学びの場に自ら出向く

まちのシューレ963 店長 谷 真琴さん

Interview

2015.08.06

子どもの頃、商店街を「まち」と呼んで遊びに行くのを楽しみにしていたことを思い出す。なぜか分からないが引き付けられる場所だった。何でもある、何でも出来る、そんなふうに思っていたのかもしれない。

あの頃と様子は変わったけれど、今の「まち」の魅力がそこにはある。2010年12月、高松市の丸亀町商店街にオープンした「まちのシューレ963」。シューレは学校を意味するドイツ語だ。ここに来れば香川や四国のことを学べるという意味が込められている。「963」はプロデュースを手掛けた石村由起子さんが経営するカフェ「くるみの木」に敬意を表して付けられた。

「肩書は店長ですが、私は学ぶ立場です」と言う谷真琴さん(37)。昨年、店長になった。オープンの約半年後からシューレで働いている。それまで塾講師や資料館勤務の経験がある。「私の中ではどの仕事もつながっています。何も出来ないので学べる場に自ら出向く、そういう気持ちですね」
シューレの店内は、カフェ・物販・ギャラリーの3つのブースに分かれている。扱うものは、それぞれスタッフが選ぶ。「こうあるべきという固定観念を持たないようにしています。いろんな意見が出るから楽しい。『誰がやっているの?』と言われる店になれば面白いですね」

うどんやいりこ、オリーブ、ハチミツ・・・。店内には讃岐生まれの食品がずらり。週末には新鮮な野菜も仲間入りする。奥に進むと食器や雑貨、衣服もある。谷さんを始めスタッフは、食品であれば味を確かめ、工芸品であれば制作現場を見に行く。

作り手が心血注いで作ったものを、欲している人の元へ届ける。それがシューレの役割だと考えている。一品一品、作り手の思いをお客さんに説明したいという気持ちを込めて、ポップを書き商品を並べる。

東京出張の際にはいろいろな店をのぞいてみる。けれど、参考にしたり真似したりはしない。香川で唯一ではなく、全国、世界で唯一の店にしたい。「素敵なお店はたくさんあります。でも既にあるものを真似しちゃいけないと思っています。田舎の店だからと言い訳せず、何度来ても飽きない場所にしたいですね」

谷さんは店長就任前まで、ギャラリーを担当していた。特に印象に残っているのは、一昨年に開催した「茶と道具展」だ。展示だけではなく、オリジナルの茶道具の制作も手掛けた。野点のための道具一式だ。セレクトした既製品に加えて、作家とともにゼロから生み出したものもある。企画から実施まで1年半かかった。常連客の「ようこんなことやったな」という感嘆の言葉がうれしかった。

オリジナル商品の開発にあたっては、お店に足りないもの、まだ世の中にないもの、自分も欲しいと思うものを考える。現在販売しているオリジナル商品は、木の時計と箱。どちらもシンプルで飽きのこないつくりだ。木箱はお客さんの要望に応えて作ったもの。ふた付きで重ねて置いても安定性がある。立てれば本棚にもなる。

シューレにも外国人観光客が増えている。中でも台湾からの旅行者に人気が高い。「台湾では日本の手仕事がブームになっているようで、作家が作る器や籠を求めてやって来られます。来年には瀬戸内国際芸術祭が開催されるので、外国語対応も充実させたいですね」

いろいろなことを学びたい、見てみたい。そんな意欲あふれる人は、学校という名の店にとてもふさわしいと感じた。

谷 真琴 | たに まこと

1977年8月 高松市生まれ
2003年3月 立命館大学大学院文学研究科 日本文学専攻 修了
2011年4月 一般社団法人讃岐ライフスタイル研究所 入社
2014年5月 同社運営「まちのシューレ963」店長 就任
写真
谷 真琴 | たに まこと

一般社団法人讃岐ライフスタイル研究所 まちのシューレ963(キュウロクサン)

所在地
高松市丸亀町13-3 高松丸亀町参番街東館2F
TEL
087-800-7888
事業の概要
雑貨、食品、家具の販売、ギャラリー・カフェを併設運営。
商品開発、空間プロデュース など
社員数
20名
確認日
2018.01.04

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