高等学校という地域財産

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2017.09.21

この夏、三本松高校の甲子園ベスト8に香川県中が沸いた。高校生の活躍は県民に勇気や元気を与え、私たちの故郷に対する思いを熱くする。高校の同窓会は結束が固く、活動も活発だ。県外に同窓会を有する高校も多い。様々な面で高等学校という存在は地域と社会、人を結ぶ連結環としての役割を担っている。

香川県には公立30校、私立12校(通信制を含む)がある。高校教育の内容は実に幅広く、普通、工業、商業、農業、水産、家庭、看護、福祉、美術、音楽、情報、外国語、総合等の大学科があり、さらにその中に小学科・コースが設けられている。今年度、新たに多度津高校に造船コース、坂出高校に教育創造コースが設置された。

去る9月1日、多度津高校の実習船「香川丸」がハワイ沖の太平洋に向け多度津港を出港した。漁業や航海術を学ぶ生徒24名を乗せ約2カ月に及ぶ航海が始まった。甲板下層の狭い二段ベッドで寝起きし、海水風呂で汗を流す。マグロはえ縄漁の実習では、全長125㎞のはえ縄を大海に投じ、それを巻き上げるという大変な作業を何度もこなす。塩飽水軍の末裔、ここにありだ。

さぬき市のほぼ中央、田園地帯の中に石田高校はある。なみ形のやさしい屋根の校舎棟は、国立能楽堂などで名高い建築家大江宏氏の設計。校舎の周辺を、牛舎、豚舎、鶏舎、園芸温室、野菜畑、水田が囲む。校庭全体が田園コミュニティを形成する。この環境の中で、生徒たちは、日々農畜産物生産を基礎から学び実習に汗を流す。丹精込めて育てた牛や豚が業者に引き取られるとき、思わず涙を流す生徒も多いという。

今年4月、観音寺中央高校と三豊工業高校の統合により、観音寺総合高校が開校した。食物科では和食、洋食、中華、製菓の基本を学び、民間のシェフや板前さんからも直伝講義が受けられる。料理に興味を持つ人にとって垂涎の授業だ。卒業までに食物に関する基礎を学び調理師免許の取得を目指す。

改めて高校教育の幅広さに驚くとともに、そこで学ぶ生徒たちの一生懸命な姿に感動を覚える。ほとんどの人たちが高校教育を経験し、それぞれの分野に巣立っていく。個人の人生にとっても、地域社会や地域産業にとっても高等学校の存在は極めて大きな役割を担っている。この高等学校という多様で豊かな教育の場を、私たちの財産として、これからも大切に育てて行きたい。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

写真
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ