ミニ遊園地が商業施設に家族客を呼ぶ

シーキュー・アメニック 代表取締役 四宮 武義さん

Interview

2008.11.06

不況が続く遊園地業界の隙間にビジネスチャンスを見つけた・・・(株)シーキュー・アメニック社長 四宮 武義さんは十数年、遊園地用遊具のリース事業を手がけた。しかし、中小の遊園地は閉鎖が相次ぎ、業績のいい巨大テーマパークと二極化した。
「5年前、大型商業施設の客寄せに観覧車を提案したら、是非やりたいが運営できないと言われました。その時目が覚めました。これはビジネスになると気づいたんです」。
大型商業施設と連携したミニ遊園地の集客効果に、既設、新規業者の双方から導入相談が相次いでいる。四宮さんが展開するミニ遊園地が、中小規模の遊園地再生のビジネスモデルになりそうだ。

大型商業施設とミニ遊園地の組み合わせ

2004年、中古の観覧車を斡旋した千葉県の「アウトレットコンサート長柄」に運営を任された。「観覧車の運営は初めてでした。ジェットコースターのような危険性も無いので、ノウハウを勉強して始めました。観覧車だけでは物足りないのでミニ電車も走らせたら、小さな遊園地に、近郊のお年寄りがお孫さんを連れて何度も来てくれました」。
ミニ遊園地との提携で大型商業施設に”家族が一緒に楽しめる“場所が生まれた。

※(アウトレットコンサート長柄)
千葉県長生郡長柄町にあるアウトレットモール。

ミニ遊園地は大人も楽しめる

次いで2005年、広島市の「マリーナ・ホップ」にミニ遊園地をオープンした。広島には、福屋、いずみ、天満屋、三越、そごうと大型店が競合している。差別化のための遊園地だ。
服を買ったら観覧車の割引券が貰える。テナントと遊園地のタイアップが家族客を呼ぶ。10歳以下の子供に『日曜日はどこに行きたいか』アンケートしたら、マリーナホップが1位になった。
「遊園地には、輪投げや金魚掬いなど縁日のお店もあります。一番人気のキッズランドは、自由に走り回れて滑り台もあります。自転車にも乗れる。ボールプールに飛び込んだら、頭からすっぽりボールの中に埋まって、大人も腕白小僧の気分になれます」・・・懐かしいデパート屋上の遊園地が復活した。小さな子供が仮想現実のテレビゲームに夢中になる時代だから、体を動かして遊ぶ遊園地が大切だと四宮さんは信じている。

※(マリーナ・ホップ)
広島市西区観音にある中四国地方最大のアウトレットモール。

※(ボールプール)
大量のボールを柵のなかなどに満たして、そのなかに入る遊び。

コンテナ仕様で移動式

大型商業施設からの引き合いが急増した。「今年は3月に愛媛、7月に静岡、9月に仙台で、観覧車を入れてミニ遊園地を作りました。今期の売り上げは、前期より8割以上増えて10億円を見込んでいます」。
3年前に三井不動産に売り込んだときは門前払いだった。その相手から仙台市の話が持ち込まれた。競争の激しい大型商業施設が、利用者に親しまれる遊園地を欲しがっているのだ。
仙台に持ち込んだ観覧車は、5年前に千葉県の「アウトレットコンサート長柄」に仲介したものだった。「実は今年の1月に遊園地を閉店したので、うちが観覧車を移設したんです。大型商業施設は近くに新しい施設ができたら敵いませんし、観覧車が飽きられることもありますから」。

従来の遊園地は「市場の変化」を前提にしていないから、遊具施設や構造物を変えるのが難しい。四宮さんのミニ遊園地は”据え付け・撤去が簡単コンテナ仕様“が特色だ。
「空き地を使うユニットハウスの発想です。お客が減ったら次の遊園地へもっていけます」。使い回しが出来る移動式遊園地だ。

※(愛媛)
愛媛県東温市の「レスパスシティ」

※(静岡)
静岡県静岡市清水区清水港の「エスパルスドリームプラザ」

※(仙台)
宮城県仙台市の「三井アウトレットパーク仙台港」

ユニットハウスのお化け屋敷で遊園地業界へ

1995年、本業のユニットハウス(販売・リース)の販路を広げようと、ボディーソニックと立体音響システムを組み込んだ”音のお化け屋敷・パラゴン“を開発した。コンテナ仕様の簡易さが受けて遊園地など30カ所に売れた。
パラゴンの成功が遊園地業界に入る転機になった。立体映像といすの動きを連動させた4Dシアターや忍者屋敷、室内の壁が回転して真っすぐ歩けないワームホールなどを次々開発した。
「観覧車やジェットコースターのような大型遊具機械は作りません。”安い“”移動、設置が簡単“”新しくて誰でも楽しめる“がコンセプトです」。

※(ボディーソニック)
スピーカーで再現しきれない、重低音の臨場感を振動で再現する体感音響装置

不況の中に商機を見つけた

入場者が減って毎年数カ所の遊園地が閉鎖する。不要になった遊具の引き取り手は少ない。四宮さんはそこに商機を見つけて遊具を買い集めた。「全国の遊園地を廻りますから、その遊園地に何が欠けていたか分かります」。各地の遊園地のニーズに応じた中古遊具や自社で作った設備を、経費負担が少ないリースで提供する遊園地事業が軌道に乗った。

いつも新しい仕組み

「いま6カ所の遊園地を10カ所にして、入れ替え可能な遊具を巡回させます。音と映像のソフトを定期的に取り替えて、いつも新しい遊園地にしてリピーターを確保します」。リニューアルを低コストで・・・既存の組み合わせの妙に、新しいアイデアを盛り込む・・・四宮さんの創意工夫だ。
1カ所の投資金額は2億円まで。売上は月1000万円、年間1億2000万円を見込む。「中古だから償却を引いても荒利は50%残ります。でも自社だけではこれ以上の受注に応じきれないので運用資金の証券化も考えています」・・・体力強化がこれからの課題だ。
「些細なことを工夫してなにかできないかと考えるのが楽しみで、失敗したら努力が足りなかったのだと思います」・・・慣例や常識の隙間に起業のヒントを見つける四宮さんは、経営が苦しい中小遊園地を、機動性と低予算で再生する。そして大型商業施設に家族を呼び込む装置にする。誰も思いつかなかった四宮さんのビジネスモデルだ。
東芝商事で四国の物流を担当していたが、父が残した田畑を受け継ぐという理由もあって35歳で脱サラ、起業した。
「当時のファックスやコピー機器は事務机ほどの大きさでした。東芝では営業マンが売ったその事務機器の納入を、工場サイドが手配していたんです」。工場が運輸会社に見積もりを頼む。運輸会社は納入先を下見して見積額を出す。東芝は大企業で、事務機器を買うのは官庁や一流会社だった。納入作業の難易度に関わらず運送会社のいい値で決まっていた。営業マンも納入の難易度が分からないから、その値段が当たり前だと思っていた。
「運送会社は、荷物を納入先に運んで置く。それをサービス会社が梱包を解いて組み立てました」。納入に2度の手間と経費を掛けていた。
「製品のことはある程度分かっていましたから、『納入』と『組立・テスト』の両方を引き受ける事業を始めたんです」。納入経費が安くなった会社と顧客、そして納品の立会に行かなくて済むようになった営業マンにも喜ばれた。

四宮 武義 | しのみや たけよし

略歴
1951年 高松市生まれ
1969年 高松商業高校卒
    東芝商事入社
1986年 シーキュー・ロジテム設立
1990年 シーキュー・アメニック設立

株式会社シーキュー・アメニック

住所
香川県高松市檀紙町2271-9
代表電話番号
087-885-4040
設立
1990年
社員数
60人
事業内容
1.アミューズメント機器の開発、製造、販売及びリース
2.スポーツ、レジャー製品、施設の開発、企画、製造、販売
3.各種イベントの企画、運営
沿革
1990年 株式会社シーキュー・ロジテムの販売会社として
    設立
    主に空調機器、ユニットハウスの販売・リースを
    行う
1995年 3Dサウンドシステム「パラゴン」を発売、以後
    30カ所に納入
1997年 アミューズメント事業部設立
2000年 アミューズメント事業部がメイン事業となる
2004年 千葉県「アウトレットコンサート長柄」にミニ
    遊園地をオープン
    大阪府堺市「ハーベストの丘」に観覧車を導入
2005年 広島県「マリーナ・ホップ」にミニ遊園地を
    オープン
2006年 高松市宮脇書店「ブックプレイランド」にミニ
    遊園地をオープン
2007年 千葉県「ラジコン天国」をオープン
2008年 愛媛県東温市「レスパスシティ」にミニ遊園地を
    オープン
    静岡県清水港「エスパルスドリームプラザ」に
    ミニ遊園地をオープン
    宮城県仙台市「三井アウトレットパーク仙台港」
    にミニ遊園地をオープン
資本金
6100万円
地図
URL
http://www.cq-amenic.co.jp
確認日
2008.11.06

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ