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半夏生(はんげしょう)

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2015.06.18

初夏の水田

初夏の水田

中国から伝わった季節を表す暦に「七十二候」があります。この暦では、毎年7月2日頃が「半夏生」にあたり、この日にまつわる行事が各地に現存します。農業において、特に重要な節目の日でもあります。

「半夏生」は、この時期にハンゲ(カラスビャクシ)が生えてくることに由来するとも、ハンゲショウ(タカシログサ)の葉の一部が白くなることに由来するとも言われています。昔より「半夏半作」との言葉があるように、この日までに田植えを終わらせてしまわないと、米の収量が極端に減少すると言われていました。

今でこそ、機械化等により田植えにかかる労力は大幅に軽減されましたが、田植えは一昔前までは人の手によるもののみでした。「田植機を発明したらノーベル賞ものだ」と言い伝えられるように、大変な重労働であったと推測出来ます。また、学校や会社が休みになる農繁休暇という言葉も伝えられているように、一家・地域を挙げての一大イベントであることがわかります。当時は物流網が今ほど整備されておらず、自分たちが作った米が一年間の食料となりましたので、半夏生までに田植えを終了させることは、一年間の食料確保のための大きな節目であったことがわかります。

田植えが終わると多忙な農作業が一段落しますので、農作業を手伝ってくれた人たちにその年に収穫された麦でうどんを作って振る舞ってきました。香川県に残っている半夏生にうどんを食べるという風習は、田植えが終わった記念日を祝う名残でもあります。この風習から、本場讃岐うどん協同組合(旧香川県生麺事業協同組合)では1980年には「7月2日」をうどんの日と定めており、無料でうどんを振る舞うイベントなどが行われています。

「半夏生」を境に、畑で栽培されている野菜も変化し、パステルカラーの淡い色をした初夏の野菜は田植えが始まるまでには全て収穫され、トマト、キュウリ、ナスといった盛夏のビビットな色をした野菜が主流となり、店頭の野菜のラインナップも大きく変化することに気が付くでしょう。半夏生は、農業の大きな節目であり、香川県には先人の努力が目に見える文化としてまだ息づいているのです。

半夏生にまつわる食文化はいろいろあり、団子(高知県大豊町)や生餅(奈良県、和歌山県)を食べたり、タコ(関西)、サバ(福井県)などの食材を食べたりする事例も残っています。これら現存する「半夏生」の文化に、日本人と稲作の深いつながりを感じることが出来ます。

青ウリ

6月に入り暑くジメジメしてくるとさっぱりした食べ物が欲しくなります。このようなときに活躍するのが、夏を先取りして出荷される青ウリです。酢の物にして、大葉(青シソ)、ミョウガ、新ショウガなどを合わせると、まさにこの季節にもってこいのさわやかな一品に変わります。

写真は旧、香川郡で半夏生に食べられていた「淡竹(たけのこ)」を使ったしっぽくうどんとタコと青ウリの酢の物。添えている植物は半夏生の時期に葉の一部が白くなる「ハンゲショウ(カタシログサ)」。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

写真
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