人件費上昇が経営の重しに

2019年度業績見通しアンケート調査 東京商工リサーチ

Research

2019.07.18

東京商工リサーチは、国内企業にインターネットで2019年度の業績見通しに関するアンケートを実施し、6,846社から回答を得た。政府は「経済の好循環を実現する」として13年以降、法人税率を引き下げ、賃上げを経済界に要請してきたが、業績改善の減速と、賃上げが中小企業の経営に大きな重しになってきていることがわかった。

※本調査は19年5月9日~31日にインターネットでアンケートを実施し、有効回答6,846社を集計、分析。資本金1億円以上を大企業、1億円未満・個人企業等を中小企業と定義した。

Q1.売上高の見通しは?

「増収」が31.1%、「前年度並み」が45.7%、「減収」は23.2%だった。

昨年度の調査(18年5月実施)では、「増収」が37.6%、「前年度並み」が43.9%、「減収」が18.5%だった。19年度は、18年度と比べ、「増収」が6.5ポイント下落した一方で、「減収」は4.7ポイント増加し、悪化見通しが増えている。

Q2.経常利益の見通しは?

「増益」は26.5%、「前年度並み」は47.4%、「減益」は26.1%だった。

昨年度の調査では、「増益」が31.3%、「前年度並み」が46.2%、「減益」が22.5%で、売上高の見通しと同じように、昨年度よりも厳しい見通しが増えた。

Q3.増益の理由は?

Q2で「増益」予想の1,803社のうち、1,794社が回答。増益理由の最多は「売上高の増加に伴うもの」で84.1%、次いで「仕入・外注先の見直しによる粗利改善」が19.4%、「内製化によるコスト削減」が12.1%と、コストダウンを要因とした回答が続いた。

Q4.減益の理由は?

Q2で「減益」予想の1,773社のうち、1,754社が回答。減益理由の最多は「売上高の減少に伴うもの」で69.9%、次いで「原材料価格の上昇」の45.5%、「一人あたり賃金の上昇」の39.8% と続く。売上高の減少見通しが強まり、原材料や人件費などのコスト負担がネガティブな業績見通しにつながっているようだ。資金力では、中小企業は大企業より劣勢に回っており、人件費の捻出余力が少ない分だけ、賃上げ負担は大きくのしかかっている。

政府が推し進める賃上げは徐々に逆風が吹き始めた。「賃上げ」がベースアップなどの基本給引き上げを中心とする場合、企業業績の変動に合わせて支給額を変動させやすい一時金(ボーナス)と違い、大幅な改定が難しく固定費負担の慢性的な高止まりが体力の乏しい中小企業の経営に大きな影響を与えかねない。

12年12月からの景気拡大は、金融緩和などにも支えられてきたが、企業の業績見通しが厳しくなってきたことから分岐点に差し掛かった可能性が出てきた。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

記事一覧

おすすめ記事

関連タグ

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ