アンテナとフットワークで “味源”ブランド確立へ

味源 社長 西山 泰和さん

Interview

2022.02.03

大ヒット商品「SABACHi(サバチ)」を手に=まんのう町宮田の味源本社

大ヒット商品「SABACHi(サバチ)」を手に=まんのう町宮田の味源本社

大ヒット商品「SABACHi」

鮮やかな黄色のパッケージが目に飛び込んでくる。コンビニやドラッグストアでよく見かけるスナック菓子「SABACHi(サバチ)」。原材料のサバが70%配合された濃厚な味わいの魚チップスで、DHAやEPA、カルシウムなども豊富。まんのう町で食品の製造、卸売、インターネット販売などを手掛ける有限会社味源の看板商品だ。
本社第2工場の様子

本社第2工場の様子

元々、サバが大好きだった社長の西山泰和さん(52)が、3年前に商品開発に着手。「当時は『サバ缶ブーム』もあって、何とか形にしたかったんです」。タイ・バンコクの魚チップスメーカーに話を持ち掛け、1年がかりで商品化を実現した。「試行錯誤を繰り返し、決して味付けだけでは出せない、青魚が持つ独特の風味にたどり着きました。完成した時は『これだ!』と、うなりましたね」。2020年2月の発売から1年で350万個以上を売り上げ、マグロが原材料の姉妹商品「TUNACHi(ツナチ)も相乗効果でヒットを飛ばす。「これで“味源”という企業ブランドがある程度、認知されたかなと感じています」

“企業ブランドの確立”。これは、2008年に二代目として父から会社を継いだ際、西山さんが掲げた最大のテーマだった。

「メール便」が一大転機に

本社第2工場の様子

本社第2工場の様子

味源は1994年、西山さんが父や弟ら有志5人で創業。瀬戸大橋の開通ブームが残る中、観光土産の卸売業としてスタートを切った。しかし、やがてブームは去り、「このままでは先が見えない」と、食品のOEM製造へ事業を拡大。全国の観光地から届く注文に合わせて土産物をつくるスタイルをとり、会社は社員40人程まで成長した。だが、ある時、「北海道旅行した社員が『人気のラーメンです』とお土産を買ってきた。実はそれ、我が社のOEM製品だったんです。でも、誰も気がつかなくて……。あの時のショックは今でも忘れられません」

部署が違うとは言え、社員が自社でつくった商品に気づかない。こんな会社でいいのか……。「OEMだけでなく、自分たちの商品をつくり自分たちで売る。“顔が見える”自社ブランドを育てないとダメになる」。そんな危機感から思い立ったのが「ネットショップへの出店」だった。

だが、その道は険しかった。「本当に大変でした。だって、全然売れないんですから……」

西山さんが中心となって立ち上げたネット事業部。2004年に自社商品30点程を楽天市場に出店した。しかし、ネットの反応は冷ややかだった。品揃えやページのデザインをいくら変えても売上は全く伸びない。当時、社内のネット通販への理解度はまだまだ低く、「『あの部署は何をやっているんだ』と……。精神的にもきつかったですね」。西山さんは苦笑しながら振り返る。

でも「ネット通販の時代はきっと来る」と信じて疑わず、「今に見ていろ」と歯を食いしばった。そしてある日、最大の転機が訪れる。「メール便の存在に気づいたんです」。A4サイズ程度の荷物を安価で届けてくれる宅配会社の発送サービス。味源が出品していた小さくて軽い食品にはうってつけだった。「一商品当たり400~500円かかっていた郵送代が最大のネックだった。メール便だと当時は一通80円。これだとお客さんの送料を無料にできます」
楽天市場「ショップ・オブ・ザ・イヤー 食品ジャンル賞」など多数の受賞歴を誇る

楽天市場「ショップ・オブ・ザ・イヤー 食品ジャンル賞」など多数の受賞歴を誇る

どの食品業者も目を付けていなかった「メール便」で、流れが一気に変わった。「売り出し中だった雑穀米の商品の注文が万単位で来ました」。“味源”の名が知れ渡り、他の商品にも波及。楽天市場の「ショップ・オブ・ザ・イヤー」など数々の賞を受賞し、コンビニやスーパーからも次々と引き合いが来るようになった。

昨年4月にはモスバーガーとコラボしたポテトスティック「モスバーガーポテト(テリヤキバーガー風味)」を全国販売。好評につき、現在第2弾の企画が進行中だ。

“世界基準”で海外へ

コロナ禍に伴う巣ごもり需要も後押しとなり、卸売、OEM製造、ネット販売の三本柱で、ここ数年、大幅に売り上げを伸ばしている。「消費者は今どんな商品を求めているか。常にアンテナを張り巡らし、瞬時に反応する。商品開発力とフットワークの軽さには自信があります」

社員からも次々と新商品のアイデアが上がってくる。「これ、売れる?美味しいの?」と思っても、「どうしてもつくりたい」という社員の熱意に負けてしまうこともある。「どんどんチャレンジさせたいんですよね。まぁ、みんなが『絶対に売れる!』と太鼓判を押した商品でも、売れないことはありますし」と笑う。

今後のテーマは、営業力・販売力の強化と、食品安全管理の国際規格「FSSC」取得だ。設備面や衛生面など、世界基準の品質保証システムを武器に、海外展開をさらに拡大させたいと意気込む。「社会や暮らしの変化をいち早くキャッチし、お客さんのニーズに合った商品をつくり出したい。そして、社員からも家族からも『味源に入って良かった』と思われるような会社にしていきたいですね」

篠原 正樹

西山 泰和 | にしやま やすかず

略歴
1969年 まんのう町出身
1988年 琴平高校 卒業
     理容師等を経て
1994年 有限会社味源 創業
2008年 代表取締役

有限会社味源

住所
香川県仲多度郡まんのう町宮田1019-16
代表電話番号
0877-75-3103
設立
1994年
社員数
140人
事業内容
食品製造卸売、OEM企画・開発
インターネット販売(ECショップ:美味しさは元気の源「自然の館」)
沿革
1994年 創業
2003年 本社工場移転
    直営店「自然の館」オープン
    インターネット販売開始
2010年 Yahoo!ショッピング
    Best Store Awards2009受賞
2011年 楽天市場ショップ・オブ・ジ・エリア受賞
資本金
1200万円
地図
URL
http://www.ajigen.com
確認日
2022.02.03

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