新時代の藍産業 家族のために優しい石けんを

有限会社藍色工房 代表取締役 坂東 未来さん

Interview

2013.08.15

「藍は運命の素材。人生が丸ごと変わりました」

坂東未来さん(38)の前職はピアニスト。夫との出会いが、坂東さんをものづくりへ導いた。

「当時、夫は肌荒れがひどくて、乾燥とかゆみに苦しむ彼を助けてあげたいと思いました」。海外出張時に重度の日焼けをし、その跡がやけどのようになっていた。肌にいいと言われる、ありとあらゆることを試す日々。そんな中、知人からハーブの石けんをもらった。使ってみると調子が良かったため、ハーブや薬草の勉強と、夫に合う石けん作りを始めた。

ある日、薬草図鑑をめくると、最初の項目の「藍」が目に付いた。効能として解熱や解毒作用が記されている。実家は徳島県山川町の藍農家で、藍は坂東さんにとって身近な植物だった。

「農家では夏の収穫時期、藍の種のお茶を飲む習慣があります。虫刺されに、葉をもみ込むといいというのも聞いていました」。藍は染料として使うもので、薬効は副産物。化粧品に取り入れる発想はそれまでなかった。藍なら実家にたっぷりある。早速、石けんの試作に取り掛かった。

半年後、納得のいくものが出来た。その頃には、試作品を使っていた知人も藍染め石けんの完成を心待ちにしてくれていた。夫と同じように、肌の悩みを抱える人がたくさんいるのでは。商品化へと動き出した。時を同じくして、夫の勤務先が倒産。夫婦で会社をスタートさせた。

山川町では、坂東さんの実家が唯一の藍農家となっていた。「伝統工芸だけでは藍を守れない。途絶えてしまってからでは遅い」という思いもあった。しかし、高級品として藍や藍染めに誇りを持つ、徳島の農家からは反対の声も上がった。「消耗品に使うなんて」

それでも「藍産業の衰退を食い止めたい。いずれまちの産業の柱になれば」と続けるうち、理解も得られるようになった。父と友人が中心となって農業法人を設立、耕作放棄地を借り、栽培面積を年々広げている。

藍染め石けんの発売後、たびたびメディアで取り上げられるようになった。注文が殺到し、半年~10カ月待ってもらうこともあり、要望に応えられないもどかしさを感じた。量産できる製造方法にするべきか、決断を迫られた。

「白黒はっきりさせる、意思決定するということは苦手でした。でも、そう言っていられない。会社の舵取りは経営者しかできませんからね」

レシピの変更と機械化はしたくない。手作りにこだわり、作業の効率化を徹底。四角い石けんを円形に変えた。円筒の型に原料を流し込んで、一度に多くの石けんを作れるようにした。

藍を発酵させると「すくも」という染料になる。石けんに使うのは、藍から抽出したエキス。発酵させていないため、顔を洗っても青くならない。石けんの製造には約2カ月かかる。袋詰めまで、桐の箱の中でじっくり乾燥・熟成させる。和三盆糖を使った石けんも開発し、藍染め石けんとともに店舗とインターネットで販売。顧客の約7割が関東在住だそうだ。
来年の発売を目指しているのが白髪染め。藍で髪を染めてみたいとの声に応えた商品だ。「愛と藍を掛けて、ブライダル商品も提案しています。藍染めや石けんをプレゼントとして気軽に使ってほしい」。最近では、メーカーに藍の粉末を提供し、食品を作る試みも進んでいる。

夫の肌に優しい石けんを作りたいとの思いで始まった坂東さんの挑戦。手に取る人が自分の家族にも薦めたくなる。そんな商品を作り続けることが目標だ。

坂東 未来 | ばんどう みき

1975年7月13日 徳島県生まれ
1998年3月 名古屋音楽大学 卒業
      ピアニストを経て
2005年11月 有限会社藍色工房 設立
      代表取締役 就任
写真
坂東 未来 | ばんどう みき

有限会社藍色工房

所在地
木田郡三木町大字下高岡2197番地1
TEL
087-813-8827
資本金
300万円
社員数
2人(役員4名、パートスタッフ7名)
事業内容
化粧品、生活雑貨等の開発・製造・販売
確認日
2018.01.04

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