現場での経験を支援に生かしたい

中小企業基盤整備機構 四国本部 本部長 吉川茂樹さん

Interview

2019.07.04

人々の暮らし方や産業構造の変化によって、街は生き物のように姿を変える。その“街”をつくる仕事に、ずっと携わってきた。

大学卒業後、「地域振興整備公団」に就職した。大都市に集中している産業や人を地方に分散させ、バランスの取れた国土の開発を目指す組織で、工場の地方移転やそこで働く人のためのニュータウンの整備、そのための融資業務などを行う。

最初に赴任した博多では、閉山した炭鉱跡地の開発事業に携わった。新たな産業を興すため、大都市圏の企業を何件もまわって交渉し工場を誘致、雇用を生み出す。地権者との交渉、区画整理、工事、生活の場となる住まいを分譲……といった多岐にわたる仕事を、国や地元自治体と連携しながら進めていった。計画段階から一つの工業団地ができるまでには、20年近い歳月を費やす。「誘致した工場が稼働するのを見ると、街が動き出した気がして感慨深かったですね」

自身は30年あまりの間に十数か所の地域に赴任し、いくつもの街づくりを見てきた。「工場移転などで本社から現地に赴任してきた人たちは、縁もゆかりもない土地にきて苦労も多いだろうに、黙々と仕事をして地域に溶け込もうとしていた。間近で見ていて、頭が下がる思いでした」。同じような工場が全国に数えきれないほどあり、その現場で働く一人ひとりが日本の産業を支えていると実感した。
海外展開を考える企業に同行しインド・タタ製鉄本社を訪問

海外展開を考える企業に同行しインド・タタ製鉄本社を訪問

地域振興整備公団は2004年に独立行政法人へと移行し、産業部門は中小企業基盤整備機構(中小機構)に引き継がれた。吉川さんは新たな組織で、中小企業の支援を行うことになった。

街の成り立ちを想像する

家族で訪れた鳥取・岩井温泉

家族で訪れた鳥取・岩井温泉

昔から温泉と古い街が好きだという。全国各地に赴任していた地域振興整備公団の時は、土地の温泉を巡っていた。訪れた温泉や旅館の写真、パンフレットはダンボールに入れて保管している。「たぶん数百か所ぐらいの温泉に行っていますね」。香川にいる間に、塩江温泉に行きたいという。

古い街は、目的をもたずふらっと歩く。「土地の歴史を踏まえながら、こういう街並みだから寺を中心に栄えた門前町だろう、だとするとこのあたりに寺があるのでは……などと想像しながら歩くのも楽しい。昔と今の街の設計の仕方は、似ているところがあるのかもしれません」

連携と人材育成

今後は、人材育成にも力を入れたいという。経営後継者育成やマーケティングなどさまざまな研修を実施している「中小企業大学校」が四国地域にはなく、近県まで行かなければならない。そこで、子育て中の人も含めだれもが受けやすいよう、今秋から少しずつ四国での研修を増やしていく予定だ。「研修内容はもちろん、研修で出会った仲間とのネットワークも代えがたい財産になると思います」。20年には、年間10本あまりの講座を開催したいと意気込む。

中小機構は国が手掛ける中小企業支援のほとんどの分野を担っている。カバーする範囲が広い分、自分が担当している分野だけに興味がいきがちになる。「でも、担当以外の課が何をしているかを知り、四国本部全体で支援策を考えたらもっと選択肢が広がると思うんです。担当者が現場でどんな悩みを聞き、何を感じたかを全員で共有する。各分野の職員が連携して支援していきたいですね」

吉川 茂樹 | よしかわ しげき

略歴
1959年 大阪府生まれ
1978年 大阪教育大学付属平野高校 卒業
1983年 早稲田大学政経学部 卒業
    地域振興整備公団 入団
1993年 海外経済協力基金(OECF) 出向
2004年 独立行政法人中小企業基盤整備機構設立に伴い異動
2012年 近畿本部 参事
2015年 同 審議役
2017年 同 副本部長
2019年 四国本部長

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ