鬼無はなぜ盆栽の里になったのか?

香川大学創造工学部長 長谷川修一

column

2019.08.15

この春、香川大学創造工学部防災・危機管理コース1期生が、防災まち歩き「鬼無はなぜ世界一の盆栽の里になったのか?」を実施しました。この行事は、小豆島で行った新入生向けの見学会「小豆島はなぜオリーブの島になったのか?」を体験した学生の有志が企画した行事で、県内の高校生30人、高校教員12人が、JR鬼無駅を起点として約2時間かけて高松市鬼無町内をめぐりました。

鬼無町は中世の山城のある勝賀山と本津川に挟まれ、2004年の台風23号による豪雨によって、勝賀山の山腹から発生した土石流と本津川の氾濫による被害を受けました。
当日は、大学生が本津川の氾濫被害を受けた地区と土石流被害のあった地区の地形の特徴と土地利用について高校生に質問しながら、災害が大地をつくり、人は災害の跡地を地形や土の特性を活かして利用していることを、謎解きをしながら学びました。

参加した高校生からは「土石流による扇状地という米づくりに不向きな土地を盆栽の栽培に利用した先人の知恵に感心した」「鬼無の地名は桃太郎伝説に由来すると思っていたが、江戸時代には不毛の地を意味する『毛無』だったことに驚いた」などの感想がありました。また高校の教員からは「高校生と説明を通した交流ができていた」など、おおむね好評でした。さらに同行した香川県防災士会の役員からも「画期的な行事で、次の企画を期待している」とエールをいただきました。

これに手ごたえを感じた1期生(2年生)は、1年生を誘って5月5日に18年7月豪雨によって甚大な浸水被害のあった真備町を下見し、8月の夏休みに真備町の小学生を案内する防災まち歩き「ブラハセ」を準備しています。

災害が差し迫ったとき、全員避難を促す警戒レベル4(避難勧告・避難指示)が発表されるようになりました。しかし、豪雨時の全員とは「住民全員」ではなく、河川の氾濫によって浸水する危険性の高い場所に住んでいる人、土砂災害の危険性の高い場所に住んでいる人が対象のはずです。身を守る行動は、地域を知ることから始まるのです。

香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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