食べる楽しみを 共有したい

Low carb moooco 代表 齊藤 眞理さん

Interview

2017.06.01

原点は、幼いころの記憶。腎臓病を患う父親の通院透析治療を待つ間、入院していた糖尿病の患者さんたちが自分の面倒をみてくれた。その人たちの多くが、久しぶりに会った時には深刻な病状になっていた。「私に治すことはできないけれど、予防のために何かできないか」。その思いが低糖質のお好み焼き粉の開発につながる。
齊藤眞理さん(44)が30歳の時、介護をしていた父が亡くなった。仕事を辞めていたため、再就職活動を行いデザインの学校にも通うが、精神的に「糸が切れたような状態」だったと言う。そんな中、体調を崩したが、試しに糖質を控えた食生活を続けたらよくなった。興味がわき、国内外から取り寄せた食品を小麦粉の代用品にしておいしいパンやケーキなどが作れないか、遊び感覚で試していった。

糖質について勉強も始め、低糖質食が糖尿病予防にもいいと知る。糖質は、砂糖や果物だけでなく、米、パン、麺など炭水化物にも含まれる。健康診断で血糖値が高めと言われた時に少しでも食生活に気を付けたら、糖尿病であんなにつらい思いをする人も減るのではないか。そこで、勉強したことを生かして料理教室をしたいと思い立ち、地域の公民館へ。「何の資格もないから、なかなか信用してもらえなくて。だったら商品を作って事業化してみようと思ったんです」
1袋はお好み焼き5枚分で800円

1袋はお好み焼き5枚分で800円

今まで試作した中から周囲の評判がよかった「おからを使ったお好み焼き粉」を商品化。通常1枚あたり40gほどある糖質を、約0.7gに減らすことに成功した。ダイエットのためではなくあくまで糖尿病予防に役立ててほしいから、豚肉や卵などの具材でたんぱく質をしっかりとれるよう栄養バランスを考えたレシピをパッケージに書いた。

お好み焼きを選んだのは、冷蔵庫にある食材で簡単に作れるから。「あと、これでたこ焼きも作れると思って」。食事制限をしていた父とは、同じものを一緒に食べられなかった。でもこういう食品があれば、みんなで作って食べる楽しさを共有できるんじゃないか、と考えた。

思いを込めて完成させた商品だが、なかなか理解してもらえなかった。「とにかく、糖尿病大国といわれている香川から広めたい」と、小売店を何軒も回りようやく高松市内の小売店で販売してもらえるようになった。その後、販売先は病院の売店や薬局など6カ所に広がった。
勉強会の様子

勉強会の様子

自身の経験から現在、家族の食事制限で悩む人が集まり、栄養士も加わって情報共有や勉強する場をつくっている。そこで、大豆の水煮を使ったパンなど低糖質の料理を試食してもらうこともあるという。身近に手に入る食材を使った低糖質料理教室も、定期的に開催できるようになった。

「この商品を開発するまで、やるべきことが見つからず、自分は社会に必要とされているのかと、もやもやしていました」。今は、食事制限が必要な子どもにおやつを作って喜んでもらったり、その親たちの輪が広がるといった経験を通して、少しは役に立っていると思えるようになった。

編集長補佐 石川 恭子

齊藤 眞理 | さいとう まり

1973年 4月 高松市生まれ
1996年 3月 大学卒業
1996年 4月 香川県庁勤務
1996年 9月 RNCコンピュータシステム入社
       西日本放送報道業務部美術 出向
2004年 9月 イタリア料理店勤務
2015年 8月 Low carb moooco起業
2017年 2月 かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ
       最優秀賞受賞
写真
齊藤 眞理 | さいとう まり

utisoT(旧 Low carb moooco(ローカーボ モーコ))

住所
香川県高松市番町1-5-1 四番丁スクエア3
代表電話番号
090-1009-0460
事業内容
低糖質お好み焼き粉「低糖質・グルテンフリーutisoTのおしょくじ粉」の販売
低糖質料理教室の開催ほか
研究所の所在地
〒761-0301 香川県高松市林町2217-44 
香川県新規産業創出支援センター
ネクスト香川 203
URL
https://www.lowcarb-moooco.com/
確認日
2019.02.13

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