仕事柄、食べ物は残さず食べるという。「農家がどれだけ大変な思いをしているか。漁業は時には命がけで――。そうやっていただくことができる食べ物。残すなんてこの仕事を理解しているとはいえません。ただ、支店にいる時は土地のおいしいものが多くて、太ってしまうんですが……」

農林漁業は食料を供給するだけではない。「農業は土地が荒れるのを防ぎ、漁業者は他国の不正操業や密入国の危険を察知し、山の木は水を蓄え土砂崩れを抑える。いろいろな面で私たちの生活を守っている。「そんな第一次産業の役割を多くの人に知ってもらいたい。そしてそれを支える仕事をこれからもしていきたいですね」

石川恭子

奥田 康一郎 | おくだ こういちろう

略歴
1970年 横浜市生まれ
1989年 聖光学院 卒業
1993年 上智大学法学部 卒業
    農林中央金庫 入庫
2006年 和歌山事務所次長
2008年 大阪支店業務第四課長
2009年 大阪支店次長
2010年 人事部部長代理
2012年 金沢推進室長
2016年 総務部副部長
2017年 JAバンク企画推進部副部長
2018年 高松支店長

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