かがわ・山なみ芸術祭2019

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2019.07.18

谷川博史君に会った。彼と私は同年代。彼は高校時代から美術の道を志し、東京の美大に進み、卒業後は故郷・香川に帰り、作家、教育者として初志を貫徹した活動を続けてきた。

彼が在籍していた頃の坂出高校美術部は、県内の高校の美術部から一目も二目も置かれていた。アトリエを出て街をカンバスに見立て、商店街のシャッターに次々と絵を描き連ねたり、アートの社会化的な活動を先進的に行っていた。

2006年、香川大学教授で陶芸家の倉石文雄先生ら地元作家とともに、NPO法人「かがわものづくり学校」を綾川町の山間部、旧枌所小学校に立ち上げた。廃校の活用と地元の活性化という町当局の思いと、アートの力で「地域に恩返ししたい」という彼らの気持ちが合致したのだ。

その後、10年には中山間に点在するアート作品を巡る「アートトレッキングin枌所」を開催。13年には「かがわ・山なみ芸術祭」と名称を変え、綾川町、高松市、まんのう町、三豊市とエリアを拡大し、16年には観音寺市の豊稔池周辺も加わった。今年、19年は高松市塩江町とまんのう町のふたつのエリアで集落や道の駅、廃校などを舞台に芸術祭を開催する。

地域の人たちといろいろな活動を一緒にやってきた。地元の祭りの手伝いや清掃活動等々。野外展示は地権者や役場、土木事務所等との調整が大変で、資金集めも頭が痛い。不安になることも度々あった。

でもね、と彼は言う。「最近、表現することは大事だと改めて思うんだ。それは地域の人たちの変化だ。野外の作品にふれていると、様々な固定概念が薄まり、地域の人たち自身が自由になっていく。『まずはやってみることやな。何かやらんと何も前に進まんわ』と言ってくれる。これが一番の収穫だ」

谷川君らの十数年にわたる地道な活動により、ノウハウも培われ、県外・国外とのネットワークもでき始めたという。県外アーティストの参加も5割程度で安定してきた。かがわ・山なみ芸術祭2019は、9月27日、高松市塩江町エリアから始まる。初秋から晩秋にかけての讃岐山脈の風景が目に浮かぶ。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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