ビジネスで活用できる数学的スキル

学習塾経営者、ビジネス数学インストラクター 大沼宏和

Research

2021.07.15

「ビジネス数学」とは

学生時代に数学が苦手だった方もデータを読む必要がある今の時代。データを読むと言っても、ただ数値を見るだけでなく「なぜ見るのか」「どこを見るべきか」「それが何を意味するか」を考えなければ、新たな発想は生まれません。

「ビジネス数学」とは、「ビジネスで数学的スキルを活用できる人材を育成するための教育」と定義された造語です。※ 現代のビジネスパーソンに必要なのは微分積分のような「数学」ではなく、データを正しく読み取ったりロジカルに思考したりできる「ビジネス数学力」です。

本コーナーでは、一見難しそうに思える数学的知識を「+-×÷」だけで解説したり、複雑に絡み合っている事象を簡単なロジックに落とし込んだりして、誰でもビジネスで数学的スキルを活用できるような記事を月に一回書いていきます。

※公益財団法人 日本数学検定協会による

「情報」に潜む3つのワナ

第1回は、巷に溢れている様々な「情報」「データ」に潜む代表的な3つのワナについてご紹介し、第2回以降それぞれのワナについて詳しく述べていきたいと思います。

ワナその1 「調査方法を見ずにデータの信用度を決める」

現代社会では、行政やメディアがさまざまな事柄を対象に調査を行っています。これらの調査は、そのほとんどが調査対象者の一部(サンプル)を無作為に抽出して行う「標本調査」で行われます。データの信用度は、このサンプル抽出時のランダム性が大きく影響します。

テレビ番組の「街頭アンケート」などは、特定の場所で行われたりリポーターの目に留まった人に聞いたりするため、ランダム性は極めて低いといえます。一方、メディアが世論調査を行う際に用いられる「RDD」(無作為抽出に基づく電話聴き取り調査法)は、比較的ランダム性が高いと言われています。このように、調査方法によってデータの信用度が大きく変わることを多くの人はあまり気にしていません。

ワナその2 「因果関係と相関関係を混同する」

因果関係とは「2つのできごとが原因と結果の関係で結ばれているもの」という意味で、両者の間に何らかの関係性がある「相関関係」とは少し意味合いが異なります 。(図1)                                

例えば、「外は雨が降っているから傘を持って外出した」は、「外は雨が降っている」が原因を、「傘を持って外出した」が結果をそれぞれ表しますから、因果関係があります。しかし、「アイスクリームの売り上げが伸びると水死者の数も増える」は有名なトリックで、アイスの売上と水死者数に直接の因果関係はなく、「夏だから」という第3の因子がアイスと水死者数に影響を与えています。

ワナその3 「率」と「数」の一方しか見ない

「日本の食料自給率は40%を切っている!」と「率」のみを強調したり、「ワクチン接種後○○人が死亡」と「数」のみを強調したりして、センセーショナルな見出しに踊らされることがあると思います。しかし、食料自給率の算出方法や平時における年間の死者数をそもそも知らなければ、上記の見出しには何の評価もできないはずです。
このように、我々が普段触れている「情報」には多くのワナが潜んでいます。次回は「調査方法によってデータの信用度はどれぐらい変わるか」について詳しく解説します。

大沼 宏和|おおぬま ひろかず

略歴
1982年 青森県生まれ
2001年 高松高校 卒業
2005年 神戸大学工学部 卒業
2007年 神戸大学大学院自然科学研究科 修了
香川県の予備校勤務を経て
2016年 HOP 設立
写真
大沼 宏和|おおぬま ひろかず

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