世界的クレーンを縁の下で支える

三祥 社長 梶尾 哲也さん

Interview

2026.07.02

高松市三谷町の株式会社三祥

高松市三谷町の株式会社三祥

「音を聞けば分かります」

巨大な鉄板をレーザーで切断し、プレスし、削り、火花を飛び散らせながら溶接していく。

建設工事や土木工事、インフラ整備など、あらゆる作業現場で活躍する建設用クレーン。そのクレーンを形づくる、荷台、荷物を吊り上げるブーム、シャーシフレーム、バンパーなど、様々な部品を製造しているのが三祥だ。世界的に活躍する地元の大手クレーンメーカーを長年、縁の下で支え続けている。「携わったものが次々と形になっていくのが面白い。『あっ、これ私がつくったものだ』ってね。しかも、それが世界へ羽ばたいていくんですから」。社長の梶尾哲也さん(58)は少し興奮気味に、ものづくりの魅力を語る。

一度の工程で上面と四方の側面を効率よくスピーディーに加工できる工作機械「五面加工機」などを駆使し、「材料となる鉄の下準備から、板金加工や機械加工など、部材加工を一貫して行っているのが私たちの強み」と梶尾さんは胸を張る。その中でも特に自信を持っているものがある。
最新鋭のレーザー加工機

最新鋭のレーザー加工機

“溶接の三祥”。作業がきれいで正確で丁寧。業界内でも評判だという。

「溶接とは『音』なんです」。梶尾さんもかつては現場に立つ溶接職人だった。「『パチパチパチ』とか『シュー』とか……。溶接する時の音が一定ではなく、雑音が混ざっていると良くないですね。きれいに見えていても中に空洞ができているとか」。そして、こう続ける。「溶接の出来、不出来は、音を聞けば分かります。音の違いが分かるようになれば一人前です」

若い頃、「先輩に『その音は何や!』とよく怒られたものです。“音”で鍛えてもらいました」。梶尾さんは懐かしそうに当時を振り返る。

社会に恩返し&子どもたちを応援

野球教室の様子=2025年12月、高松市立東部運動公園

野球教室の様子=2025年12月、高松市立東部運動公園

昨年12月、阪神タイガースで活躍した原口文仁さんら元プロ野球選手を招き、野球教室を開催。子どもたち約60人が参加し、キャッチボールや守備練習、原口さんへの質問コーナーなど、楽しいひと時を過ごした。

「学びと成長につながる貴重な経験になってくれればうれしいですね」

地元の小中学校や特別支援学校に楽器や本を贈ったり、香川ファイブアローズや香川オリーブガイナーズをスポンサーとして応援したりと、三祥は地域を支援する活動にも力を入れている。それには大きな理由がある。
「やりたくてもできなかったので……」

梶尾さんは生まれつき体が弱かった。幼い頃からスポーツが大好きだったが、「持病のため激しい運動はできず、疲れもなかなか取れず……中学はバスケットボール部、高校では野球部に入りましたが、長くは続けられませんでした」

高校生の時、電車の中で発作を起こし、見ず知らずの人が救急車を呼んでくれて一命を取りとめたこともある。「感謝してもしきれません。名乗らずに去られたので十分にお礼ができなかったんです」

これからは社会に恩返ししていこう。子どもたちの夢を応援していこう。自分ができなかったからこそ、夢を追えなかったからこそ、強く思う。

「やりたいことを思う存分やってほしい。いろんなことにチャレンジしてほしい。そう願っています」

会社のすぐ近くにある高松市南部運動場には愛称がある。「三祥グラウンド(SANSHO GROUND)」。3年前、高松市からネーミングライツ命名権を5年契約で購入した。「市民の皆さんにさわやかな汗を流してほしい。練習に使っている高松第一高校野球部には、ぜひ甲子園に行ってもらいたいですね」とエールを送る。

「実は三祥グラウンドで会社の運動会をやりたいんです。ですが社員らは『もしケガをしたら仕事ができなくなるから』と。でも……やっぱりいつか実現させたいです」。梶尾さんは目を輝かせながら話す。

父が掲げた「自他共栄」を胸に

三祥は梶尾さんが生まれた1968年、父親が仕事仲間の3人で立ち上げた会社だ。「営業担当の父、職人の取りまとめ役、そして溶接の技術者。3人のバランスが絶妙だったそうです。“溶接の三祥”の始まりですね」
「これ、私がつくった!」。携わったものが形になるのが面白い

「これ、私がつくった!」。携わったものが形になるのが面白い

50歳になった年に父から会社を引き継ぎ、8年が過ぎた。第二工場が古くなり、近く建て替えの計画を練ろうと思っている。「災害時に近隣に住む皆さんが避難できるスペースを設けようかなど、いろいろと考えを巡らせているところです」

父がよく言っていた言葉がある。『自分だけが幸せになってもしょうがない』

創業時から掲げる経営理念「自他共栄」を胸に、梶尾さんは父の思いごと会社を引っ張っていく。

「社員の幸せはもちろん、家族や取引先の皆さん、地域の皆さんにまで、その幸せを広げていきたい。私たちの得意技は金属をくっつける“溶接の技術”。人の心をくっつけられる、誠実で力強い会社にしていきたいと思っています」

篠原 正樹

梶尾 哲也 | かじお てつや

略歴
1968年 高松市庵治町出身
1986年 大川東高校 卒業
     有限会社三祥製作所(現株式会社三祥)入社
2018年 代表取締役 就任

株式会社三祥

住所
香川県高松市三谷町3529-8
代表電話番号
087-888-5781
設立
1988年5月(創業1968年1月)
社員数
104人
事業内容
建設用油圧式クレーン部品等の製造、一般用コンテナの製造販売
出資金
3000万円
地図
URL
http://sansho-kagawa.co.jp/
確認日
2026.07.02

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