東大卒、元外資系 小豆島で「豊かさ」を追う

株式会社459 代表取締役 真鍋 邦大さん

Interview

2013.07.04

中学生のにぎやかな声が聞こえてくる。月に1回程度、小豆島町の町立内海中学校などで開かれている「寺子屋教室」。輪の中心には真鍋邦大さん(34)がいる。

「四国から日本を元気にしたい」という思いを込め、語呂合わせで名付けた株式会社「459(ヨンゴキュウ)」の代表を務める。「刺激や競争の少ない島の子どもたちに、身近な目標を持ってもらいたかった」と話す。

関西圏の大学生らを講師として招き、多いときでは約60人の中学生に勉強や大学生活など社会について教える。昨年は、延べ45人の学生・若手社会人が参加した。講師陣は真鍋さんの自宅に宿泊する。報酬は真鍋さん自らが案内する島巡り。小豆島町のバックアップもあり、低予算で実現させた寺子屋は、「地域応援ビジネスモデル」の一例だ。

高松高校から東大をへて、リーマン・ブラザーズ証券に入社した。職場は六本木ヒルズ。2005年4月のことだ。ロンドン、ニューヨーク、東京と金融市場は24時間絶え間なく動く。朝6時に出勤し、仕事は深夜にまで及ぶこともあった。「東大、リーマン」とまさに絵に描いたような「勝ち組」人生だった。

転機は08年9月に訪れた。会社が破綻(はたん)した。いわゆる「リーマン・ショック」が世界を襲う。「まさか破綻するとは思っていなかった。ショックよりも、『そうなんだ・・・・・・』と冷静に事実を受け止めていた」と言う。

リーマン・ショック後、実家のある多度津町へ戻った。証券マンの時とは180度違う古里での暮らしを1カ月続けた。贅沢ではないが、はるかに豊かだった。そして11年3月、東日本大震災が起きた。

「大切なのは何だろう・・・・・・」。多くの人が亡くなり、原発事故で避難者があふれ、日本人のパラダイムシフトが起こると予感した。つまり日本人の思考の中で優先順位や価値観が変わると感じた。

決断は早かった。小豆島に渡り、12年2月、「地域応援」の会社、459を設立した。瀬戸内海、オリーブ、そうめん、農村歌舞伎・・・・・・。小豆島には「宝」がたくさんある。一方、人口流出、少子高齢化という過疎の波にも洗われる。そんな「縮図」の島を活動拠点に選んだ。

手掛ける事業は多岐にわたる。地元野菜の生産販売、小豆島特産品のカタログ販売。今年秋には小豆島町の自宅を改築し、老若男女が集えるカフェをオープンする予定だ。

そうめんやイリコを原料に、懐かしくて新しいお菓子として「ポン菓子」づくりを始め、声が掛かればどこのイベント会場へも駆けつける。「シマポン」と呼ばれているポン菓子は、徳島や高知でも「山ポン」「村ポン」として出回り始めている。「寺子屋教室」もそんな地域応援のひとつだ。

まさに「何でも屋」。儲けは二の次だ。でも、とことん地元資源を活用する。「小豆島でビジネスモデルが成功すれば、全国のあらゆる地域で応用できるはず」と考えている。
東京のワンルームマンションから、今は十部屋ある広々とした一軒家に住んでいる。「いい大学に入って、都会の大企業に就職するというのが成功モデルの一つだったが、これからは違う」と断言する。

「贅沢じゃないけど楽しそうだねっていうのを当たり前の価値観にしていきたい」。住む人がその土地に誇りを持てるようになる。それをゴールの一つに設定し、地元で生きていくことを決めた。それがリーマンと震災から学んだことだ。

真鍋 邦大 | まなべ くにひろ

1978年9月6日 高松市生まれ
1997年3月 香川県立高松高校卒業
2003年3月 東京大学経済学部経済学科卒業
2005年3月 同大学院新領域創成科学研究科修士課程修了
2005年4月 リーマン・ブラザーズ証券株式会社入社
2010年2月 ロイヤルバンク・オブ・スコットランド東京支店入社
2012年2月 株式会社459創業
写真
真鍋 邦大 | まなべ くにひろ

株式会社459・

住所
香川県小豆郡小豆島町蒲生甲1417-2
代表電話番号
080-5450-4595
設立
平成24年2月
事業内容
お野菜事業部
ポン菓子事業部
ギフト事業部 など
資本金
459万円
地図
URL
https://www.facebook.com/459.co.jp
確認日
2018.01.04

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