純粋機械化経済 -頭脳資本主義と日本の没落-

著 井上智洋/日本経済新聞出版社

column

2019.07.04

著者は「私たちは生きている間にとんでもない歴史的場面を目撃することになるだろう」と述べています。この本はAI(人工知能)が持つ巨大な力の正体とその意味、そしてそれが与える経済や社会への影響を、人類の歴史とともに読み解いていくという、少し大風呂敷とも言える壮大なものです。それによると人類は過去に「新石器時代の大分岐」、「工業化時代の大分岐」で世界に大きな開きが生じた経験をしています。そしてAIによる爆発的な経済成長の始まりを「AI時代の大分岐」と呼びます。

2013年に著者は「人工知能を制する者は世界を制する」と述べていましたが、以後ロシアのプーチン大統領も「AIを制する者は世界の支配者になる」と言い、ソフトバンクグループの孫正義会長は「AIを制する者が未来を制する」と言っています。実際AIがどんな進化を遂げるのかは分かりませんが、たとえば過去に大きな技術的革新と言われた蒸気機関はいくら進歩しても人には近づきません。それに対し進化すればするほど人に近づいていきます。それは一方で人をエンパワーするが同等にではなく、そこには大きな格差が生じると言われます。

AI技術の遅れている日本のような国は没落し、進んでいる中国のような国は飛躍するのでしょうか。AIという技術が世界の覇権争いのただの道具にならないことを祈ります。著者は最後にこの本を読み終えてAI時代を恐ろしいものと思ったか、胸が躍るような時代だと思ったか読者に問いかけていますが、そういったことをいやがうえにも考えさせられる本です。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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