時代が変わっても 変えたくないもの

平松春松園 4代目園主 平松 浩二さん

Interview

2015.02.19

高松市の鬼無・国分寺地区は松盆栽の一大産地。盆栽園を訪れるのは、かつては買い付けに来る仲買人がメーンだったが、今は一般客が増えた。

「一人ひとり好みが違うので、その人に合うように盆栽を作っていきます」と、平松春松園の平松浩二さん(47)。子どもの頃から園を継ぐものだと思い、他の職業を考えたことはなかった。大学卒業後、父のもとで修行を始めた。

「父とは親方と弟子の関係。仕事場にいる時は一言も話しません」。樹形を整える針金掛けやせん定など、盆栽作りに必要な技術について父からアドバイスを受けたことはない。全て見て覚えた。「一日がかりで針金を掛けて整えた枝が、翌朝には切られていたこともあります。それを見てこの枝は必要なかったんだと学びました」

木は日々成長する。その変化に対応し続けるため、盆栽職人の仕事にゴールはない。とにかく忍耐が必要だと平松さんは言う。「その木の良いところを引き出して、現時点での最高の状態を作ることが盆栽職人の仕事です」。何年やっても「枝作り」が難しい。「父が仕立てた盆栽は、やはり美しいですね。私の技術はまだまだ及びません」

畑で苗から木を育て、ある程度まで成長すると鉢に上げ、盆栽に仕立てる。松でも黒松、赤松、五葉松などがある。松盆栽以外にも真柏や、モミジなどの雑木といった種類もある。大きさも大型、中型、小品と様々だ。

園で育てた盆栽をお客さんに買ってもらい、定期的な手入れも請け負う。盆栽愛好家は、お気に入りの鉢を展示会に出品するのが楽しみの一つだ。盆栽園によってカラーが異なり、お客さんは好みの園を選ぶ。現在、平松春松園で預かっているのは100鉢ほど。手入れが終わると、再びお客さんのもとに返る。「展示会で評価を受けるのも職人の喜びです」
2011年に開催されたアジア太平洋盆栽水石高松大会。これを機に、世界の盆栽ファンに鬼無・国分寺地区が認知され、外国人客も増えた。平松さんは同大会で、観客の目の前で盆栽を改作するデモンストレーションを披露。「限られた時間の中で美しい形に仕上げ、観客を飽きさせないようにしなければなりません。一種のショーですね」。盆栽の新しい見せ方だ。

その後、海外の展示会などでもデモンストレーションを依頼されるように。昨年はフランスの展示会と中国の大会に参加。今年もフランス、オーストラリア、プエルトリコを訪れる予定だ。「技術があれば少しの英語で十分。技術は世界共通ですから」

昨年は高松盆栽大会の運営委員長を務めた。「3年に一度、開催できたらと考えています。17年には埼玉で盆栽の世界大会が開催されるので、高松でも鬼無・国分寺地区が盛り上がるようなことをしたい」

国分寺北部小学校には盆栽を育てる授業がある。平松さんは10年以上指導を続けている。子どもたちは一人ずつ自分の鉢を持ち、古くなった葉を取ったり、こまめに水をやったりと一年間丹精する。「根の張り具合や幹模様が盆栽の美しいところ。一人でも盆栽っていいなと思う子が育ってくれたら」

盆栽職人と愛好家の高齢化が進み、後継者の育成と国内の需要拡大が急務。国分寺地区の盆栽園主の中では、平松さんが最も若い。「ずっと昔から手作業でやってきたことだから、仕事そのものは今後も変わらない。盆栽の見せ方や売り方は変わっても、作り方は変えずに守っていきたい」

平松 浩二 | ひらまつ こうじ

1967年12月 高松市生まれ
平松春松園4代目園主
日本盆栽協同組合 組合員
日本小品盆栽組合 組合員
(公社)全日本小品盆栽協会 理事
(公社)全日本小品盆栽協会 認定講師
雅風展実行委員会 委員
JA香川 国分寺盆栽部会 部会長
グリーンフェスタ国分寺実行委員会 実行委員長
香川県盆栽生産振興協議会 会長
農林水産省 輸出戦略実行委員会 委員
(公社)全日本小品盆栽協会 讃岐国風小品盆栽会 事務局
写真
平松 浩二 | ひらまつ こうじ

平松春松園

所在地
高松市国分寺町新居2365-2
TEL
087-874-0335
事業の概要
盆栽の生産販売、手入れ、レンタルなど
確認日
2018.01.04

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