「地元第一」に柔軟な発想で
地域ブランディングの成功を導く

三豊市観光交流局 事務局長 石井 紫さん

Interview

2026.06.18

父母ヶ浜や紫雲出山の「絶景フォト」で広く知られる三豊市。2016年当時は約5500人に過ぎなかった父母ヶ浜の来場者は6年で100倍、観光消費額も2019年から4年で倍増し、地域の小学生を対象としたアンケートでは「大人になっても三豊市に住みたい」という子どもたちが今や半数以上を占める。

地域ブランディングの成功を先導した三豊市観光交流局は、柔軟な発想力とフットワークの軽さを強みに、地域とともに持続可能な観光の在り方を模索し続けている。

「故郷を世界に誇れる場所に」を掲げる同交流局は、三豊市観光協会と国際交流協会を統合して2017年に誕生した。22年の法人化を経て、今年から父母ヶ浜の指定管理者となり、浜辺に事務所を移転したばかりだ。

三豊を観光のまちとして打ち出す際の方針は、「何も壊さない、何も作らない」「ありのままの三豊で勝負する」。地元民さえ観光に魅力を感じる人はごくわずかだった三豊のイメージを一新する鍵として着目したのが、父母ヶ浜の絶景だ。

海外旅行客にテストマーケティングなども行い、父母ヶ浜には景観の美しさだけでなく、印象的な写真をみんなでつくり上げていく「体験型」の感動を求めて足を運ぶ人たちがいると確信。地域アマチュアカメラマンらと徹底研究した「絶景フォトが撮れる条件」を公開し、多くの人がそれぞれの写真をネットで発信するようになって、父母ヶ浜の来場者は2018年以降爆発的に増加した。

PRは大成功といえるが、「消費されるだけで終わる一過性のブームにはしたくありませんでした。私たちは常に地域が第一、地域と循環する仕組みづくりを大切にしたい」と、事務局長の石井紫さん。埋め立ての危機から父母ヶ浜を救った『ちちぶの会』の活動をはじめ、市内各地の絶景を守り支える人々を丁寧に掘り下げ、地域の物語として打ち出していった。こうした発信を通じて、『ちちぶの会』は当初7人だったメンバーが300人以上に増え、全国の環境保全活動のアイコンとなるなど、地域の活性化にもつながっている。

観光需要の拡大に伴って、新たな動きも生まれた。オーバーツーリズムによる渋滞やシャトルバスの積み残しを解消すべく、紫雲出山山頂駐車場には完全予約制を導入。父母ヶ浜周辺は無料駐車場とともに予約制の有料駐車場を一部に設け、独自の予約システムで運営することとした。いずれもデジタル化による事務作業やデータ管理の効率化と、観光地を守る財源の確保の両立を実現している。

また「地域にないもの・ほしいものは自分たちでつくろう」という民間事業者の機運が高まり、地域企業が副業として観光事業に参入する例が増えた。宿泊施設数が約3倍、宿泊者数も2倍以上に増加している。このニーズを観光交流局で一元管理しようと2025年に導入したのが、県内初の地域OTA(地域の観光協会などのWEBサイト上で宿泊予約が可能なサービス)による宿泊予約管理システムだ。

観光交流局のサイトに「観光・店舗情報を調べる」だけでなく「宿泊予約ができる」機能が加わり、ユーザーにとってはワンストップで滞在中の手配がすべて完了できる手軽さがメリット。宿泊施設はシステム利用手数料を地域に還元でき、観光交流局はより正確なデータに基づいた的確なPR戦略が打ち出せる。

地域OTAの実証実験には20施設が参加し、10カ月の利用実績は予約件数205件、宿泊者数約550名。29年までに会員全体に広げていく見通しだという。「観光地や企業・店舗とタイアップした独自のプランも打ち出したい」と石井さん。地域ブランディングの成功例として国内外で評価される三豊市の取り組みは、地域を何よりも大切にし続ける姿勢が支えている。
問い合わせ先:三豊市観光交流局
0875-56-5880

三豊市

所在地
三豊市高瀬町下勝間2373-1
TEL.0875-73-3001
総人口
6万2951人(推計人口・2019年4月1日現在)
世帯数
2万3114世帯(2019年4月1日現在)
URL
https://www.city.mitoyo.lg.jp/forms/top/top.aspx
確認日
2019.05.16

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
債務整理のとびら 離婚のカタチ 交通事故の羅針盤 メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ