父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

著:ヤニス・バルファキス 訳:関 美和/ダイヤモンド社

column

2019.05.02

ずいぶんと長いタイトルですがこの本の著者バルファキスは、2015年にギリシャで経済危機が起こった時に、ギリシャの財務大臣を務めていました。

ご記憶の方もおられると思いますが、バルファキスという人物は革ジャンにスキンヘッド、そしてバイクを乗り回し、およそ学者や政治家らしからぬ風貌と行動でマスコミからは政界のブルース・ウィリスと書かれたこともあったと言います。当時EUから財政緊縮策を迫られるなか、ドイツのメルケル首相らを向こうにまわし、大幅な債務の帳消しを主張して、大きな話題を呼びました。

この本はバルファキスが、格差、市場、金融、お金、労働、環境などをキーワードに10代半ばになる娘に、経済についてきちんと考え話すことができるように、という思いから書かれたものです。父が子に語るというスタイルの本は、インドのネルー元首相の「父が子に語る世界歴史」を思い出しますが、この本はそれに劣らず娘に対する愛情を感じられるものになっています。

娘さんはクセニアという名前です。ギリシャ語の語源はクセノスといい、他人とか異邦人という意味であり、著者がこの名前を気に入ったのは、国家や社会はよそ者の目で見るほうがその本当の姿がよくわかるということです。これが著者の基本姿勢です。

著者は長年イギリスやアメリカで経済学を教えてきた人ですが、政界を離れた現在は、ギリシャで経済学の教授を務めています。そして経済学を教える者として強く感じていることは、経済モデルが科学的になるほど、目の前にあるリアルな経済から離れていくということだと言います。

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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