乗降客増を背景に増収企業が8割

2018年3月期決算 空港ターミナルビル経営動向調査 東京商工リサーチ

Research

2019.03.21

全国の主な空港ターミナルビル経営会社(以下、空港ビル会社)54社の2017年度決算(17年4月~18年3月期)の売上高は3,157億円だった。増収の空港ビル会社が43社と全体の約8割(構成比79.6%)を占め、国内外の旅客数増を背景に好決算が相次いだ。一方、赤字が続く空港経営の打開策として民間資本を導入し、航空部門と非航空部門の一体経営に転換する空港が相次いでいる。
※TSRデータベースから、主な空港ターミナルビル運営会社54社の17年度(18年3月期)の決算を集計した。民営化などにより空港の一体経営に転換した空港ビル会社や、新設の空港経営会社は集計対象外。

売上高 羽田空港が断トツ

売上高トップは日本空港ビルデング(羽田)だった。羽田空港の乗降客数は前年度比4.8%増と10年度以降、8年連続で増加を記録。これを追い風に売上高は前年度比9.7%増加。2位の新千歳空港ターミナルビルディング(新千歳)の3.6倍と圧倒的なシェアを誇る。

一体経営進む

空港民営化は13年施行の民活空港運営法が大きな転換点となった。16年7月、国管理空港として初めて民営化に踏み切った仙台空港は、設立3期目の18年3月期は1億993万円の最終利益を確保。乗降客数は前期比8.8%増の343万人を記録するなど、好調ぶりが目立った。このほか、民営化を通じて一体経営に移行した空港経営会社は、三菱地所などの企業連合が運営する高松空港など4社ある。また、但馬空港や鳥取空港は、空港ビル会社が運営権を取得し、航空部門と一体化した空港経営に取り組んでいる。

民営化 さらに加速

19年は空港民営化が一気に進む見通しだ。4月には国内4位の乗降客数を誇る福岡空港をはじめ、静岡空港、南紀白浜空港が民営化される。5月には熊本空港の民営化も控えており、19年は年間としてはこれまで最多の4空港が民営化される。
国土交通省が試算した国管理27空港の17年度の空港別収支を基に、航空系事業と非航空系事業を単純合算すると、経常黒字を確保できた空港は羽田、新千歳、福岡、那覇、広島、高松、松山、熊本、大分、鹿児島、小松、徳島の12空港と、半数に満たない。

民営化で誕生した空港経営会社の業績は堅調に推移。訪日観光客やLCC路線の増加などの外部要因も下支えとなり、空港民営化・一体経営の議論は今後も拡がりをみせるだろう。一方、民間の競争原理が導入され、業績など様々な面で格差が鮮明になると、特色を打ち出せない地方空港は就航便数の縮小、廃港の選択肢さえ浮上する可能性もあり、空港経営は大きな転換点に差し掛かっている。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花正伸

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ