大学発ベンチャー設立を目指す

i-Trap研究会 今出 雄太さん

Interview

2017.06.15

i-Trap 特許取得 Japan 5690986 5660480 USA US9510583 Europe 14743512.7

i-Trap 特許取得
Japan 5690986 5660480
USA US9510583
Europe 14743512.7

香川大学農学部から、日本、アメリカ、ヨーロッパで特許を取得した画期的な製品が生まれた。鶏の小屋に置くだけで薬に頼らなくてもダニが駆除できる「i-Trap」(アイトラップ)だ。薬を繰り返し使うと害虫が抵抗力をつけて薬が効かなくなりより強い薬で抑える、という悪循環に陥ることがある。i-Trapは「ダニが静電気に集まる」という行動特性を利用することで、その悪循環から抜け出すことができる。(ビジネス香川4月6日号「かがわのエンジン」掲載)

この原理をダニ以外の害虫駆除にも応用できれば、養鶏だけではなく観光や家電、ペット産業といった分野にも市場が広がるのではないか。その将来性を海外の投資家も注目している。
石田高校での共同調査

石田高校での共同調査

今出雄太さん(24)は、i-Trapの原理を生かして事業を展開するため、大学院に在籍しながらベンチャー企業立ち上げを目指す。学部時代に、松本由樹(よしき)准教授の研究室ですでに開発されていたi-Trapを知り「静電気とダニ」というテーマにワクワクしたと言う。研究室では、製品を鶏舎でどう使えば効果的か、実際にダニがどれだけ捕獲できるのかを調査。養鶏農家とのパイプ役は、県東部家畜保健衛生所主任研究員・片山進亮さんが担ってくれた。

研究が実際に現場で使えるかどうかを常に意識するよう、2人から教えられた今出さん。その経験を通して感じたのは、研究を広める人がいないと成果が研究室の中だけで終わってしまうということ。「アウトプットすることで世の中に生かされ、より大きな成果になっていくんじゃないか」。現場が困っていることをくみ取り、大学が製品を開発する。実際に現場で使ってみて不都合な点を大学にフィードバックして改良する。そんな大学と現場の橋渡しができる会社をつくろうと決意した。研究者ではなく経営者の道を選んだのは、勤めていた会社倒産後、一から会社を興した父の姿に憧れたからでもあった。
当面やるべき課題は、i-Trapを世界で普及させること。また、大学と協力して鶏につくダニ(ワクモ、ミナミトリサシダニ)以外の害虫も静電気で捕獲できると実証すること。これができれば、トコジラミ駆除に活用できるかもしれない。ペットと人がストレスなく暮らせる商品開発や、ダニを駆除する掃除機開発に生かせる可能性もある。

事業の将来性について、昨年シンガポールでプレゼンを行った。それをきっかけに海外から、研究費も含めて投資したいという話が何件か寄せられている。松本さんを始め片山さん、マーケティングプランナー、投資家たちといったチームで事業を進めていく計画だ。会社設立準備のため「i-Trap研究会」を近日中に立ち上げ、今年度中に正式に起業する。
今出さんには夢がある。「先の話ですが、もし事業がうまくいって利益が出れば、奨学金を作って母校で研究費として使ってほしい」。特許は若い人が使ってこそ意味があると背中を押してくれた松本さん、厳しく指導してくれた片山さんのように、将来は自分が若い人を応援したいと思っている。(石川恭子)

今出 雄太 | いまで ゆうた

1992年 8月 兵庫県明石市生まれ
2011年 3月 神戸龍谷高校 卒業
2012年 4月 香川大学農学部 入学
2016年 3月 香川大学農学部 卒業
2017年 4月 香川大学大学院農学研究科 入学
2017年度中 「i-MADE」起業予定
写真
今出 雄太 | いまで ゆうた

i-Trap研究会

所在地
高松市林町2217-16 FROM香川内
事業の概要
i-Trapの原理を活用した研究活動を行う。
設立予定の「i-MADE」では、農業用器具の研究生産・販売、輸出入、害虫駆除器具の研究・サービスの提供、農業用アプリケーションの開発・販売輸出入などを行う計画
地図
確認日
2018.01.04

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