昭和のマルチクリエーター・ 和田邦坊を追いかけて

灸まん美術館 学芸員 西谷 美紀さん

Interview

2018.08.02

自著『和田邦坊デザイン探訪記』を手に(灸まん美術館)

自著『和田邦坊デザイン探訪記』を手に(灸まん美術館)

お菓子のパッケージをはじめ、邦坊が手掛けてきた 仕事を振り返る「和田邦坊の仕事展」

お菓子のパッケージをはじめ、邦坊が手掛けてきた
仕事を振り返る「和田邦坊の仕事展」

灸まん美術館(善通寺市)が開催している「和田邦坊の仕事展」。好評のため8月31日(金)まで、会期が1カ月延長された。企画したのは同館学芸員の西谷美紀さん(35)だ。仕事展というテーマの選定や展示物の配置、解説文の作成などを手掛けた。

邦坊は1899年に琴平町で生まれ、時事漫画家、小説家、農事講習所の教員、讃岐民芸館館長、商業デザイナー、画家として活躍した。西谷さんは邦坊の作品に魅せられ、その足跡を一つずつ丁寧にたどってきた。
高松市出身の西谷さんは、京都の龍谷大学に進学。学芸員を目指し、歴史学を学んだ。卒業後は京都にある資料館に採用されたが、2011年3月に帰郷、栗林公園で働き始めた。邦坊は同園内にある讃岐民芸館の初代館長で、様々な資料が残されていた。そこで初めて和田邦坊の名を知った。

当時の栗林公園所長の勧めもあり、西谷さんは同年10月に展示会「さぬき画報~和田邦坊がいた栗林公園~」を開催。「紹介しきれないものがたくさんある。いつか報告書にまとめよう」と考えた。香川県や高松市などの文化施設で学芸員として働く傍ら、プライベートの時間を使って個人的に邦坊の足跡をたどり続けた。

昨年発行したのが、調査結果をまとめた『和田邦坊デザイン探訪記』だ。西谷さんはなぜここまで邦坊に惹かれるのか。「京都にいた時、自分の故郷について何も知らない、語れないという寂しさを感じていました。邦坊の作品には栗林公園など私が子どもの頃から見てきた風景が描かれていて、心にすっと入ってきたんです。自分のアイデンティティを再認識させられたというか」
教科書で目にした人も多い「船成金」の風刺画も展示

教科書で目にした人も多い「船成金」の風刺画も展示

資料の分析や関係者への聞き取り調査で、邦坊の人となりも見えてきた。「わしの言うことは絶対や」の言葉とともに、商品や店舗のプロデュースをしていた邦坊は、周囲の人に豪快、天才という印象を与えていた。しかし西谷さんが感じるのは「努力の人だった」ということ。「ラフスケッチやアイデアのメモ書きをきちんと残していますし、同じモチーフを何十枚も書くなど試行錯誤の跡が見えます」

琴平土産でおなじみの「灸まん」も邦坊のプロデュースで生まれた。灸まん美術館は、邦坊の業績を顕彰するために作られたものだ。西谷さんは今年2月から同館で働いている。「収蔵品の整理をしている時に『学芸員になって良かった』って思います。どんな展示ができるだろうって考えるだけで楽しい」

来年、和田邦坊生誕120周年を迎えるにあたって、企画を考えている。昨年好評だった邦坊ゆかりの地を巡るまち歩きを、今年10月に再び行う。来年は善通寺を飛び出しての展示会も行う予定。2冊目となる報告書も準備中だ。

「灸まん美術館ではパッケージデザイン展を考えています。香川県民にとって馴染み深いデザインの世界を、あれもこれも楽しんでもらえれば。物産品のPRとしての見方もできるはず。マルチクリエーターともいえる邦坊の研究は、分野が広く大変ですがやりがいを感じます。香川県の歴史を語る財産として、これからも調査を続けていきたいと思っています」

鎌田佳子

西谷 美紀 | にしたに みき

1983年 高松市生まれ
2002年 高松桜井高校 卒業
2006年 龍谷大学 卒業
    香川県や高松市などの施設、四国村を経て
2018年 灸まん美術館 学芸員

灸まん美術館

住所
香川県善通寺市大麻町338
住所
善通寺市大麻町338
TEL:0877-75-3000
開館時間
9~17時
休館日
毎週水曜日
入館料
一般 300円、小・中・高・大学生は無料
地図
URL
https://kyuman.co.jp/museum/
確認日
2018.08.02

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