
本当に「Aが原因でBが起きた」のか?
因果関係は相関関係の一つにすぎない
例えば、「ストレッチを毎晩続けたから腰痛が治った」は、「ストレッチを毎晩続けた」が原因を、「腰痛が治った」が結果をそれぞれ表すため、因果関係があると言えます。
ところが、「交番の数が多い地域ほど犯罪件数も多い」は誤ったロジックで、正しくは「犯罪件数が多い地域ほど交番の数が多い」となり、いわゆる因果関係が逆の事例になります。他にも「英語の勉強に熱心な生徒ほど数学の成績が良い」という、一瞬耳を疑いたくなるような事例もあります。実はこれ、「有名進学校の生徒ならば」という第3の因子が存在しており、「有名進学校の生徒ならば英語も勉強するし、数学の成績も良い」という事実を見誤った結果となるわけです。
そして最後に、とても馬鹿馬鹿しい事例をご紹介します。図は、アメリカのメイン州におけるマーガリンの消費量と離婚率をグラフ化したものなのですが、驚くほど相関性が高く、これでは「マーガリンの消費量が下がると離婚率も下がる」ことになってしまいます。もちろん、この二つの事実には何の関連性もありません。単なる偶然です。
因果関係の立証は難しいと知ることが大事
第一に、「因果関係の立証はそもそも難しいものだ」と知り、関係性を決めつけないことです。因果関係があると思っていた2つの事柄の間に第3の因子が存在していた、なんてことはよくある話です。別の可能性も十分あり得ると想定できていれば、立てた仮説の誤りに早く気付くことができます。第二に、入ってきた情報を鵜呑みにしないことです。テレビのニュースやインターネットの記事で、思わず二度見するような見出しがつけられることがありますが、実はその見出しをつけた張本人でさえ因果関係が分かっていない場合があります。それを見てすぐに反応するのではなく、情報を最後まで確認し、因果関係の有無を正しく判断する必要があります。
最後に、自分と異なる意見・考えに積極的に耳を傾けることです。データや情報の見方は千差万別で、皆が自分と同じ分析をしているとは限りません。したがって、自分の意見を持ちつつ他者の意見にも耳を傾けるようにしましょう。例えそれが論理的根拠に基づくものでなかったとしてもです。
大沼 宏和|おおぬま ひろかず
- 略歴
- 1982年 青森県生まれ
2001年 高松高校 卒業
2005年 神戸大学工学部 卒業
2007年 神戸大学大学院自然科学研究科 修了
香川県の予備校勤務を経て
2016年 HOP 設立 - 写真
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