1922(大正12)年頃 御供所の港から五色台方面を望む。沿岸一帯、入浜式塩田が続く。(坂出市教育委員会提供)
遠く感じた海
生れ育った坂出は、日本有数の塩の産地で、東の松浦塩田から西の沖ノ浜まで、沿岸はすべて塩田地帯であった。遊びに夢中で、つい塩田に入り込んでしまうと、即座に「こらあ」と管理人に追いかけられる。海はすぐそばなのに、海辺には近づけない。子ども心に、海は「遠い場所」に思えた。
海は豊かだった
しかし、それは海を壊すものではなかった。塩田は、人と海の均衡のもとに広がる、海と陸のゆるやかな境界であった。その先には遠浅の海が広がり、アマモが茂る豊かな海が息づいていた。
漁業も盛んだった。魚や貝を積んだ手押し車で、行商のおばさんがやってくる。祖母や母が世間話をしながら魚を選ぶ。海の豊かさが食卓を支えていた。
市の西端に御供所海水浴場があった。山裾ゆえにわずかに残った海岸で、私は泳ぎを覚え、貝を拾い、テングサを採り、小魚を追った。浜辺からは、後に陸続きとなる沙弥島や瀬居島を含め、のどかな瀬戸内海が広がっていた。
海の姿が変わりはじめた
しかし、単なる産業の転換ではすまなかった。高度成長の過程で、沿岸の埋立てが進み、海砂の採取や工場排水などにより、海の姿が大きく変わっていった。
私たちは、瀬戸内海の懐の深さに頼り、さらに負荷を重ねていった。その影響は次第に顕在化し、人と海との共存は大きく揺らいでいったのである。
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