常連で地域に根付き、 人脈広げる

四国運輸局長 大谷 雅実さん

Interview

2018.10.04

名刺の裏側に、四国4県の図柄入りナンバープレートが印刷されている。1~2カ月に一度、裏面のデザインをまるっきり変えているそうだ。「これは生きる知恵。鎌倉で副市長をしていた時に思いついたんです」。あの人と名刺交換しただろうかと自信が持てない、会合で話のネタが尽きた・・・。そんな時に役立つ。

「新しくしたんですよと言いながら何度でも名刺交換できるし、こんな事業をしていますとPRもできます」。何事も楽しくできるように考える。

忘れられない経験

故郷の広島を出て40年、東京、福岡、北海道、神奈川、米・ニューヨークなど転勤に伴っていろんな場所で暮らしてきた。「まず地元の店の常連になる。その土地を知り、なるべく多くの人と出会うようにしています」

大学生の時にはなじみの店の常連客から、スナックのマスターの仕事や産業廃棄物の処理などのアルバイトを紹介してもらった。広島東洋カープを愛してやまず、東京では中学・高校の同級生とお好み焼き屋で試合を観戦する。高松でもカープファンが集うバーの常連になった。「そういうことで輪が広がってきました」
鎌倉薪能で「副奉行」に

鎌倉薪能で「副奉行」に

1984年の運輸省(当時)入省から海事に長く携わってきたが、2011年から約3年間は、鎌倉市の副市長を務めた。それまでの仕事とは、異なることばかりだった。子育てや介護など暮らしの中で切実な問題を抱える人々と向き合い、「一生忘れられない経験をした。これからの人生を考える材料をたくさんもらいました」

在任中は防災・減災、ごみ減量化と焼却施設の新設、漁業施設の新規建設、海水浴場の運営ルールの改善などに取り組んだ。今でもたまに鎌倉を訪れる。「駅に着くと、市民の方から『おう、副市長』と声をかけてもらえます。うれしいことですね」

風評被害を払拭

今年4月に四国運輸局長に着任して、7月豪雨には大きな衝撃を受けた。高松で被災地の写真や映像を見てはいたが、豪雨から一週間後に現場を訪れ、至る所で山が崩れているのを見て呆然とした。9月13日に予讃線卯之町―宇和島間が再開し、JR四国全線が復旧。「猛暑や大雨の中、多くの人の尽力があって完成した。本当に素晴らしいことです」

愛媛、高知、香川は豪雨で宿泊のキャンセルが相次いだ。現在、四国運輸局や四国ツーリズム創造機構、自治体、観光事業者が中心となって「四国観光復興キャンペーン」を実施中だ。「全国に向けて『元気です』という情報を発信していきます」

今後は災害発生時に避難経路はどうするのか、外国人観光客にどうやって情報を伝えるのかなど、もしもの場合を想定した観光も考えていく。「災害時にも思いやりのある地域になれば、それが財産になる」
ジャンボフェリーに乗船

ジャンボフェリーに乗船

着任時の会見で「四国霊場八十八カ所はすべて回る」と断言した。「四国らしさを感じられる素晴らしい景色『四国八十八景』も制覇したい。JR・民鉄・ケーブルカー、旅客船、高速バスなどの乗り物はすべて乗りたい。名酒・名物も味わって、私自身が四国を楽しんで情報発信したいですね」(鎌田 佳子)

大谷 雅実 | おおたに まさみ

1959年 広島県広島市生まれ
1978年 私立広島学院高等学校 卒業
1984年 東京大学工学部 卒業
    運輸省 採用
1992年 外務省在ニューヨーク日本国総領事館領事
1995年 運輸省海上交通局外航課専門官
1997年 海洋科学技術センター(出向)
1999年 運輸省海上技術安全局舶用工業課補佐官
2007年 国土交通省海事局舶用工業課舟艇室長
2011年 鎌倉市 副市長
2014年 国土交通省海事局海洋・環境政策課長
2016年 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所理事(役員出向)
2018年 国土交通省四国運輸局長

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