最高の椅子を作りたい

wood-furniture+1 二宮 靖夫さん

Interview

2018.06.07

さぬき市に工房を置く木工職人の二宮靖夫さん(36)。生活の質が一段階上がるような家具を作りたいとの思いを込めて、工房の名に「+1(プラスワン)」を付けた。

使うのは無垢材だけ。「節や木目など木の表情が豊かなんです。木の持っている力強さも感じます」。住宅新築の際に、工務店や建築家を通じて家具の注文を受けることが多い。

岡山市出身の二宮さんは、大学進学で神戸市へ。工業製品のデザインを学んでいた。3年になったある日、臨時収入を得てイサム・ノグチのコーヒーテーブルを買う。それからイサム・ノグチに興味を持ち、大学の先生に高松市のイサム・ノグチ庭園美術館へ連れて行ってもらった。帰りに寄ったのが、先生が以前勤めていた桜製作所だった。桜製作所は注文家具を製造するほか、20世紀を代表する家具デザイナーのジョージ ナカシマの製作ライセンスを持つ。

「昔ながらの職人が働いていて、時間が止まったかのような空間でした。いいな、自分も働いてみたいと思いました」。初めて見たジョージナカシマの椅子は、見た目はシンプルだが彫刻のような造形美があった。「あの美しい家具を作りたい」。そんな気持ちがふつふつと湧き上がり、神戸に帰っても興奮はさめず、2日間眠れなかった。

それから何度も桜製作所を訪ね、働かせてほしいと社長宛てに手紙を書いた。卒業間近になって、やっと入社が決まった。他に就職活動はせず、「桜製作所で働くことしか考えていませんでした」

2005年の入社後は親方について、椅子作りを学んだ。道具を使うだけでなく、手入れまで自分でできなければ一人前にはなれない。例えばカンナは刃を研ぐ。使う時には木槌でたたきながら刃の位置を0.1ミリ単位で調整する。一通り道具を扱えるようになるまで5年かかった。それでも「これで終わりということはなく、一生突き詰めていくものです」

桜製作所では、ジョージ ナカシマをはじめとするデザイナーの椅子を作った。親方からは、角を丸く削る「面取り」にメリハリが必要だと教わった。一つの椅子でも、部位によって木材の角が尖っているところ、丸みを帯びているところなど少しずつ違う。「細部へのこだわりが、椅子全体の醸し出す雰囲気を決めます。一つの椅子が空間に与える影響が、いかに大きいかも学びました」

親方が引退したことと、自分でもデザインして家具を作ってみたくなったことをきっかけに、独立を考えるようになった。「親方に認められたいと思いながら、ずっと椅子を作ってきました。これからはお客さんに認められるものを作りたいと思ったんです」

約10年働いた桜製作所を退社し、2014年に独立。椅子だけでなくテーブルやテレビボード、棚なども手掛けるようになった。家具作りで大切にしているのは、見た目が軽やかに感じられるよう、曲線を意識すること。

「お客さんの要望を聞いて、それを家具に反映させる。完成品を前にして喜ぶお客さんの顔を見ると、ああ、作ってよかったなと思います」

これからはスタッフを増やし、大きな仕事も受けられるようにしたいと考えている。「自分としては、誰が見ても『きれいだね』と言うような椅子を死ぬまでに一脚でいいから作りたい。そんな椅子ができたら最高ですね」
二宮さんが作る椅子

二宮さんが作る椅子

鎌田佳子

二宮 靖夫 | にのみや やすお

1982年 岡山市生まれ
2005年 神戸芸術工科大学
    プロダクトデザイン学科 卒業
    桜製作所 入社
2014年 工房設立

wood-furniture+1(ウッド・ファニチャープラスワン)

住所
さぬき市大川町富田東45-5
地図
URL
http://wood-furniture-plus1.net/
確認日
2018.06.07

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