香川の技術は世界で生きる

独立行政法人国際協力機構四国センター(JICA四国) 所長 小林広幸さん

Interview

2019.04.04

大学卒業後、初めて働いたのはアフリカ・タンザニアだった。青年海外協力隊員として2年間、ウジジ村の学校で数学と理科を教えた。授業はすべて、英語で行う。「初めての授業の前日は、眠れないほど緊張しました」

1クラス約30人で、1学年につき1~2クラス。4学年まであり、生徒の年齢は日本の中学1年~高校1年にあたる。当時は教科書がなく、教師が書店などで探してきた本を使って授業をしていた。コピー機もないため、問題を全て黒板に書き、生徒はそれをメモする。ノートや紙切れ、筆記用具もバラバラだ。「生徒たちは学ぶことに貪欲で、勉強熱心でした。補習しようと言うとみんな喜んで、隣のクラスの子も来たくらいです」

宿舎の庭にはマンゴーとカシューナッツの木があった。「マンゴーの実がなり過ぎて、誰も見向きもしないくらい。日本ではできない経験でしたね」

隊員から職員へ

東京本部勤務時に出張したトンガで

東京本部勤務時に出張したトンガで

大学時代、先輩が青年海外協力隊でガーナに赴任したことをきっかけに、自分も参加してみようと思った。帰国後も国際協力に携わりたいと、1996年にJICAへ。2001年、ベトナム・ハノイにある事務所に赴任。ベトナムの産業をけん引する人材を育成するための日本センターなど、JICAが支援するプロジェクトを現地で担当した。

10年、ルワンダ・キガリでは事務所長を務めた。何よりも優先したのは、現地で任務にあたる協力隊員や専門家の安全だ。かつての国内の紛争を経て治安は落ち着いていたものの、日本とは勝手が違う。約40人の隊員たちに変わりはないか、いつも案じていた。「3年間、ポケットに入っている携帯電話がずっしり重く感じました」

国際協力は日本のためにも

JICA四国のメンバーと参加した「スイーツマラソン」

JICA四国のメンバーと参加した「スイーツマラソン」

四国センターに着任して1年。「生活環境は素晴らしいし、仕事もすごく面白い。四国に来られたことに感謝感激です」。国際協力を身近に感じてもらうのが、自身の役目だと考えている。

JICAは協力隊の派遣以外にも、人材育成のために途上国からの研修員受け入れ事業や日本企業の海外展開支援などを手掛ける。「香川県の皆さんがお持ちの技術や経験は、途上国で生かせるものが多い。島しょ部で取り入れられている遠隔医療は病院や道路事情が良くないところで、香川用水の仕組みは渇水が多い地域で役立てられます。近い将来、希少糖は途上国でも需要があるのではと思っています」

日本の技術を海外で生かすことは途上国のためになるだけでなく、日本企業にとっても新たなビジネスチャンスになるという。

香川県からJICAの海外協力隊に参加した人は累計で364人。四国では1663人いる(2018年11月末)。「海外協力隊経験者が地域で日本と外国の架け橋になることもできる。関われるような環境を作っていきたい」

プライベートでも香川らしさを楽しむ。「3月に参加したスイーツマラソンは最高でした。海沿いを走って気持ちよかった。疲れた体で食べるシュークリームやレモンマカロンは美味しかったですね。先日、直島の美術館にも行きました。もうすぐ開幕する瀬戸内国際芸術祭が楽しみです」

鎌田佳子

小林 広幸|こばやし ひろゆき

略歴
1967年 長野県生まれ
1985年 長野県立長野高校 卒業
1992年 北海道大学大学院工学研究科 修了
     青年海外協力隊(タンザニア、理数科教師)参加
1996年 JICA入社
2001年 JICAベトナム事務所
2007年 JICA経済開発部資源 省エネルギーチーム長
2010年 JICAルワンダ駐在員事務所長
2013年 JICA産業開発 公共政策部次長
2018年 JICA四国センター所長

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