TSUTAYAを地域コミュニティの場にしたい

演劇を経験し、カルチャーにかかわる仕事がしたいと思い、TSUTAYAに入社した。当時は、CDやDVDのレンタルを中心に事業を展開、全国に店舗を急速に増やしていた。入社後に担当したのは、新規店の立ち上げを指導するインストラクターの仕事だった。オープン1週間前に店舗に赴任し、棚を配置して商品を陳列する、レジの使い方をはじめスタッフを教育する。「学生時代、接客業のアルバイトなんてほとんどやってない自分が、『いらっしゃやいませ』『ありがとうございました』とスタッフの前で大きな声を出して指導する。そのギャップがつらくて･･･」

それでも、オープンした時にオーナーや店長からありがとうと言われることが嬉しくて、気がつけばインストラクターを2年半。全国を回って数えきれないほど店舗のオープンを手がけてきた。

店舗がオープンすると次の赴任地に向かう日々。「オープン後のお店のことは何も分からないのが嫌になって、店舗運営の部署に希望を出しました」。店舗に配属され、商品管理・発注、日々の売り上げ管理、スタッフのマネジメントなどを経験した。「100人ものスタッフの配置や指導方法、人間関係に悩んだこともあります。でも、常連さんと会話する時や売り上げを達成した時は充実感がありました。現場を知り、店舗運営の奥深さを学んだと思います」

店舗を指導するスーパーバイザーになった時は、フランチャイズ店を初めて一から立ち上げた。車で10分を商圏として駅前でアンケートを配ったり、自転車や車で地域をまわったりして地域の状況をつかんだ。その結果をもとにどんな店づくりをするか、お客さんをどういうふうに呼び込むか、どんな商品をどれぐらい仕入れるかなどのプランニングにかかわった。「今までで一番達成感のある仕事でした。そのお店のことは今でも鮮明に覚えています。やっぱり自分は現場が好きなんですね」

ここ数年、TSUTAYAでは、店舗内にカフェやジェラート店をつくるなど、異業種と連携した新たな店舗づくりを進めている。中四国でも高知・岡山・鳥取で新店舗がオープンした。約700坪もある岡山の店舗では、本を一カ所に並べるのではなくベーカリーや旅行代理店の近くにそれぞれグルメや旅の本を点在させる。イベントスペースやビジネスマンが自由に使えるワーキングスペースも設けた。広い倉庫をリノベーションする高知の蔦屋書店では、地元企業などに出店してもらう。「やっぱりね、地元の企業は地域で地に足つけてやっているから、お店づくりにかける熱量が違うんです。そういう人たちを応援していきたい」

香川でも、ビアフェスティバル、パン祭り、ワークショップ、地元アーティストのライブといったイベントを積極的に開催している。「店舗を舞台に地元で頑張っている人達と一緒に何かを作り上げたい。TSUTAYAを地域コミュニティの場にしたいと思っています」

そのために大切なのは、人とのつながり。「もう、人見知りとか言ってる場合じゃないですよね」。ゆくゆくは香川でも、高知のような蔦屋書店を地元の企業と一緒に一からつくってみたいという。

（※注）ワンダー　君は太陽
Wonder ｩ 2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media,
LLC and Walden Media, LLC. Artwork & Supplementary
Materials ｩ 2018 Lions Gate Entertainment Inc.
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