職人であり経営者

パティスリーブラン 代表 田中 寿典さん

Interview

2018.12.06

こんなに頑張れる仕事は他にない。田中寿典さん(59)は40年間、ケーキ作り一筋に歩んできた。実家は和菓子店だったが、修業先として選んだのは洋菓子店。「和菓子は自分に向いていないと思って。何よりも東京に行ってみたかったんです」と笑う。

高校卒業後に入店したのは東京・銀座にあったエルドール。「当時、日本一のケーキ屋と言われていました。香川では見たことのないような美しいお菓子がたくさん並んでいて、仕事が楽しくて夢中になりましたね」

4年半の修業を経て、地元の観音寺市で始めたのがパティスリーブランだ。1983年、23歳の時だった。店の経営が軌道に乗るまで5年かかった。「お金がないほうが、仕事に没頭できてよかった。当時は経営のことは分からなかったけれど、ケーキ作りには絶対の自信がありました」

だんだんお客さんが増えると、人手が足りなくなり、スタッフも増えた。三豊市と丸亀市にも出店。妻と二人で始めた店が、現在は3店舗で約60人が働く。

ブランの強みは「あえて効率化しないこと」。工場での大量生産はせず、各店舗で毎日ケーキを焼く。生産を一つの工場に集約すると、車での配送が必要になる。
生クリームを細く絞って、似顔絵を描く

生クリームを細く絞って、似顔絵を描く

「形を崩さずにケーキを運ぶのは難しい。形を保てるようにいろんな添加物を入れてしまうと、自分のお菓子じゃなくなるみたいで嫌なんです。それと、大事なのはお店に入った時の香り。良い匂いがするケーキ屋っておいしそうでしょう」

20年前、お客さんから頼まれたことをきっかけに、特別注文を受けるようになった。写真をもとに、似顔絵や愛車、観音寺ならではのちょうさなどを生クリームでケーキに描く。今では年間6千個の注文があるという。
甘酒ロール讃岐美麗

甘酒ロール讃岐美麗

新商品を考えている時が一番楽しいという田中さん。11月に発売したのが、甘酒ロール讃岐美麗だ。完成まで2年かかった。

小麦粉を使わず、香川県産のおいでまいの米粉と卵でスポンジを焼き上げる。そしてイヅツみそ(観音寺市)のさぬき白味噌と、川鶴酒造(同市)の大吟醸酒かすを混ぜた生クリームを包む。地元の素材を生かすことと、無添加にこだわった。

これからもおいしいものを作り続けたいと思う一方で、経営者としての視点も忘れない。お店をどう続けていくかを常に考えている。

「和菓子は百年、二百年の伝統が強みになる。でも洋菓子は流行に大きく影響を受けるので、ブランというブランドでこの先何十年も・・・は難しいと思っています。70歳くらいまではケーキ作りができるかな。あとは信頼できる人に任せられたら」

そうは言いながらも新商品の構想に余念がない。人口減少や少子高齢化が進む中、健康志向のお菓子やペット用ケーキなどを考えている。

鎌田 佳子

田中 寿典 | たなか ひさのり

1959年 観音寺市生まれ
1978年 香川県藤井高校 卒業
    東京・銀座「エルドール」での修業を経て
1983年 パティスリーブラン 設立

パティスリーブラン

設立
1983年
【観音寺店】
観音寺市坂本町7-1-1 TEL:0875-23-1108
【豊中店】
三豊市豊中町比地大2668-1 TEL:0875-56-6087
【丸亀店】
丸亀市土器町東3-522 TEL:0877-21-7184
地図
URL
https://blanc-kanonji.business.site/
確認日
2018.12.06

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