ご用聞きが生んだ 「リピートビジネス」

三宅産業 社長 三宅 慎二さん

Interview

2013.08.15

「温水器の調子が悪い。トイレの水が流れない。他で買ったものだけど直してくれないか・・・・・・」。LPガスの集金や点検に行くと、いろんな用を頼まれる。

これをリピートビジネスに発展、成功させたのが三宅産業だ。LPガスや石油製品、上下水道、電気、土木、建築、太陽光発電などの販売や施工から、フロンガス破壊プラントの運営まで事業を多角化、顧客の「困った」を解決する365日24時間のご用聞き体制を作り上げた。

流通構造の変化や市街地の空洞化で、ご用聞きが衰退した訳ではない。今も、「信頼」を得る営業の基本であり、本質でもある。社長の三宅慎二さん(50)は、「ご用聞き機能」をさらに強化して、「環境分野のリピートビジネス」に挑戦する。

フロンガス破壊プラント
オゾン層を守り、地球温暖化を防止するために2001年に制定された「フロン回収・破壊法」によるフロンを無害物質にする設備。

リピートビジネス
消費者が同じ会社の商品やサービスを再利用する事業。

石炭から多角経営へ

1868年創業、観音寺市室本港に石炭問屋を構え、100年近く商いが続いた。時代が変わり、先代社長で会長の三宅昭二さん(78)がLPガスの販売を始めた。

「父はガソリンスタンドをやりたかったのですが、タンクを地中に埋設するのに費用が掛かります。銀行は貸してくれませんでした」。資金不足が後に、「多角化」と「ご用聞き」と「リピートビジネス」につながることになる。

ガソリンスタンドより設備投資が少ないLPガス事業は、ガス器具も売れるし、配管工事も必要になる。

初めは工事を外注したが、やがて資格を取って自社で施工した。水道はガスと同じ管工事だから、水道施設工事の資格も取った。

ガスや水道の工事は、住宅建築業者から仕事をもらうことが多い。「設備工事が全部できたら便利だ」と言われて、電気工事もやり始めた。

テレビや洗濯機や冷蔵庫が三種の神器ともてはやされる時代になって、街中に会社を移しショールームを構えた。

高度成長時代に乗り、設備機器、住宅、土木、不動産まで事業を多角化した。家電製品は量販店に顧客を取られたが、設備機器は影響を受けなかった。

夜中も「困った」を解決する

「家電製品はプラグをコンセントに差し込むだけですが、工事が伴う設備機器はアフターサービスが強みになります」

水回り、空調、電気、ガス器具などのアフターサービスは、「メンテサービス課」が365日24時間対応する。正月は社長が当番で、日曜祝日は社員の交代制だ。

ご用聞きは、顧客とのかかわりを強くする使い減りしない装置のようなものだという。使えば使うほど「機能」は進化し、信頼が深まって「リピーター」は増える。

「患者の命を預かる病院だから、夜中でも駆けつけられるところに」と、病院を建て直す時、空調、給排水、電気設備、浄化槽などの設計から施工までを受注したこともある。

その病院は、夜中に設備が壊れて、施工業者が留守番電話で連絡が取れなかった苦い経験があったという。

一念発起し、フロン事業へ

使用料を毎月貰えるLPガス事業は、典型的なリピートビジネスだ。お客さんをほかのガス業者や、オール電化に取られたりしない限り安定している。

フロン破壊事業もリピート型だ。「香川県のフロン破壊プラントは、わが社の財田営業所にある1カ所だけで、規模は四国最大です」

2001年、フロン回収・破壊法が制定された。当時「産廃の島・豊島」の汚名が全国に広がっていた。香川県内にフロン破壊施設が1カ所あったが、事業化せず閉鎖することになった。

「フロン破壊施設がなくなると、環境問題に疎(うと)い香川県のイメージがますます悪くなる。なんとかしなければ・・・・・・」

一念発起した。フロン破壊の機械は、部品の消耗費が負担になり利益確保が難しいが、廃棄予定の機械を購入、リニューアルして、04年、フロン破壊事業を開始した。

07年、業務用の冷蔵、冷凍、空調機器に関して規制が強化され、事業はようやく軌道に乗った。

産廃の島・豊島
1975年から16年間、産業廃棄物が違法・大量に投棄・ 野焼きされ、90年に兵庫県警が摘発した。

産業用太陽光発電にも進出

10キロワット以上の産業用太陽光発電の事業部門が好調だ。丸亀市の塩田跡地1万平方メートルに780キロワットの発電所を今年3月に完成させ、詫間町の980キロワットを含めて80件以上を受注した。さらに自社事業の2カ所の600キロワット、山本町と豊浜町の工事が控えている。

しかし、このバブルは数年で終わるという。売電事業として妙味は薄くなるからだ。昨年から自然エネルギーの「固定価格買い取り制度」が始まり、今年3月まで42円だった単価が、今年度36円、2年先にはさらに下がると予測する。

環境分野を「リピート」

太陽光発電パネルの前で=観音寺市坂本町

太陽光発電パネルの前で=観音寺市坂本町

「ご用を聞きに行けるリピーターがたくさんいるのだから、環境分野をリピートビジネスにする、日本でも珍しい会社を目指します」。三宅さんの大きな目標だ。

ガスでコンプレッサーを動かす空調機器「GHP」や、排熱を利用してエネルギー効率を高める家庭用燃料電池「エネファーム」などを視野に入れている。

また「エネファーム」と、住宅のエネルギーを管理する「HEMS(ヘムス)」を併用した、「省エネ最新技術」の提案にも力を注ぎたいと言う。

父から経営を継いで5年目。住まいと暮らしのご用聞きが、脱皮を迎えようとしている。便利で快適で環境保全に貢献する「賢いライフスタイル」創出を目指して。

◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

三宅 慎二 | みやけ しんじ

1963年 観音寺市生まれ
1989年 早稲田大学商学部卒業
    (株)TOKAI入社
1990年 四国ダイキン設備(株)入社
1991年 三宅産業(株)入社
2009年 代表取締役就任
写真
三宅 慎二 | みやけ しんじ

三宅産業 株式会社

所在地
観音寺市坂本町7丁目2番10号
TEL:0875-25-4747
創業
1868年(明治元年)
設立
1956年
資本金
4800万円
代表者
代表取締役 三宅 慎二
従業員数
78名(男70・女8)(2013年4月1日現在)
売上高
27.5億円 (2013年3月実績)
業者登録
管工事、電気工事、水道施設工事、
消防施設工事、土木工事、建築工事、
機械器具設置工事、浄化槽工事、
液化石油ガス設備工事、宅地建物取引業
事業内容・営業品目
1.住宅設備機器、家電品の販売
2.冷暖房設備工事、浄化槽設備工事、
給排水衛生設備工事、電気設備工事、
厨房設備工事等の設計・施工
3.太陽光発電システム販売施工(産業用・住宅用)
4.LPガス、オートガス、石油製品販売
5.リフォーム工事の設計施工
6.プレハブ組立ハウス及び外柵工事
7.火災保険、損害保険業務
8.浄化槽維持管理
9.設備工事メンテナンス・サービス
10.浄水器等販売・リース・レンタル業務
11.フロン回収・破壊事業
12.不動産売買管理 など
確認日
2018.01.04

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