新たな付加価値を提案

日本トレーディング 代表取締役 塩田 一人さん

Interview

2017.04.06

父に「明日から来なくていい」と言われたのがきっかけだった、と塩田一人さん(54)は振り返る。父が経営する印刷会社に勤めながら新規ビジネスを模索し、化粧品輸入販売、その後は車のコーティング事業参入などに取り組んでいたころの話だ。「あの言葉がなければ今はないと思います」

立ち上げた会社に力を注ぐようになって間もなく、コーティング剤販売のため、ドイツ・フランクフルトモーターショーのブースの一角で、デモンストレーションを行った。そこで縁がつながり、自動車の買取販売の業界へ。最初に受けたのは「LPガス自動車教習用車両の買取」だった。「普通に買い取ってオークションで販売してもよかったんですが、調べるとセダン型のLPガス自動車教習用車両がタクシーに使われていることが分かった」。いける、という感覚を頼りに「タクシー車両」に絞って買取販売を行う決断をした。
自社で整備することが品質の安定にもつながる

自社で整備することが品質の安定にもつながる

一般的に中古車販売の世界では、お客さんはまず“安さ”を基準に車を選ぶことが多い。そのため業者は、手をかけずに市場に出せる車を買い取ることで、外装補修や整備コストを抑えようとする。しかし、そんな車には買い手が集まり、競争も激しい。そこで、安さだけではない付加価値を追求している。「適正な価格で、かつ“状態のいい車”を提供するため、外装補修・点検・整備に徹底的に手間をかけます。整備、板金塗装まで自社で行う店舗は少ない上、ハイブリッド車のLPガス改造も行っているメーカーは珍しいと思います」
安全補助椅子は実用新案取得

安全補助椅子は実用新案取得

自社で技術を持っていると、顧客のニーズにすぐ対応できるという利点もある。例えば、取引先のタクシー会社から「高齢の乗客が、お尻から乗り込む時にシートまでの距離が遠いと言っていた。何とかならないか」との依頼が持ち込まれた時のこと。半年後に座席とドアの間に取り付ける安全補助椅子を開発し、その車種の標準装備にした。「手間をかけるのは効率面から考えると厳しい。でも、ここに任せておけば間違いないと思ってもらうことが何より大切。そうしないとリピートにつながらない」
最近、心を占めている思いがある。「車を販売するだけでいいのか。もう少し根本からお客さんのお手伝いがしたい」。そこで、タクシー会社の車両稼働率を向上させるため「女性ドライバーによるコンシェルジュサービス」企画の提案を始めた。高齢者や女性の乗客を中心に「女性ドライバー」へのニーズは高いが数は少ない。そのギャップを解消するのが目的だ。ドライバーは送迎業務だけではなく、買い物や病院の付き添い、家事、掃除の手伝いなど、地域のさまざまな要望に応える。「タクシー会社にとっては新規事業参入のきっかけに、また他社との差別化にもつながると思います」。熱意が届き今春、フランチャイズ1号店「woman concierge」がオープンする。

「何事もあきらめるのは簡単だけど性に合わない。お客さんに何とかできないかと言われたらつい、いろいろやってしまうんです」。父親からは、そろそろ印刷会社の跡継ぎにという話も出たが「今忙しいから、と答えました」と笑う塩田さん。今夏には一般企業や個人向けの中古車販売店をオープンさせる。扱う車種はハイブリッド車のみに絞る。

編集長補佐 石川 恭子

塩田 一人 | しおた かずひと

1963年1月 高松市生まれ
1985年3月 大阪学院大学経済学部 卒業
1985年4月 株式会社塩田印刷 入社
1991年1月 専務取締役 就任
2004年1月 株式会社日本トレーディング設立
      代表取締役 就任
写真
塩田 一人 | しおた かずひと

株式会社日本トレーディング

住所
香川県高松市春日町1680-1
TEL:087-844-4333
事業概要
旅客用自動車を主とした買取販売
LPガス改造車の製造・構造変更
一般整備・板金塗装
資本金
1000万円
従業員
19人
地図
確認日
2018.01.04

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